ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)
ハーグ条約の締結と国内実施法の概要
1 ハーグ条約と日本の締結
ハーグ条約採択の経緯
1970年代頃から、国際的な人の移動や国際結婚の増加により、一方の親がもう一方の親の同意を得ることなく子を自分の母国や第三国に移動させる「子の連れ去り」が問題視されるようになり、子の監護に関する紛争の解決のための国際的なルールの必要性が指摘されるようになりました。そこで、1976年、国際私法の統一を目的とする「ハーグ国際私法会議(HCCH)(英語)
」(オランダ/1893年設立)は、この問題について検討することを決定し、1980年10月に「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」を採択しました。
日本がハーグ条約を締結した意義
日本は、2014年にハーグ条約を締結しました。このことは、日本にとって、国際的な子の移動に関わる問題の解決において、重要な意義を持ちます。
(1)ハーグ条約締結前の課題
ハーグ条約を締結する前、日本から国外に子を連れ去られた親は、外国の異なる法制度や文化の壁に直面し、子の居所特定から外国の裁判所での裁判に至るまで、多大な負担と困難を抱える状況にありました。また、外国で生活している日本人が、子と共に一時帰国することを希望しても、その一時帰国が子の留置へと発展した場合に条約に基づく解決手段がないという理由から、もう一方の親からの同意が得られない、あるいは外国の裁判所が日本への一時帰国を許可しないといった問題も生じていました。
(2)ハーグ条約締結後の改善と具体的な意義
- 国際協力と支援の確保
日本がハーグ条約を締結したことで、条約が定める国際的なルールに基づき、日本から不法に連れ去られた子の返還や、外国にいる子との交流の機会の確保について、外国及び日本の中央当局(日本では外務省)からの支援を得て手続を進めることが可能になりました。各国の中央当局からは、それぞれの国の実情に応じて、子の所在特定、弁護士紹介、裁判手続等に関する各種支援が提供されています。 - 在留邦人の帰国をめぐるトラブルの軽減
外国で生活する日本人が子と共に日本へ一時帰国することを希望する場合、日本が条約の締約国であることは、もう一方の親の同意や外国の裁判所の許可を得やすくし、日本への里帰りや外国からの出国の際のトラブル軽減につながっています。また、もう一方の親の同意なく子と帰国した場合における問題解決のための協議や裁判といった条約に基づく手続が明確化され、日本の中央当局による各種支援も利用できるようになりました。 - 国境を越えた子の移動に関する問題発生を未然に防ぐ効果
子を元の居住国に返還するという条約の原則が広く周知されたことが、安易に一方の親が他方の親の同意なく国境を越えて子を移動させることを防ぐ役割を果たしています。 - 国境を越えた親子の交流促進
条約の締約国となったことで、国境を隔てて居住する親子が交流できる機会の確保に関しても、各国の中央当局からの支援を期待できるようになりました。
ハーグ条約締結の経緯
日本政府は、2011年1月から、ハーグ条約締結の是非を検討するために、関係省庁の副大臣級の会議を開催し、締結賛成派、締結反対派等各方面から寄せられる意見も踏まえ、日本の法制度との整合性、子の安全な返還の確保、中央当局の在り方等について慎重に検討を行いました。その結果、ハーグ条約の締結には意義があるとの結論に至り、2011年5月に条約締結に向けた準備を進めることを閣議了解し、返還援助申請等の担当窓口となる「中央当局」は外務省が担うとの方針の下、法務省及び外務省において当事者や専門家等の様々な方面からの声を踏まえつつ、実施法案が作成されました。
そして、2013年の第183回通常国会において、5月22日にハーグ条約の締結が承認され、6月12日に「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」(以下「実施法」といいます。)が成立しました。
条約及び実施法の承認・成立を受け、2014年1月24日、日本は、条約の署名、締結、公布に係る閣議決定を経て、条約に署名を行い、オランダ外務省に受諾書を寄託しました。この結果、同年4月1日に、日本についてハーグ条約が発効しました。
- 【参考】
2 国内実施法の概要
(1)内容
実施法は、ハーグ条約の実施に必要な国内手続等を定めるものです。
実施法は、日本の中央当局を外務大臣と指定し、その権限等を定めるとともに、子が不法に連れ去られる前に常居所を有していた国に子を返還するか否かを決定するために必要な裁判手続(子の返還手続等)について定めています。
2019年の第198回通常国会において、実施法の一部を改正する法律案(「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案」)が可決・成立し、2020年4月1日に施行されました。
子の返還を命じる裁判所の決定を強制的に執行する手続として、改正前の実施法では、代替執行の申立て前に間接強制を実施する必要がありましたが、改正法では、一定の要件を満たせば、間接強制の手続を経ずに代替執行の申立てができるようになりました。また、改正前は、代替執行を行う場所に、子と共に債務者(子の返還をしなければならない人)がいる必要がありましたが、改正法では、債務者の立ち会いを不要としました。(ただし、原則として債権者が執行の場所に出頭することが必要です。)
(2)施行日等
- ア 公布日 平成25年6月19日(平成25年法律第48号)
- イ 施行日 平成26年4月1日
- ウ 改正(強制執行に関する規律の見直し) 令和2年4月1日施行、令和元年5月17日公布(令和元年法律第2号)
【改正概要】日本語版(PDF)
/英語版(PDF)
(3)実施法のテキスト

