アジア

平成28年7月26日
7月26日午後,ラオス・ビエンチャンにおいて,第23回ASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会合が開催され,我が国から岸田外務大臣が出席しました。(議長:サルムサイ・コンマシット・ラオス外務大臣)。

1 今次会合の意義

(1)南シナ海,北朝鮮などの地域・国際情勢を中心に率直な意見交換が行われました。

(2)日本の提案(共同提案国:ラオス,EU,カナダ)によりテロに関する閣僚声明を発出し,ARFとしてテロ行為に対し断固とした姿勢を示すとともに,過激化対策のため連帯していくことを確認しました。

2 地域・国際情勢

(1)南シナ海

(ア)岸田大臣から,日本はこれまで一貫してASEANの一体となった対応を支持しており,ASEANの一体性を支持する姿勢は今後も変わることはない旨改めて強調し,ASEAN共同コミュニケは,南シナ海における最近の動向への深刻な懸念を示し,国際法に従った紛争の平和的解決,非軍事化と自制の重要性,法的・外交的プロセスの完全な尊重を明記するもので,南シナ海問題に一つの声として団結する強力な意思と能力を示しているとして,議長国ラオスを始めとする関係国の努力に敬意を表明しました。
また,岸田大臣から,南シナ海の現状変更を日本は深刻に懸念している,先般の比中仲裁裁判の判断は,紛争当事国を法的に拘束するとの立場を改めて説明し,両当事国がこの判断に従うことにより,今後,南シナ海をめぐる紛争の平和的解決につながっていくことへの期待を表明し,全ての関係国が力ではなく法に基づく国際秩序を遵守すべきであると訴えました。

(イ)これに関連し,多くの国から,南シナ海に関し最近の情勢に関する懸念が表明され,仲裁裁判を含む国際法に従った紛争の平和的解決と自制の重要性につき発言があり,南シナ海行動宣言(DOC)の完全な実施,南シナ海行動規範(COC)の早期締結の重要性につき発言がありました。

(2)北朝鮮

(ア)岸田大臣から,拉致,核,ミサイルといった北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的解決を目指す日本の方針に変わりはない旨説明しました。また,北朝鮮に対し,国連安保理決議や六者会合共同声明の遵守及び非核化等に向けた具体的な行動を求めました。さらに,拉致問題をはじめとする北朝鮮の深刻な人権・人道問題に関する国際社会の懸念に耳を傾け,ストックホルム合意に基づき全ての拉致被害者を帰国させるよう求めました。

(イ)これに関連し,非常に多くの国から,北朝鮮の核・ミサイル開発は累次の国連安保理決議に違反するものとして懸念が示されました。なお,北朝鮮からは,従来の北朝鮮独自の主張が述べられました。

(3)テロ及び暴力的過激主義対策

(ア)岸田大臣から,日本人7名が犠牲になったダッカにおける襲撃事件やジャカルタ,ブリュッセル,ニース等での大規模なテロを含む,昨今の一連のテロ事件への強い非難と全ての犠牲者及びその御家族への心からの哀悼の意を表明しました。テロの根絶に向けては,国際社会の連携を一層深めていくとともに断固としてテロに屈しない姿勢を示していくことが重要であることを指摘しました。

(イ)これに関連し,多くの国から,テロ及び暴力的過激主義が各国にとり深刻な課題であり,その取組は一国のみでは行えないものであることから,AFRは同分野における連携を深めるに相応しいフォーラムであり,ARFにおける取組に対する期待が表明されました。

(ウ)また,ARFとしてテロに断固として屈せず,連携して,テロ及び暴力的過激主義対策を強化していく決意を示すため,岸田大臣から,ラオス,EU,カナダと共に「最近の残虐なテロ行為に関するARF閣僚声明」の発出を提案し,全会一致で了承されました。また,いくつかの国から日本の本件イニシアティブを評価する旨の発言がありました。

(4)ARFにおける連携・取組の強化

多くの国から,ARFは,加盟国同士の信頼醸成を深めるのみならず,テロ,難民,気候変動といった非伝統的な脅威について率直な意見交換を行うのに相応しいフォーラムであるとの発言がありました。

3 ARFへの貢献

更に岸田大臣は,ARFが政治・安全保障問題に関する率直な意見交換の場としてアジア太平洋地域の安全保障環境の向上に貢献してきたこと及び具体的な協力を通じた信頼醸成を行ってきたことを評価する発言を行いました。また,日本が,国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から,引き続きARFの様々な分野における取組に積極的に参加し,貢献していくことを改めて強調しました【注】。また,今後サイバーや宇宙に関する取組を更に進めていきたい旨発言しました。

(注)日本は,海上安全保障,災害救援の会期間会合(ISM,信頼醸成を図るために具体的な取組を進める会合)で共同議長を務めました。

アジアへ戻る