4 国際経済分野の法秩序

(1)多角的貿易体制の強化

ア 多角的自由貿易体制と日本

戦後日本の経済発展は、関税及び貿易に関する一般協定(GATT)/WTOを中心とする多角的自由貿易体制に支えられてきたところが大きい。これまで、GATT体制の下での幾度かにわたる多角的貿易交渉(ラウンド)を通じて各国の関税が引き下げられ、1995年に設立されたWTOでは、規律の対象分野の拡大や各国の貿易政策の監視、紛争処理機能の強化がなされた。世界経済の持続的発展を確実なものとする上でも、WTO体制の下で、保護主義を抑止するとともに、ドーハ・ラウンド交渉を早期妥結に導くことが一層重要になっている。

イ 2010年のWTOドーハ・ラウンド交渉

WTOドーハ・ラウンド(正式名称は「ドーハ開発アジェンダ(DDA:Doha Development Agenda)」)交渉は、2001年の交渉開始後9年が経過したが、2008年7月の非公式閣僚会合決裂以降、世界貿易における主要なプレーヤーとなった新興国(特に中国、ブラジル、インド)と、これら新興国に対して一層の自由化を求める米国との対立が続き、膠(こう)着状態となった。2010年のAPECでは、日本は議長としてドーハ・ラウンド交渉の進展についても積極的な役割を果たした。6月の貿易担当大臣会合(於:札幌)及び11月の閣僚会議(於:横浜)では、ドーハ・ラウンド交渉の早期妥結及び保護主義抑止について独立の声明が発表された他、11月のAPEC閣僚・首脳会議(於:横浜)では、各国の閣僚及び首脳間で、2011年が交渉妥結にとって極めて重要な「機会の窓」であることが確認され、交渉を加速化させることについて認識が共有された。これを受けて、2011年初頭から集中的な議論が行われている。

(ア)農業

農業分野では、これまで、①一般的な関税削減の方式やその例外などの問題(市場アクセス(MA))、②貿易をゆがめる国内農業助成のための補助金など(国内支持)の削減、③輸出補助金などの撤廃(輸出競争)といった論点について議論を行っている。

2010年は、譲許表11作成に関する技術的な論点の他、開発途上国にのみ認められる特別セーフガード措置(SSM)12を始めとする、主に2008年12月の農業交渉議長テキストの残された論点を中心に協議が行われた。

(イ)非農産品市場アクセス(NAMA:Non-Agricultural Market Access)

NAMA分野では、鉱工業品及び林水産品の関税や非関税障壁(NTB)の削減に関する議論を行っている。関税の削減に関しては、一定の数式によって高関税ほど大きい削減とする関税削減方式(スイス・フォーミュラ)などの論点と共に、開発途上国配慮、分野別関税撤廃13などの交渉を行ってきた。

2010年には、2008年12月に作成されたNAMA交渉議長テキストに沿って実務レベルで協議が続けられた。分野別関税撤廃については、特に開発途上国も含めた十分な参加を得るための方法について議論が行われ、また、NTBに関する協議については、各国が提出している様々なNTB削減のためのテキストに基づいて、各国の主張の収れんが試みられた。

工業分野で強い競争力を持つ日本は、農業交渉と歩調を合わせた進展を図りつつ、関税削減、NTB削減の双方における高い成果を伴ったモダリティ合意14を目指して積極的な交渉への取組を続けているところである。

(ウ)サービス

サービス分野では、これまで、①リクエスト&オファー方式(個別分野・措置ごとの自由化の要請に対し自由化案を提出)による市場アクセスの改善、②サービスの貿易に影響を及ぼす国内措置などに係るルールの策定を目的として交渉が行われてきた。

2010年は、クラスタリング・アプローチ15など、交渉活性化のための新たなアプローチを模索する動きが活発になった。

日本は、自由化推進派の一員として、中国、インド、ASEAN各国、ブラジルなどに二国間協議を通じて関心分野の自由化を求めた他、海運や建設分野の複数国間交渉を主導するなど積極的に議論に参加している。今後も日本のサービス業界の関心などを踏まえつつ交渉を進めていく考えである。

(エ)ルール

ルール分野では、2001年のドーハ閣僚宣言、さらに、2005年の香港閣僚宣言に基づき、ダンピング防止及び補助金についての規律の強化並びに明確化を目的とした交渉が行われてきた。現在の交渉では、ダンピング防止におけるゼロイング16や、WTOで初めて規律が定められることになる漁業補助金17などの扱いが主な課題となっている。日本としては、引き続きこれまでの主張が今後提示される議長テキストに反映されるよう、積極的に交渉を行っていく考えである。

(オ)貿易円滑化

貿易円滑化の分野では、GATT第5条(通過の自由)、第8条(輸入及び輸出に関する手数料及び手続)及び第10条(貿易規則の公表及び施行)に関連する事項の明確化及び改善などを目的として交渉が行われてきた。

2010年には、統合交渉テキストに基づいて6回の交渉会合が開催され、加盟国間で意見の収れんを見ていない箇所につき交渉が行われた。今後、交渉妥結により、貿易関連事業者が直面する様々な障害が減少し、手続が迅速化されることが期待される。

(カ)貿易と環境

「貿易と環境」の分野では、2001年のドーハ閣僚宣言に基づき、①WTO協定と多数国間環境協定(ワシントン条約など)との整合性や事務局間の協力、②環境物品・サービスに対する関税及び非関税障壁の削減又は撤廃などについて、「貿易と環境」に関する加盟国間の通常会合や特別会合を通じ議論されている。特に、環境物品の貿易自由化交渉においては、各国から「環境物品」の範囲や具体的品目などに関する様々な提案がなされており、日本からも省エネルギー物品に関する具体的品目の提案を行った。今後とも、各国との議論を通じてこの分野の交渉の進展に積極的に貢献していく方針である。

(キ)開発

開発は、今次ラウンド交渉の中核的なテーマとなっており、開発途上国を対象とした「特別かつ異なる待遇(S&D)」、綿花問題18及び「貿易のための援助」(AfT:Aid for Trade)19を主要なテーマとして議論が続けられている。日本は、開発途上国の利益を確保するS&Dの議論に積極的に参加している他、AfTにも大きく貢献した。

AfTは、ドーハ・ラウンドを補完する取組であり、日本は、2009年7月、第2回AfTグローバル・レビュー会合の機会に、「開発イニシアティブ2009」20を発表し、貿易に関連する各種ODAの供与を通じて開発途上国の貿易拡大を支援している。

また、日本はアジア・太平洋地域における効果的なAfTの在り方や、地域格差の分析などについて専門家レベルで議論する会合の共同議長を務めるなど、地域レベルでの取組にも積極的に貢献している。

(ク) 知的財産権

地理的表示(GI)21に関して、ドーハ・ラウンド交渉の中で議論されている多国間通報登録制度について、日本は、米国などと共に、各国の商標当局などが登録に拘束されない、負担の軽い制度になることを提案している。これに対しEUなどは、登録により強い法的効果を持たせる制度を主張している。また、GIの追加的保護22の対象となる産品については、ウルグアイ・ラウンドで合意された、ワインと蒸留酒に加え、その他の産品にも拡大するべきかどうかが議論されている。

また、TRIPS協定と生物多様性条約(CBD)との関係についても、交渉項目にはなっていないが、ドーハ・ラウンドに関連して議論がなされており、ブラジル、インドなどの開発途上国は、特許出願における遺伝資源の出所などの開示(例えば、植物の抽出物を使用した薬品について、その植物の原産国・供給国などの開示)を義務化するTRIPS協定改正を提案している。

ウ 紛争解決(DS:Dispute Settlement)

WTO体制に信頼性・安定性をもたらす柱として、紛争解決制度23があり、2010年も、日本はこの制度の下で大きな成果を得ることができた。まず、既にWTO協定違反が認定され、その後の是正措置も十分でないと認定された、米国のダンピング防止措置に関連する「ゼロイング」手続などについては24、日本は米国に対する「譲許などの停止」(いわゆる対抗措置)25の程度を決定するため、一旦中断していた仲裁手続の再開を2010年4月に申請し、10月に、仲裁会合が開催された。12月には、米国からの申入れに基づき、日米両国は仲裁手続の一時中断を要請し、仲裁手続は中断された。一連の紛争解決手続を通じて、ゼロイングの使用に基づく不当なダンピング防止税賦課による貿易の制限が容認されないと明確にされたことは、ルールに基づく自由貿易体制の維持や発展に寄与するものとして高く評価できる。今後も、米国による誠実かつ速やかな措置の是正が引き続き望まれる。

また、デジタル複合機やパソコン用液晶モニターなど、本来無税とされるべき情報技術(IT)製品に対するEC26による関税賦課について、日本が米国及び台湾と共同でECに対し、GATT違反を申し立てていた案件27では、2010年8月、日本を含む共同申立国の主張を認めるパネル報告書が発表され、同年9月、パネル報告書は紛争解決機関によって採択された。本パネル報告書は、分析や協定の解釈の手法が適切であること、その結論はIT製品の貿易の更なる発展につながり得るものであるといった観点から、高く評価できる。今後、当時者間で決定した履行期限までにEUが誠実な措置の是正を実施することが望まれる28

これらに加え、新たに日本はオンタリオ州(カナダ)のフィード・イン・タリフ(FIT)プログラムの州産品使用要求措置29に関し、9月に、WTO協定に基づく協議要請を行った。

 

(2)投資協定/租税条約/社会保障協定

ア 投資協定

貿易の自由化及び円滑化に関しては、WTOが多国間の包括的なルールを定めているが、投資に関してはこのようなルールが存在しないため、各国は、二国間又は複数国間で投資協定を締結することにより、投資を促進するための環境整備に努めている。日本としても、このような取組を積極的に進めており、2011年2月に、インドとの間で、投資の保護、促進及び自由化に関する規定を含むEPAに署名した他、カザフスタン、クウェート、コロンビア、サウジアラビア、アンゴラ、パプアニューギニア及び中国・韓国との間で、それぞれ二国間又は三箇国間投資協定について交渉を進めてきており、また、カタール、アルジェリア、ウクライナ及びイラクとの間でも交渉を準備・検討している。さらに、オーストラリア及びGCCとの間でも、投資に関する規定を含むEPAについて交渉中である。

この他、日本は、OECDやAPECなどの国際的な枠組みにおいても、投資の自由化及び円滑化を促進するために、多国間のルールを形成する必要性を主張するなど、建設的な役割を果たしてきている。

イ 租税条約

租税条約は、国境を越える経済活動に対する国家間の課税権を調整することにより、国際的な二重課税を回避するとともに、投資所得(配当、利子、使用料)に対する源泉地国課税の減免などを通じて国際的な投資交流を促進するための重要な法的基盤であり、日本は租税条約ネットワークの拡充に取り組んでいる。また、脱税及び租税回避行為などを防止する観点から、租税に関する情報交換などといった税務当局間の国際協力を推進するための規定の整備も進めている。

具体的には、クウェートとの間の条約、シンガポール及びマレーシアとの協定改正議定書並びにベルギー及びルクセンブルクとの間の条約改正議定書の締結につき国会で承認され(5月)、そのうちシンガポール(7月)及びマレーシア(12月)との間の協定改正議定書の効力が発生した。また、スイスとの間の条約改正議定書(5月)及びオランダとの間の条約(8月)、香港との間の協定及びサウジアラビアとの間の条約(いずれも11月)の署名が行われた。なお、租税に関する情報交換ネットワークの整備と拡充を目的とした協定については、バミューダ(英国の海外領土)との間の協定が8月に発効し、ケイマン諸島(英国の海外領土)との間の協定(5月)、バハマとの間の協定(11月)について基本合意に達した。その他、2010年末時点で、アラブ首長国連邦及びガーンジー(英国の海外領土)との協定締結に向けた交渉を行っている。

ウ 社会保障協定

社会保障協定は、社会保険料の二重負担や掛け捨ての問題などを解消することを目的としており、海外に進出する日本企業や国民の負担を軽減し、ひいては相手国との人的交流や経済交流を一層促進する効果が期待されている。

7月にはブラジル、10月にはスイスとの間協定署名がそれぞれ行われ、12月には、スペイン及びアイルランドとの間の協定が発効した。また、2010年中には、ハンガリー、ルクセンブルク、スウェーデン、スロバキア及びオーストリアとの間で、それぞれ交渉又は交渉開始に向けた意見交換を行った。

 

(3)知的財産権保護の強化

知的財産権保護の強化は、技術革新の促進、ひいては経済の発展にとって極めて重要であり、日本は、そのために様々な取組を行っている。

まず、日本が提唱した新しい国際的な法的枠組みである「模倣した物品の取引の防止に関する協定(Anti-Counterfeiting Trade Agreement, ACTA)(仮称)」30については、その早期実現に向けて関係国との交渉を積極的に主導し、2010年9月23日から10月2日まで東京で開催された第11回関係国会合において大筋合意に至った。その後、11月に残された少数の論点を解決し、同年中の交渉妥結という目的が達成された(12月には条約案文の法的確認を完了)。その他、G8サミット、APEC31、OECD、WTO(TRIPS理事会32)や世界知的所有権機関(WIPO)などでの多国間の議論に積極的に参画している。

また、二国間では、中国33、韓国、米国及びEU34との間で個別の知的財産権保護の強化・協力に関する対話を続けている。また、EPA35についても、可能な限り知的財産権に関する規定を設けることとしている。

11 WTO協定上、それぞれの品目ごとに約束された上限税率が記載された付表。

12 開発途上国が同措置を発動した際に可能となる追加的な関税の引上げが、現行の譲許税率(ウルグアイ・ラウンドにて合意された税率)を超えることができる場合の要件について、専門家による技術的な議論が重ねられた。

13 特定分野の関税撤廃・調和を目指すもので、参加は非義務的であるものの、先進国側は主要開発途上国を含む十分な参加を重視している。

14 関税削減の一般的な方式や例外などについて定めたルール。

15 ビジネスの現状も踏まえ、サービスの関連分野をある程度統合して市場アクセス交渉を進めるアイデア。

16 米国商務省は、ダンピング・マージン(輸出国の国内正常価格より輸出価格が低い場合の価格差)を計算する際に、まず、①その産品の個々のモデル又は取引ごとに輸出国の国内正常化価格と対米輸出価格を比較し、②その結果を総計して、この産品全体のダンピング・マージンを算定している。総計をする②の段階において、①の比較で輸出国の国内正常価格より対米輸出価格が高いものについてはその価格差はマイナスとなるが、ゼロイングとは、それらをマイナスとして差し引かず、一律「ゼロ」とみなして計算する方式で、これにより、ダンピング・マージンが不当に高く計算される。2008年12月に作成された改訂議長テキストでは、ゼロイングを容認する規定が取り下げられるなど、日本を含む他の加盟国の立場に一定の配慮が見られる規定となっている。

17 漁業補助金については、韓国、台湾と共同で提案を提出し、ECと共に、過剰漁獲につながる補助金に限定して禁止すべきという主張を行ってきた。2007年の議長テキストでは、日本が主張してきた禁止補助金を限定する構造となっているが、その対象範囲については日本の主張よりも広範囲にわたるものとなっている。

18 西アフリカの後発開発途上国(LDC)4か国(ブルキナファソ、ベナン、マリ、チャド)によって提起されている問題。本来、綿花はこれらの諸国にとって十分競争力のある産業であるにもかかわらず、一部先進国が自国の綿花産業に与えている補助金のために、綿花輸出が阻害され大きな打撃を受けているとして、先進国に対して補助金の段階的撤廃及び撤廃完了までの補償措置を要求している。

19 開発途上国が多角的貿易体制から十分な利益を得るためには、単に多角的貿易体制に統合されるだけでは不十分であり、貿易関連の技術支援、生産能力の向上や流通インフラ整備などを通じた貿易能力の向上が必要である。これらのニーズに対する支援が「貿易のための援助」と呼ばれている。

20 「開発イニシアティブ」は、貿易促進を通じて開発途上国の発展に資することを目的にODA供与を中心とした支援パッケージである。「開発イニシアティブ2009」では、2009年から2011年の3年間に、120億米ドルのODAや4万人の技術支援、貿易金融への取組などを通じて、開発途上国の貿易能力の発展に貢献している。

21 ボルドーワインのように、その商品について確立した品質、評判などが主として地理的原産地に帰せられると考えられる場合において、その商品が当該地理的原産地の産品であることを特定する表示を言う。

22 TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)は、全産品について当該産品の地理的原産地について、公衆を誤認させる方法などでの地理的表示の使用を防止することを原則としつつ(第22条)、ワイン及び蒸留酒については、公衆の誤認などの有無に関わらず、当該地理的表示によって表示されている場所を原産地としないものへの使用を防止するという追加的保護を定めている(第23条)。

23 1995年のWTO発足時から2010年末までの紛争案件数419件のうち、2010年末までに日本が当事国(申立国又は被申立国)として関わった案件は29件(なお、件数については、WTOホームページに掲載されているDS番号(紛争解決手続に付された個々の案件について振られた番号)が付された全ての案件をそれぞれ1件として計算している)。なお、WTO紛争解決手続(DSU)においては、パネル(小委員会)手続が案件ごとに構成される。一方で、パネルの法的判断に不服がある場合に当事国が申し立てることができる上級委員会は、常設機関である。上級委員会は7名の委員で構成されており、委員の任期は4年(再任可能)。日本は1995年のWTO発足以降3名の上級委員を輩出しており、2008年6月以降、大島正太郎氏が上級委員の任にある。

24 日本は、2005年2月に、米国のゼロイング方式自体とその実際の適用がWTO協定(アンチ・ダンピング協定など)に違反するとして、WTOに申し立てた。2007年1月にWTO協定違反が確定し、米国に対して是正勧告が行われた。米国は、勧告履行期限(2007年12月24日)が到来しても、一部の措置を除いて履行しなかったので、日本は2008年4月に履行確認パネルの設置を求めた。2009年4月に発表されたパネル報告書、その後同年8月に発表された上級委員会報告書のいずれにおいても、米国が本件においてWTOの是正勧告を履行しておらず、また、米国が履行のためとしてとった措置がWTO協定に違反していることが認定された。

25 WTO協定上の譲許などの停止とは、紛争解決手続でWTO協定違反が認定された措置を協定と整合的にすべきとの勧告が履行されない場合、相手国が一定の条件の下で、勧告を履行しない国に対し、WTO協定上の譲許その他の義務を停止(例:関税率引上げ)すること。譲許などの停止の程度は、違反と認定された措置により侵害された利益に対する「無効化又は侵害」の程度と同等のものとされている。この程度について勧告を履行しない国が異議を唱える場合には、仲裁によって決定される。

26 ECは、EC加盟国と共にWTO加盟国の地位を有していたが、2009年12月のリスボン条約の効力発生により、EUがWTO加盟国としてのECの地位を継承した。

27 ECが、「情報技術製品の貿易に関する閣僚宣言(ITA)」において無税扱いにすることとされている製品について、製品の多機能化・高機能化を契機に譲許表上の分類を変更し、WTO協定に整合しないと考えられる課税を行っている案件。日本が米国及び台湾とともに問題視したのは、デジタル複合機(税率6%)、パソコン用液晶モニター(税率14%)、セット・トップ・ボックス(税率13.9%)の3品目である。

28 12月、日本、米国及び台湾は、本件に関するEUによる履行期限を2011年6月30日とすることを決定した。

29 カナダ・オンタリオ州が行っている太陽光、風力発電施設などの導入を支援する制度「FITプログラム」において、発電施設の生産に際して一定割合のオンタリオ州産の製品などの使用を義務付けているもの。

30 日本は、2005年のG8グレンイーグルズ・サミット(於:英国)において、模倣品・海賊版の拡散防止に向けた法的枠組み策定の必要性を提唱して以来、先進国及び知的財産権の保護に高い志を有する開発途上国と共に、本構想の実現に向けて積極的に議論を行ってきた。2008年6月から関係国との間で条文案に基づく交渉を開始し、交渉には日本を始め、米国、EU、スイス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、韓国、モロッコ及びシンガポールが参加した(模倣品・海賊版対策の取組については、第4章第2節2(2)「模倣品・海賊版対策」を参照)。

31 APECでは、11月の首脳宣言において、知的財産権の保護及び執行を強化することが再確認された。

32 TRIPS理事会とは、TRIPS協定の実施、特に加盟国による義務の遵守を監視し、同協定に関する事項の協議を行う場である。

33 日中間では、8月の第3回日中ハイレベル経済対話において、中国における知的財産権侵害の対策強化について要請した。

34 日・EU間では、3月の知的財産権に関する日・EU対話で模倣品・海賊版対策協力などについて協議した。

35 シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、ASEAN、ベトナム及びスイスとの間で知的財産権に関する規定を含む協定を締結し、既に効力が発生している。

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