目次 > 外交青書2011(HTML)目次 > 第2章 地域別に見た外交 第6節 中東と北アフリカ

第6節 中東と北アフリカ

総論

中東・北アフリカ地域(以下、中東地域)は、欧州、サブサハラ・アフリカ、中央アジア及び南アジアの間という地政学上の要地であるとともに、国際通商上の主要な海上ルートに位置しており、大量の石油及び天然ガスを供給していることもあり、同地域の平和と安定は、国際社会全体の平和と安定に直結する。また、中東地域は、アフガニスタンの復興、中東和平、イランの核問題、イラクの復興など、様々な課題に直面しており、これらの課題の解決は、同地域の平和と安定にとってはもちろんのこと、大量破壊兵器の拡散防止やテロ対策などの観点から、国際社会全体にとって極めて重要である。原油の約9割を中東地域から輸入している日本にとっては、同地域の平和と安定は経済的にも重要な課題である。

加えて中東地域では、2010年末から大規模反政府デモが各国で発生し、チュニジア及びエジプトでは長期政権崩壊に発展した他、リビアでは人道危機が発生している。このような情勢の中、ますます重要性を高める中東地域の平和と安定に、日本は、国際社会と連携しつつ、積極的に取り組んでいる。日本は中東地域において、各国の実情に即した形で、「法の支配」、表現の自由の実現といった政治、経済、社会的改革が前進し、安定と安全が確保されることを期待しており、その実現に向け移行期の混乱を回避しつつ、「良い統治」に向けた政治的支援及び経済的支援を行っていく考えである。また従来にも増して中東和平の実現や、イランの核問題などの問題の平和的解決に向け、主要関係国と緊密に連携し、政治レベルの対話や特使の派遣も活用しつつ、独自の関係に基づく働きかけを行っている。また、アフガニスタンやイラクにおける復興支援、パレスチナ国家建設支援など、経済協力を中心に地域の平和と安定に資する支援を行っている。

中東地域における若年人口の急増は、失業者の増大など社会不安の要因である一方で、経済発展を生み出す活力の源泉でもある。中東各国は近年着実な経済発展を遂げており、産業の多角化にも取り組み、諸外国にとって魅力ある市場及び投資先に変貌すべく努力を行っている。日本は、このような中東地域の経済発展を、経済・ビジネス関係の一層の発展に向けた好機と捉え、経済外交の推進に力を入れてきており、また、そのような外交は各国の政治・経済システムの平和的移行に貢献するとも考えられる。また、石油・天然ガスを含む資源輸出国との関係を一層強化し、資源・エネルギーの安定供給の確保を目指すとともに、自由貿易協定(FTA)、投資協定、租税条約など、経済関係を強化する上で基盤となる法的枠組みの構築や、インフラの海外展開などに取り組んでいる。

さらに、日本は近年、伝統的なエネルギー分野や経済分野での協力強化に加え、政治、科学技術、教育、文化など幅広い分野における重層的な関係を構築し、相互理解を深めることに努めている。様々な対話の枠組みの中でも、拡大中東・北アフリカ(BMENA)構想「未来のためのフォーラム」閣僚級会合は、中東地域の政治的、経済的及び社会的発展のためのG8諸国との重要な対話・協力の場であり、引き続き日本も積極的に参加していく。

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