経済協力開発機構(OECD)
2025年OECD閣僚理事会(結果概要)
令和7年6月5日


6月3日及び4日、フランス・パリでOECD閣僚理事会(Meeting of the Council at Ministerial Level: MCM)が開催され、我が国から、平デジタル大臣、藤井外務副大臣、瀬戸内閣府副大臣、大串経済産業副大臣、川崎総務大臣政務官ほかが出席したところ、結果概要は以下のとおりです。
【ポイント】
- 今回の閣僚理事会は、議長国であるコスタリカ(チャベス大統領(ビデオメッセージ)、トバール貿易大臣、ボガンテス科学技術通信大臣らが出席)、副議長国の豪州、カナダ及びリトアニアの下、「ルールに基づく貿易、投資、イノベーションを通じて、強靭で包摂的、持続可能な繁栄への道を切り開く」をテーマに開催され、国際貿易システムの強化と経済安全保障、包摂的な世界経済の構築、AIを含めたデジタル経済について議論が行われました。
- 藤井副大臣からWTOを中核とする多角的貿易体制の維持・強化、経済的威圧への対応を含めた経済安全保障、包摂的で持続可能な経済成長、「共創」の概念に沿った非加盟国、特に東南アジアへ向けたアウトリーチの重要性について発言しました。
1 参加国・機関
- OECD加盟国:38か国(議長国:コスタリカ、副議長国:豪州、カナダ、リトアニア)
- 加盟候補国:アルゼンチン、ブラジル、ブルガリア、クロアチア、インドネシア、ペルー、ルーマニア、タイ
- キー・パートナー国:ブラジル、中国、インド、インドネシア、南アフリカ
- その他招待国・地域:エジプト、香港、マレーシア(ASEAN議長国)、モーリシャス、モロッコ、パラグアイ、フィリピン、ウクライナ、ウルグアイ、シンガポール、ベトナム
- その他:EU、BIAC(経済産業諮問委員会)、TUAC(労働組合諮問委員会)、IEA(国際エネルギー機関)、ASEAN、アジア開発銀行、WTO、世界銀行、国連開発計画ほか
2 主な議題と概要
6月2日(月曜日)
サイドイベント「経済安全保障の強化と経済的強靱性の構築」
- 日本と副議長国リトアニアの共催により開催された本イベントでは、冒頭、藤井副大臣から、本イベントは経済安全保障を巡る諸課題に関する対話を促進することを目的としている旨述べた上で、OECDがルールに基づく国際貿易システムの維持のために果たす役割について触れつつ、経済的強靭性の強化と世界経済の安定確保に向けた多国間協力の強化を呼びかけました。
- その後、日本を始めとする一部のOECD加盟国政府関係者等によるパネルディスカッションが行われ、OECDの活用を含む経済的強靱性・経済安全保障の強化に向けた取組について活発な議論が行われました。
6月3日(火曜日)
(1)開会
- 冒頭、コーマンOECD事務総長から最近のOECDの取組について発言があり、次に、議長国コスタリカのチャベス大統領の開会ビデオメッセージに続き、トバール貿易大臣からOECDの使命、価値観及び国際的な影響は、かつてないほど重要であると述べた後、副議長国の豪州、カナダ、リトアニアからそれぞれ開会挨拶がありました。また、ウクライナのシュミハリ首相が演説を行い、OECD加盟国の同国への連帯と支援に謝意を表明しました。
- また、OECD東南アジア地域プログラムの共同議長国の豪州とベトナムから、カナダとフィリピンへの交代式が執り行われた後、「OECDラテンアメリカ・カリブ海地域戦略枠組」が発表されました。
(2)セッション1:OECD経済見通しに関する議論
- 先進国・新興国ともに投資の低迷が潜在成長鈍化の一因であり、投資の活性化と生産性向上に向けた構造改革の必要性が確認されました。
- インフレ圧力の持続、不確実性の増加、金融市場の変動に加えて、貿易の緊張が経済成長と物価安定にさらなるリスクをもたらすとの指摘がありました。
(3)セッション2:開かれた市場とルールに基づく国際貿易システムの積極的強化
- WTOを中核とする、ルールに基づく、開かれた、公正な多角的貿易体制は重要であり、より安定した、予測可能で、強靱なサプライチェーンの構築に不可欠である点が確認されました。
- また、意義のある包括的なWTO改革の必要性や、WTOのすべての中核的機能の強化及びWTO紛争解決制度の機能改善は重要である点が指摘されました。
- 藤井副大臣から、多角的貿易体制の維持と強化が何より重要であり、WTO改革を粘り強く進める必要性や、すべての人がその恩恵を受けられる、公平で持続可能な貿易体制の構築が不可欠である旨述べました。
(4)セッション3:革新的政策を通じた持続可能で包摂的な世界経済の構築
- 持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)の達成に向け、包摂的で持続可能な経済成長を実現する上で、貿易及び投資政策が重要な役割を果たすことが確認されました。
- 「質の高いインフラ投資に関するG20原則」及び「G7グローバル・インフラ投資パートナーシップ」に沿って質の高いインフラ投資に対するコミットメントが再確認されました。
- 藤井副大臣から、包摂的で持続可能な経済成長を達成する上で、国際協調を通じた企業の予見可能性の向上など国際投資環境の整備が必要であるとした上で、グローバルバリューチェーンにおける人権の尊重、環境の観点からグリーン成長と持続可能な開発の支援、女性の経済的エンパワーメント、質の高いインフラ投資、生涯教育の重要性を述べました。
6月4日(水曜日)
(5)セッション4:OECDのグローバル関係と拡大
- 地政学的に一層複雑化する環境の中で、OECDの持続的な意義、影響力、及び関与の広がりを確保する手段として、グローバルな関与の強化の重要性が強調されました。
- 藤井副大臣から、日本が重視するOECDのアウトリーチの原則として「共創」の概念を掲げ、それが非加盟国の経済社会制度の強化につながる旨発言しました。また、インドネシアとタイの加盟申請、日本が2014年に立ち上げたOECD東南アジア地域プログラムに言及し、今後AIの分野における東南アジアへのアウトリーチに力を注ぐ旨述べました。
(6)セッション5:共通の繁栄のためのデジタル経済の活用
- 信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)の重要性が強調されました。
- 対内・対外直接投資(FDI)による変革の力を強調。特に、デジタルイノベーションの促進、雇用機会拡大、そして中小企業、女性、高齢者、障害者、脆弱な立場にある人々の国際市場へのアクセス促進に資するとの指摘がありました。
- 新興国・途上国において、FDIがデジタルデバイドの解消や長期的な経済発展を支える上で重要であり、人口減少傾向にある先進国においても、FDIは活力ある経済活動をもたらす重要な手段であると指摘されました。
(7)セッション6:AIガバナンスとグローバルな協力の推進
- AIの可能性とリスクの両面に言及があったほか、AIガバナンスの国際的な相互運用を促進するためAIガバナンスをマルチステークホルダー間で議論することなどの重要性が確認されました。
- そのような取り組みを進める際には、OECD AI原則、高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際行動規範、グローバル・デジタル・コンパクトといった国際的な規範との整合性が重要であること、また広島AIプロセス・フレンズグループ等のイニシアティブの重要性が確認されました。
3 バイ会談等
藤井副大臣は、MCMの機会を捉え、コーマン事務総長、インドネシア、コスタリカ、フランス、リトアニア、メキシコ、ベトナムの代表とバイ会談を行い、また、パリ市内の国際交流基金パリ日本文化会館を視察しました。
藤井副大臣は、コーマン事務総長に対し、日本のOECDへのコミットメントは不変である旨伝達し、両者は日OECD関係を強化していくことで一致しました。また、アイルランガ・インドネシア経済担当調整大臣との会談では、藤井副大臣から、日本はインドネシアのOECD加盟を一貫して支持しており、本年、東南アジア向けに追加支援を決定するなどインドネシアの加盟プロセスを一層力強く支援していく旨を述べました。