国連外交
岸田総理大臣の第77回国連総会出席
令和4年10月5日
(写真提供:内閣広報室)
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- 岸田総理大臣は、9月20日(火曜日)から22日(木曜日)(現地時間)まで、第77回国連総会出席のためニューヨークを訪問しました。
- 滞在中、岸田総理大臣は、国連総会において一般討論演説を行ったほか、包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ首脳級(ハイレベル)会合、グローバルファンド第7次増資会合、HeForSheサミット等に出席しました。また、各国首脳との会談などを行いました。
1 主要行事の結果概要
(1)一般討論演説(9月20日(NY時間。以下同じ。))
岸田総理の国連総会における一般討論演説の概要は以下のとおりです。
- 1 総論
- ロシアのウクライナ侵略は、国連憲章の理念と原則を踏みにじる行為。
- 今こそ国連憲章の理念と原則に立ち戻り、国際社会における法の支配に基づく国際秩序の徹底のため、力と英知を結集する時。そのために、その中核を担う国連の改革及び国連自身の機能強化が不可欠。
- 日本の国連及び多国間主義への強いコミットメントを示し、以下の国連の理念実現のための日本の決意を表明。
- (1)安全保障理事会を含む国連の改革及び軍縮・不拡散も含めた国連の機能強化
- (2)国際社会における法の支配を推進する国連の実現に向けた取組
- (3)新たな時代における人間の安全保障の理念に基づく取組
- 2 (1) 安全保障理事会を含む国連の改革と国連の機能強化
- 安全保障理事会(安保理)常任理事国であるロシアのウクライナ侵略により危機に陥った国連の信頼回復のため、加盟国の行動が必要。
- 安保理改革に向けた行動を呼びかけ。2024年未来サミットは、国連のあり方を幅広く見直す機会。有識者を含めた幅広い英知を結集し気運を高めていく。
- 総会の更なる活性化に取り組む。幅広い国連の活動を支える事務総長を支持。
- ロシアが行ったような核兵器による威嚇、ましてや使用は、断じて受け入れられない。8月のNPT運用検討会議の結果も踏まえ、「核兵器のない世界」の実現に向けた決意を新たに、現実的な取組を進める。
- 日朝平壌宣言から20年。同宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を目指す方針は不変。条件を付けずに金正恩委員長と向き合う決意。
- 平和構築についても、PKO訓練などを通じて、平和の灯が世代や国境を越えて広がることを支援。
- 国際法に基づく法の支配の強化は、長期的に見れば、全ての国に裨益。日本は、各国と協力しながら「自由で開かれたインド太平洋」の実現をはじめ、様々な分野で積極的な役割。
- 友好関係原則宣言から導き出される法の支配の促進のための基本的原則((1)「力」ではなく「法の支配」、(2)力や威圧による現状変更の否定、(3)国連憲章の原則擁護のための協力)は、分断された国際社会を繋ぎ合わせる基盤。
- 明年1月から安保理の非常任理事国として、小さな声にも真摯に耳を傾けながら、国際社会における法の支配を強化するべく行動する。
- パンデミックに加え、武力の行使や威圧、食料やエネルギー安全保障、インフレや気候変動等の問題が相互に結びつき、多くの人々の安全が脅かされ、貧困と疾病が深刻化。
- 誰一人として取り残さない社会を目指すSDGs。その達成のためにも新たな時代における人間の安全保障が求められており、重要なのは、個人、社会、国家のレジリエンスを高めること。人間の安全保障信託基金を通じた取組も促進。
- 人への投資を重視し、アフリカを含む世界各地で人材育成や能力構築に注力。TICAD8ではアフリカに今後3年間で官民総額300億ドル規模の資金投入を表明。教育は平和の礎との信念のもと、国連教育変革サミットの成果も踏まえ人づくり協力を進める。
- 保健分野では、COVAX等を通じたワクチン関連支援を含め総額50億ドルの新型コロナ対策を推進。グローバルファンドへの次の3年間で最大10.8億ドルの新たな拠出を決定。来年主催するG7に向け、国際保健の枠組強化やユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成にも引き続きリーダーシップを発揮。
- 食料安全保障のための緊急支援と食料システムのレジリエンス強化支援、国際電気通信連合(ITU)等を通じた情報通信分野での国際標準・規格作り等、人々が安心して質の高い生活を享受するための環境作り支援も実施。開発協力政策の基本方針である「開発協力大綱」を改定。
(2)二国間会談等
- ア 日英首脳ワーキングランチ(9月20日)
岸田総理から、エリザベス2世女王陛下の崩御に改めて心からの哀悼の意を表し、トラス首相から、岸田総理を始めとする日本の皆様の温かな御弔意に感謝する旨の発言とともに、安倍元総理の逝去に対し、深い哀悼の意の表明がありました。
岸田総理から、インド太平洋への「傾斜」を掲げる英国との関係はかつてないほど緊密であり、強固な日英関係を基盤とし、国際社会の諸課題に共に立ち向かっていきたい旨述べました。トラス首相から、日本は英国にとって重要なパートナーであり、日本との緊密な連携を更に強化していきたい旨の発言がありました。
両首脳は、安全保障協力の強化に向けた協議の加速や、エネルギー分野等での協力の深化で一致するとともに、ロシアによるウクライナ侵略、東シナ海・南シナ海情勢、北朝鮮への対応等の国際情勢について議論し、連携した対応を確認しました。
さらに、両首脳は、来年日本がG7議長国や安保理非常任理事国を務めることを見据え、様々な国際的な課題において協力を一層強化していくことを確認しました。 - イ 日トルコ首脳会談(9月20日)
岸田総理から、ロシアによるウクライナ侵略について、主権と領土一体性の尊重に反し、法の支配に対する重大な挑戦であると強く非難した上で、ロシア及びウクライナ双方との緊密な関係を活かした取組に加え、イスタンブールに穀物輸送にかかる合同調整センターを設置した結果ウクライナからの穀物輸出が実現されたことは、トルコの粘り強い外交努力によるものであると敬意を表しました。
両首脳は、日・トルコ経済連携協定交渉の早期妥結に向けた協議を加速させること、両首脳のリーダーシップの下、引き続き様々な分野で二国間関係を発展させていくことで一致しました。 - ウ ゼレンスカ・ウクライナ大統領夫人との立ち話(9月21日)
現地時間9月21日、「He for Sheサミット」に出席した際に、オレーナ・ゼレンスカ・ウクライナ大統領夫人(H.E. Ms. Olena ZELENSKA, Wife of President of Ukraine)と立ち話を行いました。 - エ 日ニュージーランド首脳間の懇談(9月21日)
冒頭、岸田総理大臣から、エリザベス2世女王陛下の崩御について悲しみを共有したい旨述べた。また、安倍晋三元総理大臣の逝去に対するアーダーン首相からの弔意に対して謝意を述べました。
両首脳は、太平洋島嶼国などの地域情勢や水素を含む経済など、幅広い分野における協力を推進していくことで一致しました。また、両首脳は、来年ニュージーランドが議長国を務めるTPP11協定について、両国間で引き続き連携することを確認しました。 - オ 日韓首脳間の懇談(9月21日)
岸田総理と尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領は、現下の戦略環境において日韓は互いに協力すべき重要な隣国であり、日韓、日米韓協力を推進していく重要性について一致しました。
両首脳は、北朝鮮への対応における更なる連携で一致しました。また、尹大統領から拉致問題について改めて支持を得ました。
両首脳は、懸案を解決し、日韓関係を健全な関係に戻す必要性を共有し、1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の基盤に基づき日韓関係を未来志向で発展させていくことで一致しました。
両首脳は、先の日韓外相会談を含め現在行われている外交当局間の協議を加速化するよう指示することで一致しました。また、首脳間でも意思疎通を継続していくことで一致しました。 - カ 日フィリピン首脳ワーキングランチ(9月21日)
岸田総理から、マルコス大統領に対して、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、基本的価値を共有する戦略的パートナーであるフィリピンとの連携を重視する旨述べ、これに対し、マルコス大統領から、日本との関係を強化していきたい旨の発言がありました。
岸田総理から、農業、エネルギー、保健、インフラ整備等の分野で協力を強化していきたい旨述べ、両首脳は、安全保障協力を一層強化していくこと等、両国の協力関係を更なる高みに引き上げることで一致しました。
東シナ海・南シナ海情勢、経済的威圧、ウクライナ情勢、核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応、ミャンマー情勢等の地域・国際情勢に関する諸課題についても協力していくことの必要性で一致しました。
また、両首脳は、早期にマルコス大統領の訪日が実現するよう、引き続き調整していくことで一致しました。 - キ 日イラン首脳会談(9月21日)
岸田総理とライースィ大統領は、イラン核合意をめぐる最新の情勢を踏まえ、率直な意見交換を行いました。岸田総理から、日本として核合意を一貫して支持してきており、関係国による核合意への早期復帰を期待する旨述べました。両首脳は、引き続き緊密な意思疎通を継続していくことで一致しました。
双方はイエメンを含む中東地域情勢及びウクライナ情勢についても意見交換を行いました。
また、岸田総理大臣から海上安全保障と航行の安全を確保することの重要性及び同分野での我が国の取組について述べた上で、意思疎通を継続していくことで一致しました。 - ク 日米首脳間の懇談(9月21日)
岸田総理大臣から、安倍元総理の国葬儀へのハリス副大統領を団長とする代表団の派遣に感謝する旨述べました。
両首脳は、地域の安全保障環境が厳しさを増す中、引き続き日米同盟の強化を図っていくことを改めて確認しました。
また、岸田総理大臣から、一般討論演説でバイデン大統領が安保理改革に言及したことを高く評価する旨述べ、両首脳は、引き続き連携していくことを確認しました。
さらにバイデン大統領から、岸田総理大臣がグローバルファンドに対する最大10.8億ドルの日本の拠出を発表したことについて、日本の貢献は素晴らしいとの発言がありました。 - ケ ビル・ゲイツ共同議長による岸田総理大臣表敬(9月21日)
岸田総理大臣はビル・ゲイツ共同議長(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)による表敬を受け、この中で、2030年までの三大感染症収束のためには、保健システム強化に加え、新規ドナーや民間セクターの一層の貢献が不可欠であるとして、ゲイツ財団によるグローバルファンドに対するさらなる貢献に対する期待を述べました。
ゲイツ共同議長からは、国際保健分野における日本の貢献に対する謝意が示されるとともに、国際保健分野における日本の技術やイノベーションが一層活用されることを期待する旨の発言があり、両者は、明年のG7広島サミットや国連総会ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)ハイレベル会合を見据え、引き続き緊密に連携していくことで一致しました。 - コ シュミハリ・ウクライナ首相との会談(9月22日)
冒頭、岸田総理から、ロシアによるウクライナ侵略を一刻も早く止めさせるべく、日本はG7を始めとする国際社会と引き続き結束して取り組んでいく旨述べ、更に、法の支配に基づく国際秩序を守り抜き、ウクライナを支援していく日本の決意は変わらず、日本は、ウクライナ国民と共にある旨述べました。
また、岸田総理から、ウクライナ国内におけるロシア編入に向けた住民投票と称する行為について強く非難すると共に、ロシアによる核兵器による威嚇や使用はあってはならないことを述べました。その上で、新たな対露制裁措置として化学兵器関連品目の輸出禁止等を講ずることも含め我が国の措置にも触れつつ、国際社会が結束して強力な対露制裁とウクライナ支援を続けることが重要であり、G7と引き続き緊密に連携し、対応していく旨述べました。シュミハリ首相からは、岸田総理の国連演説を高く評価するとした上で、日本の支援と対露制裁について繰り返し謝意が表明されると共に、最新の現地情勢等に関する説明がありました。
岸田総理からは、日本は来年G7議長国を務めるとともに、2年間安保理非常任理事国を務めるところ、ウクライナ情勢にもしっかりと取り組んでいく、ウクライナにおける一刻も早い平和の回復及び復興の実現に向け、国際社会の議論をリードしていきたい旨述べ、両国間で引き続き緊密に連携していくことで合意しました。 - サ 日パキスタン首脳会談(9月22日)
岸田総理から、パキスタン各地において生じている甚大な洪水被害につきお見舞いを述べるとともに、緊急無償資金協力の実施等、日本がこれまでに行っている支援につき説明し、シャリフ首相からは、日本の支援に対し謝意が示されました。
岸田総理から、昨年8月以降、アフガニスタンからの邦人及び大使館・JICA現地職員等の出国のためにパキスタンから多大なる支援を得たことにつき、改めて謝意を伝達しました。シャリフ首相は、アフガニスタンの安定をもたらすことが重要である旨述べました。
両首脳は、その他の地域・国際情勢についても幅広く意見交換を行い、いかなる地域においても力による一方的な現状変更は許されないこと、国際法を尊重すべきこと、紛争は対話を通じて解決すべきことで一致しました。
また、岸田総理は、日パキスタン外交関係樹立70周年を迎える本年、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、二国間関係を更なる高みに引き上げるべく、緊密に協力していきたい旨述べ、シャリフ首相は日本との関係を一層強化していきたい旨述べました。
(3)多国間会合等
- ア HeForSheサミットへの出席(9月21日)
ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに向けた取組を積極的に行っている各界の男性リーダーが集う「HeForSheサミット」において、岸田総理は、安倍元総理に続き、第2期目のHeForSheチャンピオンに就任しました。
岸田総理は、「女性の経済的自立」が、「新しい資本主義」の中核にあるとともに、男女の賃金格差等、日本の女性が直面している構造的な問題への対応、そして全ての女性が自ら選んだ道を歩んでいくための重要な鍵であると述べました。また女性や女児たちが紛争下の性的暴力という重大な人権侵害に直面している中で、日本政府は、「紛争関連の性的暴力生存者のためのグローバル基金」へ200万ユーロの追加拠出を実施し、傷ついた女性や女児たちのサポートをしていくと発言するとともに、こうした取り組みに推進力を得るためとして、12月3日に開催を予定している「国際女性会議WAW!」を紹介しました。 - イ 包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ首脳級(ハイレベル)会合出席(9月21日)
岸田総理大臣は開会挨拶を行い、8月のNPT運用検討会議の際に発表した「ヒロシマ・アクション・プラン」に触れつつ、CTBTの発効は同プランを進めていく上で重要な一歩であるとした上で、CTBTの普遍化及び早期発効、検証体制の強化の重要性を訴えました。その上で、日本として、特にアジア太平洋地域において批准国・未批准国の双方に対して条約の運用体制の整備・強化を一層積極的に支援していく旨、また、我が国国内に所在するものを含め、観測施設の維持・強化を進め、国際監視制度の一層の充実を図っていく旨を表明しました。本会合には中満国連事務次長兼軍縮担当上級代表、フロイドCTBTO事務局長、CTBTユースグループ代表、フレンズのメンバー国からニーニスト・フィンランド大統領他、その他の出席国からアザリ・コモロ大統領、パロリン・バチカン国務長官、アーダーン・ニュージーランド首相他がステートメントを実施しました。また今次会合の最後に共同声明が採択されました。 - ウ グローバルファンド第7次増資会合出席(9月21日)
9月21日(現地時間)にバイデン米国大統領主催で開催されたグローバルファンド第7次増資会合において、岸田総理大臣は、2030年までにエイズ、結核、マラリアという三大感染症を収束させる目標の達成に向け、国際社会のすべての関係者が力を結集する必要性について述べました。また、グローバルファンドによる保健システムの強化は将来のパンデミックへの備えにもなり、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に貢献するところ、取組を加速させる必要がある旨述べ、グローバルファンドに対し、今後3年間で最大10.8億ドルの拠出を行うことを表明しました。
さらに岸田総理大臣は、明年のG7広島サミットに言及の上、引き続き国際保健分野でリーダーシップを発揮していくと述べました。
(4)その他
- ア 日本食文化発信レセプション(9月21日)
岸田総理は、日本食・食文化、日本産食材、日本の観光のPRを目的としたレセプションに出席しました。同レセプションには、政財界要人、メディア・インフルエンサーや食関連事業者等約150名が出席。岸田総理は、昨年から米国向け出荷が可能となったメロンやNY州で規制緩和された焼酎に触れつつ、更なる日本食普及に向けて、日本酒を含む日本食の奥深さをアピールしました。 - イ ニューヨーク証券取引所における講演(9月22日)
岸田総理は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)を訪問して講演を行い、クロージングベルを鳴らしました。また、この機会に、NYSE幹部及び米企業幹部との意見交換を行ったほか、東京証券取引所とNYSEの協力覚書(MOU)締結に立ち会いました。
2 日程
9月20日(火曜日)
- ニューヨーク着
- 日英首脳ワーキングランチ
- 日トルコ首脳会談
- 一般討論演説
9月21日(水曜日)
- ゼレンスカ・ウクライナ大統領夫人との立ち話
- UN Women主催 HeforSheサミット
- 日ニュージーランド首脳間の懇談
- 包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ首脳級(ハイレベル)会合
- 日韓首脳間の懇談
- 日フィリピン首脳ワーキングランチ
- 日イラン首脳会談
- 日米首脳間の懇談
- グローバルファンド第7次増資会合
- ビル・ゲイツ共同議長による岸田総理大臣表敬
- 日本食文化発信レセプション
9月22日(木曜日)
- 内外記者会見
- シュミハリ・ウクライナ首相との会談
- ニューヨーク証券取引所における講演
- 日パキスタン首脳会談
- ニューヨーク発