女性
G7・WINDS特別イベント「STEM分野で輝く女性の未来」
平成28年12月13日


12月13日,東京においてG7・WIND特別イベント「STEM分野で輝く女性の未来」が開催されました。本イベントは,G7伊勢志摩サミットにおいて立ち上げられた「女性の理系キャリア促進のためのイニシアティブ(WINDS)」の一環であり,プムズィレ・ムランボ=ヌクカUN Women事務局長,原山優子内閣府総合科学技術・イノベーション会議議員,G7WINDS大使,G7代表,OECD,民間企業,学術関係者,学生等が参加しました。(STEM分野に進む女性の課題,政策は別途WAW!2016のハイレベル・ラウンド・テーブル「STEM分野における女性の人材育成・活躍促進」でも議論されました。)
はじめに,ムランボ=ヌクカUN Women事務局長が基調講演を行い,G7各国が国内外で女性の参画とエンパワーメントを促進する政策を支持することは重要だと述べました。また,女性の非正規労働,早期婚,デジタル・ディバイド等の問題にも触れ,解決策としてSTEM分野を含む教育の重要性を強調しました。
また,G7WINDS大使,G7代表及びOECDが,ロールモデルとして自らの経験,STEM分野に進む女性のキャリア・ビジョン,各国の現状,取組みについてプレゼンテーションを行い,その後ディスカッションを行いました。主なポイントは以下のとおりです。
1 STEM分野における女性を取り巻く現状
- 理系分野の中でも,物理,工学系において女子の割合が特に低いことが複数の発表で言及されました。宇宙飛行士の山崎直子氏が女性宇宙飛行士は全体の約10%,メアリー・ウェルズ・ウォータールー大学機械・機械電子工学教授(カナダ)は,大学卒業後に工学系の職に就く女性の割合は約12%と説明しました。一方,ヴィヴィアン・ウィリス=マツィッチ欧州委員会ジェンダー課長(EU)は,EU域内(28か国)で理系分野の博士号取得者(2012年)は47.3%であり,数学,物理では平均より少ないが,女性の割合が約50%に達している国もあることを述べました。
- ムランボ=ヌクカUN Women事務局長は,STEM分野のキャリアを取り上げた映画では,主人公の約88.4%が男性,約11.6%が女性で,男性は女性の2倍台詞があることを紹介しました。また,シモナ・セッテパネラ北海道大学理学部数学科教授(イタリア)は,イタリアにおいてSTEM分野の専門的なインタビューで,女性は約12%しか登場しないことを紹介しました。
- モンセラ・ゴメンディオOECD教育・技能局次長は,STEM分野において,15歳の男子と女子の能力の差はほとんどないが,女子は科学の能力に自信がないというOECDの調査結果を説明しました。
- 複数の参加者から,女子やその親はどのようなSTEMキャリアがあるのかよく知らないとの指摘がありました。
- 女性がSTEM分野に進むことの障害となっていることの一つは,固定観念であり,STEMキャリアは親や教師が女子の将来に描くイメージに当てはまらないため,反対されて女子が諦めてしまうケースがあることは複数の発表で言及されました。OECDの統計において,親は女子より男子にSTEMキャリアを期待していることが示されています。またアヴリル・マクドナルド・リーディング大学名誉教授(英)は,女子の自己認識と科学者のイメージの間にギャップがあることも明らかにしました。
- セッテパネラ教授は,法律を学ぶことを親に進められましたが,自分の好きな道を選び数学者になった自らの経験を共有し,固定概念の除去と共に各人の「熱意」が大切であることが共有されました。
2 STEM分野における女子・女性の活躍促進のための取り組み
- ロールモデルを示すことは女性がSTEM分野に進む支援をする上で効果的で,身近で親しみやすいSTEM分野の女性を示すことが有益と複数の発表で言及されました。
- マクドナルド教授は,好事例として女子が自分自身と適性があるSTEMキャリアについて知ることができる質問票を紹介しました。
- 各国で既に取り組んでいるように,STEM分野の女性のネットワークの更なる強化や,女性に優しい制度にするため組織の改革の更なる強化の必要性が複数の発表で言及されました。
- STEM関連のセミナーやプログラムは各国で行われており,ウェルズ教授は親と子を対象としたセミナーやプログラムを紹介し,川上知紀トヨタ自動車(株)人材開発部主査や塩入徹弥氏大成建設株式会社管理本部人事部長兼人材いきいき推進室長は仕事を知ってもらうための自社の取組みについて説明しました。
- 女性がメディアであまり取り上げられていないことから,STEM分野の女性をメディアで取り上げてもらうようもっと取組みを行わなければならないとの意見も多くの参加者の賛同を得ました。
3 今後の動き
こうした好事例を共有し,各国の取組みにも取り入れていくことで,STEM分野における女性の活躍が進んでいくと考えています。日本はWINDS大使に協力頂き,本イニシアティブをより一層広めて参ります。また,2017年,イタリアはG7議長国としてWINDSに引き続き取り組む旨表明しました。