欧州
日・OSCE共催会議(概要)


1.オープニングセッション
(1)杉山外務審議官,グレミンガ-・スイスOSCE常駐代表,キスリツァ・ウクライナ外務次官,ザニエルOSCE事務総長がスピーチを行いました。
(2)杉山外審からは,国際協調主義に基づく「積極的平和主義」について発信すると共に,日本はOSCEの最も歴史あるパートナーであること,ウクライナ安定の実現に向けて鍵となる役割を果たすOSCEと日本のアプローチは親和性があること等を述べました。
(3)グレミンガ-・スイスOSCE常駐代表からは,OSCEがアフガニスタンにおける大統領選挙やウクライナ情勢等において果たす役割について言及したほか,日本のOSCEによる特別監視団に対する貢献等について謝意が表明されました。
(4)キスリツァ・ウクライナ外務次官からは,40年の経験があるOSCEはユニークな存在であること,OSCEはアジアのARF等からも学ぶことができること,最近のウクライナ情勢等について言及がありました。また,ウクライナに対する日本の貢献に謝意が表明されました。
(5)ザニエルOSCE事務総長からは,タジキスタンにおける国境管理事業,ウクライナにおける特別監視団等に対する日本の貢献に謝意が示されました。また,ウクライナにおける大統領選挙監視は1,000人規模でこれまでの同種の活動で最大規模であったこと,対話の重要性等につき言及しました。
2.第1セッション
(1)「新たな課題に直面する世界においてより安全で連結され,公正な世界をつくるためのOSCEとアジアパートナーの経験と教訓の共有」をテーマに議論を行いました。
(2)参加者は,OSCEが1週間に1回,定期的な大使級の対話の場を提供しており,包含性,包括性を有する組織であること,多国間の枠組みであり,論理的に議論を行う必要があること,また対話は重要であることで意見が一致しました。
(3)また信頼醸成措置を実施する場合には双方向のアプローチが重要であること,OSCEにはヘルシンキ最終合意やウィーン文書といった成果が存在するにも関わらず,いまだに地域に安定はもたらせていない,OSCEがアジアで何ができるのか,との指摘も見られました。また,ウクライナ情勢に関するやり取りも行われました。
(4)ホスト国代表として岸田文雄外務大臣も短時間参加し,日欧の安全保障が不可分であること,国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の下,自由と民主主義を促進し,法の支配を堅持すること,「力」を背景とした現状変更は許されず日本はウクライナ情勢を決して対岸の火事と見ていないこと,OSCEは日本の重要なパートナーであること等を述べました。
3.第2セッション
(1)「グローバルな安全保障環境においてより連結された世界を作るための取組」をテーマに,参加者は,持続可能な水の管理,エネルギー安全保障,インフラ防護,気候変動や防災,腐敗対策など様々な内容につき議論を行いました。
(2)参加者は,エネルギーの多様化の重要性,エネルギー安全保障は一国で達成できるものではないため,生産者と消費者が共に取り組むことの重要性について一致しました。また,エネルギー資源を提供する前提として透明性や説明責任が重要であることについて一致しました。
(3)また,参加者からは官民学が一体となって環境問題に取り組むことが重要であること,欧州のエネルギー安全保障は隣国との関係を切り離すことができないため,目に見える手段を取っていくことが重要であること等の指摘もありました。日本の中央アジア,アフガニスタンに対する支援に謝意を表明する参加者もいました。
4.第3セッション
(1)「より公正な世界を作るための原動力としての女性の主流化への取組」をテーマに,参加者は,女性のエンパワーメント,女性の社会進出促進,暴力からの女性の保護等の課題につき議論を行いました。
(2)参加者からは,OSCEが策定した女性に関する行動計画や欧州評議会における取組を含め,各国・機関の取組について説明がありました。日本からは,「女性が輝く社会」の実現に向けた国内の関連施策や国際貢献,また,9月中旬に東京にて開催予定の「World Assembly for Women: Tokyo 2014」につき紹介しました。
(3)また,議論において,これらの課題には,女性のみならず男性の十分な関与も得て,安全保障,経済安全保障,そして人間の安全保障という複合的観点で取り組み,さらに,個人・地域・国それぞれのレベルで努力が必要であることが強調されました。例えば,教育・訓練の提供,権利・権限の付与,機会の平等について,地域経済や国際経済において実現すること,紛争下を含めて,暴力から保護される権利をしっかりと確保すること,これらの原動力となり得る政治・行政分野における女性の参画を推進することの重要性が指摘されました。
5.クロージングセッション
(1)グレミンガ-・スイスOSCE常駐代表が議長を務め,竹歳駐オーストリア大使,プロコプチェク・ウクライナOSCE常駐代表がとりまとめ発言を行いました。
(2)竹歳駐オーストリア大使からは,第1~3セッションにおける気付きの点に言及しつつ,今回の共催会議の議論を通じて,アジアと欧州の安全保障環境がより不可分に,かつ一層厳しさを増していること,両地域が共通のグローバル課題に直面していることが具体的な事例をもって確認されたことを説明しました。また,これらに取り組むに当たって,両地域の間で更なる協力の余地があることが確認でき,OSCEにおける今後の協力強化に向けた重要かつ大きな一歩となった旨述べました。
(3)プロコプチェク・ウクライナOSCE常駐代表からは,OSCEのアプローチの包括性や,OSCEの規範設定,対話の場の提供,具体的協力の推進という3つの機能に言及しつ,多様性に富むOSCEのツールボックスは,紛争予防のため有効であると述べました。また,ヘルシンキ最終合意等のOSCEの基本原則は国際社会の平和と安定のため重要であり,「領土の一体性」と「法の支配」が国際関係の基盤であると述べました。
(4)最後にグレミンガ-・スイスOSCE常駐代表から,欧州とアジアの安全保障環境は不可分であり,欧州,アジアが双方から多くを学び,安全保障分野において協力を深めていく余地があることが確認できたと会議を締めくくり,ホスト国である日本をはじめ関係者の協力に謝意が示されました。
(参考)
(1)欧州安全保障協力機構(OSCE:the Organization for Security and Co-operation in Europe)は,北米(米・カナダ)から,欧州,中央アジアの57か国が加盟する欧州の安全保障機構。加盟国地域の安全保障に関わる問題に,政治・軍事面のみならず,経済や人権など,包括的な観点から取り組んでいる。
(2)OSCEの協力のためのパートナー国は以下のとおり。
・協力のためのアジアパートナー国:日本,韓国,タイ,アフガニスタン,オーストラリアの5か国
・協力のための地中海パートナー国:アルジェリア,エジプト,イスラエル,モロッコ,チュニジア,ヨルダンの6か国
(3)日本,韓国,タイ,アフガニスタン及びオーストラリアの5か国は,OSCEのアジアパートナー国として,毎年の輪番でOSCEとの共催会議を開催している。日本における開催は,2000年12月,2004年1月,2009年6月に引き続き4回目。