中南米地域は、5.7億人の人口と4.0兆米ドルの域内総生産(東南アジア諸国連合(ASEAN)の3倍)を有し、ここ5年間は5%前後の経済成長率を維持するなど、経済面での存在感を一層高めている。また、希少金属(レアメタル)を含めた鉱物・エネルギーや食料の供給源としても注目されている。さらに、概ね民主主義が浸透し、市場経済に基づく着実な経済成長を実現していることから、国際社会での発言力が増大している。
日本と中南米は、日系人(現在約160万人)の存在を始めとする人的な絆(きずな)もあり、伝統的に深い友好関係を有している。こうした関係に基づき、日本は中南米諸国における民主主義の定着と経済発展を支援し、関係を緊密化させてきた。今日、基本的価値を共有する中南米諸国は、日本にとって国際社会における重要なパートナーとなるに至っている。これを受け、日本は、中南米諸国との関係を更に進展させるために、①経済関係の強化、②地域の安定的発展の支援、③国際場裏における協力推進を三本柱として、同地域に対する外交を展開している。
経済関係の強化については、日本政府は日系企業や現地の事情を的確に捉えながら、経済連携協定(EPA)や投資協定などの法的枠組みの整備や相手国政府との協議などを通じ、日系企業の活動を支援している。また、中南米諸国では経済成長による具体的なインフラ需要が見込まれていることから、インフラの海外展開を積極的に進めている。さらに、資源や食料に富んだ中南米諸国との協力関係を深め、資源・食料の安定供給の確保にも取り組んでいる。中南米が安定的に発展するためには、各国に根強く残る貧困や社会格差問題を解決する必要がある。日本はその考えの下、資金・技術協力を通じ、各国政府による取組を積極的に支援し、持続的な経済発展の実現に向けて協力している。
33か国を擁する中南米は、国際連合などでの意思決定に大きな影響力を持つ。とりわけブラジルやメキシコなどの新興国は、国際政治経済における存在感を飛躍的に増大させている。これを踏まえ、日本が重視する環境・気候変動問題、核軍縮・不拡散、国連安保理改革などの課題に取り組むに当たって、日本政府は中南米諸国との連携や協調を図っている。