ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)

ハーグ条約と国内実施法の概要

平成29年10月5日

英語版 (English)

1 ハーグ条約の概要

増加する国際結婚・離婚と「子の連れ去り」

 1970年には年間5,000件程度だった日本人と外国人の国際結婚は,1980年代の後半から急増し,2005年には年間4万件を超えました。これに伴い国際離婚も増加し,結婚生活が破綻した際,一方の親がもう一方の親の同意を得ることなく,子を自分の母国へ連れ出し,もう一方の親に面会させないといった「子の連れ去り」が問題視されるようになったほか,外国で生活している日本人が,日本がハーグ条約を未締結であることを理由に子と共に日本へ一時帰国することができないような問題も生じていました。

子の利益を守る「ハーグ条約」とは?

 世界的に人の移動や国際結婚が増加したことで,1970年代頃から,一方の親による子の連れ去りや監護権をめぐる国際裁判管轄の問題を解決する必要性があるとの認識が指摘されるようになりました。そこで,1976年,国際私法の統一を目的とする「ハーグ国際私法会議(HCCH)別ウィンドウで開く」(オランダ/1893年設立)は,この問題について検討することを決定し,1980年10月25日に「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」を作成しました。2017年10月現在,世界98か国がこのハーグ条約を締結しています。(締約国一覧(PDF)別ウィンドウで開く
 なお,ハーグ条約とは,HCCHで作成された30以上の国際私法条約の総称を指すこともありますが,ここでは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」のことを「ハーグ条約」と表記することにします。

ハーグ条約の仕組み

 国境を越えた子の連れ去りは,子にとって,それまでの生活基盤が突然急変するほか,一方の親や親族・友人との交流が断絶され,また,異なる言語文化環境へも適応しなくてはならなくなる等,有害な影響を与える可能性があります。ハーグ条約は,そのような悪影響から子を守るために,原則として元の居住国に子を迅速に返還するための国際協力の仕組みや国境を越えた親子の面会交流の実現のための協力について定めています。

(1)子を元の居住国へ返還することが原則

 ハーグ条約は,監護権の侵害を伴う国境を越えた子の連れ去り等は子の利益に反すること,どちらの親が子の監護をすべきかの判断は子の元の居住国で行われるべきであること等の考慮から,まずは原則として子を元の居住国へ返還することを義務付けています。これは一旦生じた不法な状態(監護権の侵害)を原状回復させた上で,子がそれまで生活を送っていた国の司法の場で,子の生活環境の関連情報や両親双方の主張を十分に考慮した上で,子の監護についての判断を行うのが望ましいと考えられているからです。

(2)親子の面会交流の機会を確保

 国境を越えて所在する親と子が面会できない状況を改善し,親子の面会交流の機会を確保することは,不法な連れ去りや留置の防止や子の利益につながると考えられることから,ハーグ条約は,親子が面会交流できる機会を得られるよう締約国が支援をすることを定めています。

条約を締結した意義

  • 最も優先されるのは子の幸せ

 ハーグ条約を締結する前は,日本から外国に子を連れ去られた場合,子を連れ去られた親が異なる法律,文化の壁を乗り越えながら,自力で子の居所を探し出し,外国の裁判所に子の返還を訴えなければなりませんでした。また,外国で生活している日本人が,子と共に一時帰国しようとしても,仮に一時帰国にとどまらず子の留置に発展したときに条約に基づく返還手続が確保されないとして,外国の裁判所等において子と共に日本へ一時帰国することが許可されないといった問題も発生していました。
 しかしながら,日本がハーグ条約を締結したことによって,双方の国の中央当局を通じた国際協力の仕組みを通じ,相手国から子を連れ戻すための手続や親子の面会交流の機会の確保のための手続を進めることが可能になりました。
 具体的には,子の不法な連れ去り等が発生した際の返還のためのルールが明確となり,国際的な基準(条約)に従って,問題の解決が図られるようになったほか,外国で生活している日本人にとって,ハーグ条約を未締結の国への子を伴う帰国についての渡航制限による制約がなくなるといった効果もあります。
 また,一方の親の監護の権利を侵害するような形で子を不法に連れ去った場合は子を元の居住国に返還しなくてはならないという条約の原則が広く周知されることは,子の一方的な連れ去り等について慎重に考える機会となるものと期待されています。
 さらに,国境を越えて所在する親子が面会できる機会の確保が期待されています。

条約の締結

 日本においては,政府が,2011年1月から,ハーグ条約の締結の是非を検討するために関係省庁の副大臣級の会議を開催別ウィンドウで開くし,締結賛成派,締結反対派等各方面から寄せられる意見も踏まえ,日本の法制度との整合性,子の安全な返還の確保,中央当局の在り方等について慎重に検討を行いました。その結果,ハーグ条約の締結には意義があるとの結論に至り,2011年5月に条約締結に向けた準備を進めることを閣議了解し,返還申請等の担当窓口となる「中央当局」は外務省が担うとの方針の下,法務省及び外務省において当事者や専門家等の様々な方面からの声を踏まえつつ,実施法案が作成されました。
 そして,2013年の第183回通常国会において5月22日にハーグ条約の締結が承認され,6月12日に「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」(以下「実施法」といいます。)が成立しました。
 条約及び実施法の承認・成立を受け,2014年1月24日,日本は,条約の署名,締結,公布にかかる閣議決定を行うとともに,条約に署名を行った上で,オランダ外務省に受諾書を寄託しました。この結果,日本について,ハーグ条約が同年4月1日に発効しました。

(詳細は締結に至る経緯をご覧ください。)

関連資料

2 国内実施法の概要

(1)趣旨

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(平成25年法務省第48号)は,ハーグ条約の実施に必要な国内手続等を定めるものです。

(2)概要

  • (ア)日本の中央当局を外務大臣と指定し,その権限等を定めると共に,
  • (イ)子が不法に連れ去られる前に常居所を有していた国に子を返還するか否かを決定するために必要な裁判手続(子の返還手続等)について定めています。
     ハーグ条約が45条で構成されているのに対し,実施法は153条で構成されています。

(3)施行日等

  • (ア)公布日 平成25年6月19日
  • (イ)施行日 平成26年4月1日

(4)実施法テキスト

(5)実施法概略図とポイントとなる条文

実施法概略図

  • 実施法概略図

ポイントとなる条文

中央当局の指定と権限
  • 中央当局の指定 3条
  • 外国返還援助
  • 申請 4条
  • 子の所在の特定 5条
  • 援助決定及び申請の却下 6条 7条
  • 合意による子の返還の促進 9条
  • 日本国返還援助
  • 援助決定及び申請の却下 12条 13条
  • 子の社会的背景に関する情報の交換 15条
  • 日本国面会交流援助 16条~
  • 援助決定及び申請の却下 17条 18条
  • 外国面会交流援助 21条~
  • 援助決定及び却下 22条 23条
子の返還のために必要な裁判手続
  • 管轄
  • 子の返還事件を審理する裁判所を東京家裁,大阪家裁に集中 32条
  • 子の返還事件の審理
  • 子の返還を拒否できる事由について列挙 28条
  • 出国禁止命令制度を規定 122条~
  • 裁判等
  • 終局決定 91条~94条
  • 調停 144条~
  • 和解 100条
  • 不服申立て 101条~
  • 執行手続
  • 間接強制のほか子の返還の代替執行を利用 134条~
法律が適用される事案
  • 附則2条
  • 本法律は法律の施行前にされた不法な連れ去り,留置には適用しない。

(6)関連する政省令等


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