日本の安全保障と国際社会の平和と安定

岸外務副大臣スピーチ(6月12日)

平成26年6月20日
皆様,

まず初めに紛争下の性的暴力という重要な問題に関心を持ち,これだけ多くの方が会場に来てくださったことを心強く思います。

この事実は,もはやこの問題が特定の国に限られたものではなく,国際社会全体の問題意識になっていることの証左だと思います。

武力紛争下での性的暴力は,関連する国際法の下では戦争犯罪とされています。紛争下の性的暴力(PSVI)は武力紛争下で武器としてレイプまたは他の形態の性的暴力が使われることを指摘し,加害者不処罰の文化を終焉させ,現在の,そして将来の事案を防止することにあると理解しています。これらの犯罪に問われた者は、国際的な規範と整合した形で、裁きにかけられるべきです。

しかし残念なことに,世界各地の紛争地域において性的暴力の犠牲者はあとをたたず,加害者は多くの場合何ら責任を問われていません。

そうした現状を踏まえ,日本は,紛争当事国の司法制度の強化や司法関係者の研修・意識啓発にも力を入れています。

例えば,今年は,コンゴ民主共和国やソマリアにおける性的暴力の責任者訴追に向けた司法制度強化等のため215万ドルを紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表事務所に拠出しました。

しかし,関係者の研修や意識啓発だけでは十分とは言えません。なぜならば,法的な枠組みを執行する人,利用するすべての人々の意識変革がなければ仕組みは十分機能しないからです。

また,性的暴力の被害者対策も急務です。この観点から,先般,日本政府はICC被害者信託基金に対して,約60万ユーロの拠出を初めて実施することを発表いたしました。

私たちはつい先日も,ナイジェリアで,「ボコ・ハラム」によって200名を超える女子生徒が拉致されたことを聞き,強い衝撃と憤りを覚えました。教育を求める若い女性が特に標的になったことは,決してPSVIと関係が薄いとは思えません。日本の岸田外務大臣からもただちに非難声明を発出しました。我が国は,「ボコ・ハラム」に苦しむ地域の人々を少しでも支援すべく緊急支援として85.5万ドルの拠出を検討しています。

性的暴力は犯罪です。重要なのは加害者の不処罰の文化を排除し性的暴力に対する人々の考え方の変革を促すことなのです。「紛争下の性的暴力終焉のためのコミットメント宣言」にも書かれているように,性的暴力の被害者の多くは女性です。紛争下の性的暴力防止イニシアティブにおいて,女性のエンパワーメントの推進及び政治的,社会的,経済的参画は社会の考え方を大きく変える原動力になると信じます。

この後行われる議論から私も多くのことを学び,国に持ち帰りたいと思います。

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