国際組織犯罪に対する国際社会と日本の取組

国連人権理事会の「プライバシーの権利」特別報告者による公開書簡に対する日本政府見解

平成29年5月18日

5月18日夜(日本時間),ジョゼフ・カンナタチ国連人権理事会の「プライバシーの権利」特別報告者(Mr. Joseph Cannataci, Special Rapporteur on the right to privacy)発安倍総理大臣宛の公開書簡の発出を受け,我が方ジュネーブ代表部から国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に対して,以下の抗議を行いました。

  1. 貴特別報告者の懸念及び質問に関しては,日本政府として速やかに御説明する用意がある。しかしながら,そもそも我が国における今回の組織的犯罪処罰法の改正(テロ等準備罪の創設)は,既に187の国・地域が締結している国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結するための国内担保法を整備するものであることを指摘したい。
  2. TOC条約第5条は,締約国に対し,「重大な犯罪を行うことの合意」又は「組織的な犯罪集団の活動への参加」の少なくとも一方を犯罪化することを義務付けている。しかし,我が国には,現行法上,「参加罪」は存在しない上,「重大な犯罪の合意罪」に相当する罪も,ごく一部しか存在しない。つまり,我が国の現行の国内法では,TOC条約の義務を履行できないのである。
  3. このように,我が国がTOC条約を締結するためには,新たな立法措置が必要である。しかしながら,TOC条約の国内担保法については,国民の内心を処罰することに繋がるのではないかといった様々な懸念が示され,10年以上の長きにわたり議論が行われてきた背景がある。
  4. 今回,我が国が整備しようとしている「テロ等準備罪」の法案は,そのような国民の意見を十分に踏まえて策定されたものである。すなわち,同条約が規定する「長期4年以上の自由を剥奪する刑」を「重大な犯罪」とした上で,同条約が認めている「組織的な犯罪集団が関与するもの」との要件を付し,対象犯罪を「組織的犯罪集団」が関与することが現実的に想定される「重大な犯罪」に限定している。さらに,同条約が認めている「合意の内容を推進するための行為を伴う」という要件も付している。
  5. 前述のとおり,187の国と地域が同条約を締結しているが,我が国が承知する限り,「テロ等準備罪」のように,国内法において2つの要件を付している国はほとんどない。そして,ほとんどの国が,「重大な犯罪の合意罪(いわゆる共謀罪)」の対象犯罪を,「長期4年以上の自由を剥奪する刑」に限定せず,あらゆる犯罪としている。また,同条約の採択以前から,ほとんどの国には「重大な犯罪の合意罪」又は「参加罪」が存在し,本条約の締結に際し新たな法整備が必要でなかったことも指摘したい。
  6. これらのことからも,我が国の「テロ等準備罪」が,187の国と地域の国内法との比較において,極めて制限的な処罰法であることは明らかである。そして,仮に貴特別報告者の懸念が正しいものであるならば,それは,我が国の「テロ等準備罪」に向けられる前に,187の国と地域の国内法に向けられなければならないはずである。
  7. 本件について,我が国としては,貴特別報告者が国連の立場から(注)このような懸念を表明することは差し控えて頂きたかった。貴特別報告者が海外にて断片的に得た情報のみをもってこのような懸念を示すことは,日本の国内事情や「テロ等準備罪」の内容を全く踏まえておらず,明らかにバランスを欠いており,不適切であると言わざるを得ない。まずは,現在我が国で行われている議論の内容について,公開書簡ではなく,直接説明する機会を得られてしかるべきであり,貴特別報告者が我が国の説明も聞かずに一方的に本件公開書簡を発出したことに,我が国として強く抗議する。
(注)国連側に''in the name of the Special Rapporteur of the United Nations''との表現で伝達済み。

このページのトップへ戻る
国際組織犯罪に対する国際社会と日本の取組へ戻る