経済協力開発機構(OECD)

平成28年4月18日

 グリアOECD事務総長は,4月9日(土曜日)から13日(水曜日)までの日程で訪日したところ,概要及び評価は以下のとおりです。

ポイント

 全体として,以下の成果があり,日・OECD関係の強化を通じた我が国の経済外交について大きな進展があった。

  • 安倍総理,岸田外務大臣他との会談や,第5回国際金融経済分析会合への出席を通じて,G7伊勢志摩サミットの成功に向けた協力や日本のOECD開発センター復帰を含む,日・OECD関係の強化が確認された。
  • 閣僚等への個別表敬,政策提言の公表を通じ,また,いわゆる「パナマ文書」の公表をきっかけに国際的な課税逃れへの関心が高まったことから,OECDの知見や活動に関する我が国の認知度が高まった。
  • 訪日の機会に開催されたOECDグローバル議員ネットワーク(OGPN)東京会合を通じて,我が国とOECD加盟各国間との関係が国会議員間においても強化された。
  • アジアで初となるOGPN会合の開催や同会合へのASEAN各国議員の同席,我が国のOECD開発センター復帰の意図表明によって,我が国が推進するOECDの東南アジアへのアウトリーチに新たな進展があった。

1 主要日程

(1)4月11日

  • (ア)神津里季生・日本労働組合総連合会会長との朝食会に出席し,意見交換を行った後,林経済産業大臣,麻生副総理兼財務大臣,石原内閣府特命担当大臣(経済財政政策)を表敬訪問し,意見交換を行った。
  • (イ)その後,(公社)日本経済研究センター(JERC)において,現下の国際経済情勢と日本への政策提言に関する講演を実施。次いで,石井国土交通大臣を表敬訪問し意見交換を行ったのに続き,OECD国土・地域政策レビュー記念シンポジウム(国土交通省とOECDとの共催)に出席し,基調講演を行った。
  • (ウ)夕刻,日本記者クラブにおいて,我が国の経済・社会政策に関する概観及び政策提言をまとめた小冊子「OECDベター・ポリシー・シリーズ 日本:高齢化社会における成長と幸福の促進」(2年に1回,公表するもの。今回は,「高齢化社会における成長と幸福度の向上」がテーマ。)を公表し,記者会見を行った。その後,事務総長主催のレセプションを日本プレスセンターで開催した。

(2)4月12日

  • (ア)斎藤勝利・(一社)日本経済団体連合会OECD諮問委員会委員長(OECD経済産業諮問委員会(BIAC)理事会副会長)主催の朝食会に出席し,意見交換を行った後,OECDグローバル議員ネットワーク(OGPN)東京会合(衆参両院とOECDとの共催。)の開会式で挨拶し,同会合セッション1「世界経済の展望」で講演。その後,同会合に伴い開催された林経済産業大臣主催レセプションに出席した。
  • (イ)午後は,大島理森・衆議院議長,安倍内閣総理大臣を表敬訪問し,意見交換を行った後,OGPN東京会合参加議員一行の安倍総理大臣への表敬に同席。その後,馳文部科学大臣,岸田外務大臣を表敬訪問し,意見交換を行ったほか,夕刻,OGPN東京会合に伴い開催された衆参両院議長主催レセプションに出席した。

(3)4月13日

  • (ア)総理官邸で第5回国際金融経済分析会合に出席し,意見を述べたほか,黒田東彦・日本銀行総裁,榊原定征・経団連会長を表敬訪問し,意見交換を行った。
  • (イ)その後,OGPN東京会合の閉会式で挨拶を行ったほか,同会合に伴い開催された岸田外務大臣主催レセプションへと出席。

2 主な表敬・会談の概要

(1)OECD国土・地域政策レビュー公表記念シンポジウム(4月11日午後)

  • (ア)日本政府が2015年8月に新たな国土形成計画を策定し,これを踏まえ,OECDでは,日本の国土・地域政策について評価と勧告をとりまとめたのを機会に,それらの内容を紹介しつつ,危機をチャンスに変える戦略をどのように政策として具体化していくのかについて,有識者を交えて議論が行われた。
  • (イ)グリア事務総長からは,我が国の長期的,総合的な戦略である国土形成計画とその実施理念であるコンパクト・プラス・ネットワークは,急激な人口減少,高齢化に直面する我が国の危機をチャンスに変えるために必要な戦略であり,国内における着実な実施とともに,今後,同様の危機に直面する世界の各国に向けて積極的に情報発信していくべきとの評価がなされ,我が国の関連施策の一層の推進と,今後,世界に向けた貢献を進めていくよい機会となった。

(2)安倍総理表敬(4月12日午後)

  • (ア)安倍総理大臣は,冒頭,グリア事務総長の訪日を歓迎し,日本のOECD開発センターへの復帰の意図を表明。また,アジア初となるOGPN会合の東京開催を歓迎し,日本がOECDとアジアの架け橋として役割を果たしていく旨述べた。さらに,安倍総理大臣は,「世界津波の日」に関する「高校生サミット」についても,OECDとの連携を期待する旨発言した。
  • (イ)これに対して,グリア事務総長からは,日本のOECD開発センター復帰を歓迎するとともに,OECDの活動を通じて日本に貢献したい旨発言。また,OGPN会合の東京開催はアジア初の開催という貴重な機会となった旨述べた。さらに,グリア事務総長からは,OECDがG7やG20にも積極的に貢献していく用意があるとの意向が示され,両者は,G7伊勢志摩サミットの成功に向け連携していくことで一致した。

(3)岸田外務大臣との会談(12日午後)

  • (ア)岸田外務大臣から,グリア事務総長の訪日を歓迎し,アジア初となるOGPN会合の東京開催を歓迎する旨述べた。また,G7伊勢志摩サミットに向けたOECDによる様々な貢献に感謝するとともに,OECDのアジアとの関係強化のためにも,日本が開発センターに復帰する意図を表明した。
  • (イ)これに対して,グリア事務総長からは,今回のG7広島外相会合が成功裡に終了したことに対する祝意とともに,日本のOECD開発センターへの復帰を歓迎する旨発言。さらに,G7伊勢志摩サミットの成功に向けて,引き続き貢献していきたい旨述べた。また,グリア事務総長から,OECDの政策提言である「OECDベター・ポリシー・シリーズ 日本:高齢化社会における成長促進と幸福度の向上」等につき,紹介した。

3 評価

 全体として,以下の成果があり,日・OECD関係の強化を通じた我が国の経済外交について大きな進展があった。

  • (1)安倍総理,岸田外務大臣他との会談を通じて,G7伊勢志摩サミットの成功に向けた協力や日本のOECD開発センター復帰を含む,日・OECD関係の強化が確認された。特に,我が国がG7サミットの議長国としての責務を果たすに当たり,国際金融経済分析会合にグリア事務総長を招待し,安倍総理以下主要閣僚が直接OECDの分析や政策提言に耳を傾けたことは,日・OECD関係の強さを印象づけるものとなった。
  • (2)グリア事務総長は,滞在中,総理・閣僚等の政府関係者の他,大島衆議院議長,黒田日本銀行総裁,榊原経団連会長,神津連合会長ら,各界の要人と精力的に会談し,経済・社会等の広い話題に関し有益な意見交換を実施した。また,2本の政策提言書を公表した。さらに,今次訪日の直前に,タックス・ヘイブンの利用に関するいわゆる「パナマ文書」が公表されたことをきっかけに,国際的な課税逃れの防止に関するOECDの取組みへの関心が高まり,これに関するグリア事務総長のコメントが多く報道された。これらを通じ,OECDの有する知見とその活動に関する日本国内における認知度が高まった。
  • (3)訪日の機会に開催されたOECDグローバル議員ネットワーク(OGPN)東京会合(注1)を通じて,我が国とOECD加盟各国間との関係が国会議員間においても強化された。
  • (4)アジアで初となるOGPN会合の開催や同会合へのASEAN各国議員の出席,先進国とアジアを含む新興国・途上国を包摂し,ともに様々な地域における開発協力について政策対話を行う重要な場であるOECD開発センター(注2)への我が国の復帰の意図表明によって,我が国が推進するOECDの東南アジアへのアウトリーチに新たな進展があった。
  • (注1)平成28年4月12日(火曜日)及び13日(水曜日)の2日間,開催。22カ国(OECD加盟12カ国,ASEAN加盟8カ国,その他2カ国)から61名の議員,OECD,議会関係者等約100名が参加し,我が国からは,二階俊博衆議院議員を団長,鶴保庸介参議院議員を副団長とする24名の国会議員(参議院8名,衆議院16名)が出席。同会合では,(ア)世界経済の展望(アジア経済の展望を含む),(イ)ジェンダー 経済成長の推進力としての女性,(ウ)防災,(エ)地域課題 アジアからの視点について議論。
  • (注2)1962年に設立された,発展途上国の開発問題に関する調査・研究を行うOECD内のシンクタンク。OECD諸国に加え,非OECD諸国も参加。現在,50カ国(OECD加盟国26か国,非加盟国24か国)が参加。我が国は設立当時から参加していたが,開発センターのガバナンス等を問題視し,2000年に脱退。その後,同センターの改革の進展を受け,英,ブラジルほか脱退国が復帰。新規参加国も相次ぎ,影響力が増大した経緯がある。

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