世界貿易機関(WTO)

平成28年9月5日

加盟国は、ここに、次のとおり協定する。

A. 目的

  1. この制度の目的は、すべての加盟国が、多角的貿易協定及び複数国間貿易協定(適用がある場合に限る。)に基づく規則、規律及び約束の遵守の状況を改善し、もって、加盟国の貿易政策及び貿易慣行について一層の透明性を確保し並びに理解を深めることにより、多角的貿易体制が一層円滑に機能することに資することである。したがって、この制度により、個々の加盟国の貿易政策及び貿易慣行の全般並びにこれらが多角的貿易体制の機能に及ぼす影響についての定期的なかつ共同の評価が可能となる。ただし、この制度は、これらの協定に基づく特定の義務の実施若しくは紛争解決手続の基礎となること又は加盟国に新たな政策に関する約束を行うよう要求することを目的とするものではない。
  2. この制度の下で行われる評価は、関係がある限りにおいて、対象となる加盟国の経済上及び開発上の広範なニーズ、政策及び目的の背景並びに当該加盟国の対外的な環境を生じさせた背景に照らして行われる。もっとも、この制度の目的は、加盟国の貿易政策及び貿易慣行が多角的貿易体制に及ぼす影響を検討することである。

B. 国内的な透明性の確保

加盟国は、貿易政策に関する政府の意思決定についての国内的な透明性の確保が加盟国の経済及び多角的貿易体制の双方にとって本質的に重要であることを認識し、かつ、自国の制度においてその透明性を一層高めることに同意する。加盟国は、国内的な透明性の確保が自発的に行われるものでなければならず、かつ、透明性の確保に当たっては、各加盟国の法制及び政治制度が考慮されなければならないことを認める。

C. 検討のための手続

  1. 貿易政策に関する検討を実施するため、貿易政策検討機関を設置する。
  2. すべての加盟国の貿易政策及び貿易慣行は、定期的な検討の対象となる。個々の加盟国が多角的貿易体制の機能に及ぼす影響力(当該加盟国の貿易が最近の代表的な期間において世界貿易に占める割合を用いて定められる。)は、検討の頻度を決定するに当たって重要な要素となる。最大の影響力を有する四の加盟国(欧州共同体は、一の加盟国として取り扱う。)は、二年ごとに検討の対象となる。次の十六の加盟国は、四年ごとに検討の対象となる。その他の加盟国は、後発開発途上加盟国について一層長い期間が定められる場合を除くほか、六年ごとに検討の対象となる。二以上の加盟国に係る共通の対外政策を有する貿易主体に関する検討は、貿易に影響を及ぼす政策のすべての要素(個々の加盟国の関連する政策又は慣行を含む。)を対象とする。加盟国の貿易政策又は貿易慣行の変更であって、貿易の相手国に著しい影響を及ぼし得るものが行われた場合には、貿易政策検討機関は、協議の上、当該加盟国に対し同機関による次の検討を繰り上げることについて要請することができる。
  3. 貿易政策検討機関の会合における討議は、Aに定める目的によって規律される。討議においては、加盟国の貿易政策及び貿易慣行であって、この制度による評価の対象となるものに焦点が当てられる。
  4. 貿易政策検討機関は、検討を行うための基本計画を作成する。同機関は、また、加盟国の最新の報告について討議し及び留意することができる。同機関は、検討の対象となる加盟国(この制度において「対象国」という。)と協議の上、毎年の検討の予定を定める。同機関の議長は、対象国と協議の上、同機関において個人の資格で討議の開始に当たって議論を提起する者を選任することができる。
  5. 貿易政策検討機関は、次の文書に基づいて検討を行う。
    1. 対象国が提出する詳細な報告(Dに定めるもの)
    2. 事務局が自己の責任において作成する報告(入手可能な情報及び対象国によって提供される情報に基づくもの)。事務局は、当該対象国から情報の提供を受けるに当たり、当該対象国に対し、その貿易政策及び貿易慣行について明確な説明を求めるべきである。
  6. 対象国及び事務局の報告は、貿易政策検討機関の会合の議事録と共に、検討の終了後速やかに公表される。
  7. (v)及び(vi)の文書は、閣僚会議に提出されるものとし、同会議は、これらの文書に留意する。

D. 報告

各加盟国は、可能な限り最高度の透明性を確保するため、定期的に貿易政策検討機関に報告を行う。対象国は、詳細な報告において、同機関が決定する形式に従い、自国の貿易政策及び貿易慣行について記述する。この形式は、当初は、千九百八十九年七月十九日の決定によって定められた国別報告の形式の概要(ガット基本文書選集(BISD)追録第三十六巻四百六ページから四百九ページまで)に基づくものとし、同概要は、報告の対象範囲を、多角的貿易協定(世界貿易機関を設立する協定附属書一に含まれているものに限る。)及び複数国間貿易協定(適用がある場合に限る。)の対象となる貿易政策のすべての側面に拡大するため、必要に応じて改正される。同機関は、実際の経験を踏まえ、この形式を改正することができる。加盟国は、検討から検討までの間において、その貿易政策に重要な変更がある場合には、簡潔な報告を提出する。加盟国は、合意された形式に従い、毎年、最新の統計資料を提出する。後発開発途上加盟国がその報告を取りまとめるに当たっての困難については、特別の考慮が払われる。事務局は、要請に基づき、開発途上加盟国特に後発開発途上加盟国が技術的援助を利用することができるようにする。報告に含まれる情報については、最大限可能な限り、多角的貿易協定及び複数国間貿易協定(適用がある場合に限る。)に従って行われる通報との調整が図られるべきである。

E. 千九百九十四年のガット及びサービス貿易一般協定の国際収支に係る規定との関係

加盟国は、千九百九十四年のガット又はサービス貿易一般協定の国際収支に係る規定に従って通常の協議をも行わなければならない政府の負担を最小にする必要性を認識する。このため、貿易政策検討機関の議長は、対象国及び国際収支上の目的のための制限に関する委員会の議長と協議の上、貿易政策に関する検討の通常の周期と国際収支に係る規定に基づく協議の日程との調整を図るものとするが、貿易政策に関する検討を十二箇月を超えて延期しないようにする。

F. 制度についての評価

貿易政策検討機関は、世界貿易機関を設立する協定の効力発生の後五年以内に、この制度の運用についての評価を行う。評価の結果は、閣僚会議に提出される。貿易政策検討機関は、その後、同機関が決定する間隔で又は閣僚会議の要請により、この制度についての評価を行うことができる。

G. 国際貿易環境の進展に関する概況報告

貿易政策検討機関は、多角的貿易体制に影響を及ぼす国際貿易環境の進展に関する年次概況報告を行う。この報告は、事務局長の年次報告(世界貿易機関の主要な活動について記述し、及び多角的貿易体制に影響を及ぼす重要な政策に関する問題に焦点を当てる。)を参考にして行われるべきである。

(署名欄は省略)

(平成六年一二月二八日外務省告示第七四九号で平成七年一月一日に日本国について効力発生)

(編注 平成六年外務省告示第七四九号で公表された「千九百四十七年十月三十日付けの関税及び貿易に関する一般協定」及び「集積回路についての知的所有権に関する条約」の該当する条は、それぞれ次のとおりである。)

千九百四十七年十月三十日付けの「関税及び貿易に関する一般協定」(日本国加入議定書により適用されることとなった協定に、千九百五十七年十月七日及び千九百六十六年六月二十七日にそれぞれ発効した改正(前文、第二部及び第三部の改正並びに第四部の追加)を含む。)


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