世界貿易機関(WTO)

平成28年9月5日

加盟国は、

多角的貿易交渉に考慮を払い、

千九百九十四年のガットの目的を達成することを希望し、

開発途上加盟国の貿易上、開発上及び資金上の特別のニーズに留意し、

自動輸入許可は一定の目的のために有用であること及び自動輸入許可が貿易を制限するために用いられるべきでないことを認め、

千九百九十四年のガットの関連規定によりとられた措置等を実施するために輸入許可を用いることができることを認め、

輸入許可手続に適用される千九百九十四年のガットの規定を認め、

輸入許可手続が千九百九十四年のガットの原則及び義務に反する方法で用いられないことを確保することを希望し、

輸入許可手続の運用が適当でないことが国際貿易の流れを妨げることのあることを認め、

輸入許可手続、特に非自動輸入許可の手続が透明かつ予見可能な方法で運用されるべきであることを確信し、

非自動輸入許可の手続が関連措置を実施するために絶対に必要とされる限度を超えて事務的に負担となるべきでないことを認め、

国際貿易における行政上の手続及び慣行を簡易にし、かつ、透明なものにすること並びにこれらの手続及び慣行の公正かつ衡平な実施及び運用を確保することを希望し、

協議のための機構を定めること及びこの協定の下で生ずる紛争の迅速、効果的かつ衡平な解決について定めることを希望して、

ここに、次のとおり協定する。

第一条 一般規定

  1. この協定の適用上、「輸入許可手続」とは、輸入許可制度を実施するために用いられる行政上の手続であって、輸入加盟国の関税地域への輸入に先立ち関係行政機関に対して申請書その他の書類(通関用のものを除く。)を提出することを要求するもの(注)をいう。

    注: 「許可手続」その他これに類する行政上の手続

  2. 加盟国は、輸入許可制度を実施するための行政上の手続の運用が適当でないことから生ずることのある貿易阻害を防止するため、開発途上加盟国の経済開発上の目的並びに資金上及び貿易上のニーズを念頭に置きつつ、これらの手続がこの協定によって解釈される千九百九十四年のガット(附属書及び議定書を含む。)の関連規定に適合することを確保する(注)。

    注: この協定のいかなる規定も、輸入許可手続により実施される措置の根拠、適用対象又は適用期間がこの協定の下で問題とされることを意味するものと解してはならない。

  3. 輸入許可手続に関する規則は、公平に適用され、かつ、公正かつ衡平な方法で運用されるものとする。
    1. 申請書の提出のための手続に関する規則及び情報(申請をする個人、企業及び団体の資格を含む。)、申請者が赴くべき行政機関並びに輸入許可の対象とされる産品の表は、第四条の規定に基づいて設置される輸入許可に関する委員会(この協定において「委員会」という。)に通報された刊行物において政府(注)及び貿易業者がこれらを知ることができるような方法で公表する。この公表は、実行可能な限り申請書の受理が開始される日の二十一日前に行うものとし、いかなる場合にも当該開始される日以前に行う。輸入許可手続に関する規則及び輸入許可の対象とされる産品の表についての例外、特別の取扱い及び変更の公表についても同様とする。更に、公表のための刊行物は、事務局が利用することができるようにしておく。

      注: この協定の適用上、「政府」には、欧州共同体の権限のある当局を含むものとする。

    2. 書面による意見の提出を希望する加盟国は、要請することにより、その意見について討議する機会を与えられる。関係加盟国は、その意見及び討議の結果に妥当な考慮を払う。
  4. 申請書及び更新のための文書(適用がある場合)の様式は、可能な限り簡単なものでなければならない。輸入許可制度が適正に機能するために真に必要と認められる書類及び情報は、申請の際に要求されることがある。
  5. 申請及び更新(適用がある場合)の手続は、可能な限り簡単なものでなければならない。申請者は、申請のための適当な期間を与えられる。申請の締切日が設けられる場合には、その期間は、二十一日以上とし、かつ、その期間内に十分な数の申請が受理されなかったときは延長し得るものとすべきである。申請者は、一の申請について、一の行政機関にのみ赴けば足りるものとする。申請者が一の申請について二以上の行政機関に赴くことが真に不可欠である場合にも、四以上の行政機関に赴く必要があってはならない。
  6. いかなる申請も、申請書の基本的な記載内容を変更することとはならない軽微な書類上の誤りを理由として却下されることはない。書類上又は手続上の脱漏又は誤りであっても不正な意図又は甚だしい怠慢によるものでないことが明らかなものに対する罰は、単なる警告に相当するものを超えるものであってはならない。
  7. 輸入許可を受けた輸入貨物は、運送中に生ずる差異、ばら積みに伴って生ずる差異その他の通常の商慣行において許容される差異により、その価額、数量又は重量が当該輸入許可に係る価額、数量又は重量とわずかに相違していることを理由として、拒否されることはない。
  8. 輸入許可を受けた輸入貨物の代金の支払に必要な外国為替については、当該輸入許可を受けた者が輸入許可を要しない貨物の輸入者と同様の条件で入手することができるようにしなければならない。
  9. 安全保障のための例外については、千九百九十四年のガット第二十一条の規定を準用する。
  10. この協定は、加盟国に対し、法令の実施を妨げる等公共の利益に反し又は公私の特定の企業の正当な商業上の利益を害することとなるような秘密の情報の開示を要求するものではない。

第二条 自動輸入許可(注)

注: 担保が要求される輸入許可手続であって輸入に対する制限的効果を有しないものについては、この条の規定を適用する。

  1. 「自動輸入許可」とは、申請に対する承認がすべての場合に与えられる輸入許可であって、かつ、2(a)に定める要件を満たすものをいう。
  2. 自動輸入許可の手続については、前条及び1の規定のほか、次の(a)及び(b)の規定(注)を適用する。

    注: 千九百七十九年の輸入許可手続に関する協定の締約国以外の開発途上加盟国であって(a)の(ii)及び(iii)に定める要件を満たすことが困難であるものは、委員会に通告をすることにより、世界貿易機関協定が自国について効力を生ずる日から二年を超えない期間、(a)の(ii)及び(iii)の規定の適用を延期することができる。

    1. 自動輸入許可の手続は、自動輸入許可の対象とされる輸入に対して制限的効果を有することとなるような方法で運用してはならない。自動輸入許可の手続は、特に(i)から(iii)までに定める要件が満たされない場合には、貿易制限的な効果を有するものとみなす。
      1. 自動輸入許可の対象とされる産品に係る輸入業務に従事するために必要な輸入加盟国における法的要件を満たしている個人、企業及び団体が、自動輸入許可の申請及び取得についてひとしく資格を有すること。
      2. 自動輸入許可の申請書を、貨物の通関前のいずれの執務日においても提出することができること。
      3. 自動輸入許可の申請書が、適当な様式により、かつ、完全に記載された上提出された場合には、受理の後行政上可能な限り速やかに、かつ、遅くとも十執務日以内に承認されること。
    2. 加盟国は、他の適当な手続を用いることができない場合においては自動輸入許可の手続が必要となることのあることを認める。自動輸入許可の手続は、その導入を必要とした事情が存続する間、及びその背景にある行政上の目的をより適当な方法によって達成することができない間、維持することができる。

第三条 非自動輸入許可

  1. 非自動輸入許可の手続については、第一条の規定のほか、次の規定を適用する。「非自動輸入許可」とは、前条1に定める自動輸入許可以外の輸入許可をいう。
  2. 非自動輸入許可は、輸入制限を課することによって生ずる貿易制限的又は貿易阻害的な効果に加えて、輸入に対する貿易制限的又は貿易阻害的な効果を有するものであってはならない。非自動輸入許可の手続は、適用対象及び適用期間について、その手続によって実施される措置に見合ったものでなければならず、また、当該措置を実施するために絶対に必要とされる限度を超えて事務的に負担となってはならない。
  3. 輸入許可手続が数量制限の実施以外のことを目的とする場合には、加盟国は、他の加盟国及び貿易業者が輸入許可の付与又は分配の条件を知ることができるように十分な情報を公表する。
  4. 加盟国は、個人、企業又は団体が輸入許可手続に係る例外又は特別の取扱いを要請することを可能とする場合には、その事実を当該要請の方法に関する情報及び、可能な限りにおいて、当該要請が検討されることとなる状況の記述とともに第一条4の規定に従って公表する情報に含める。
    1. 加盟国は、特定の産品の貿易について利害関係を有するいずれかの加盟国の要請があった場合には、次の事項に関するすべての情報を提供する。
      1. 輸入制限の実施
      2. 最近の期間に係る与えられた輸入許可
      3. (ii)の輸入許可の供給国間における分配
      4. 実行可能なときは、輸入許可の対象とされる産品についての輸入統計(価額又は数量による統計)。開発途上加盟国は、このために、追加的な行政上又は資金上の負担を求められない。
    2. 輸入許可によって割当てを実施している加盟国は、第一条4に定める期間内に、かつ、政府及び貿易業者が知ることができるような方法で、割当ての総数量又は総価額、割当ての開始日及び締切日並びにこれらについての変更を公表する。
    3. 輸入制限を実施している加盟国は、割当てを供給国間に配分する場合には、対象となっている産品の供給について利害関係を有する他のすべての加盟国に対し、その時における割当ての各供給国への配分に係る数量又は価額を速やかに通報するものとし、また、この情報を第一条4に定める期間内に、かつ、政府及び貿易業者が知ることができるような方法で公表する。
    4. 割当てを早急に開始する必要が生じた場合には、第一条4に規定する情報は、同条4に定める期間内に、かつ、政府及び貿易業者が知ることができるような方法で公表すべきである。
    5. 輸入加盟国における法的及び行政上の要件を満たしている個人、企業又は団体は、輸入許可の申請及び審査についてひとしく資格を有する。申請者は、輸入許可の申請が承認されなかった場合において、要請したときは、その理由を示されるものとし、また、輸入国の法令又は手続により異議を申し立て又は審査を請求する権利を有する。
    6. 申請の処理に要する期間は、加盟国にとってやむを得ない理由により不可能である場合を除くほか、申請を先着順に処理する場合には三十日以内でなければならず、また、すべての申請を同時に処理する場合には六十日以内でなければならない。後者の場合には、申請の処理に要する期間は、公表された申請期間の最終日の翌日から開始する。
    7. 輸入許可の有効期間は、合理的な期間でなければならず、輸入が行われることを妨げるような短い期間であってはならない。輸入許可の有効期間は、予見できない一時的な要求を満たすために輸入が必要とされる特別の場合を除くほか、遠隔地からの輸入が行われることを妨げるものであってはならない。
    8. 加盟国は、割当てを実施する場合には、与えられた輸入許可により輸入が行われることを妨げてはならず、また、割当ての完全な消化を阻害してはならない。
    9. 加盟国は、輸入許可を与える場合には、経済的に有意の量の産品について輸入許可を与えることが望ましいことを考慮に入れる。
    10. 加盟国は、輸入許可の分配に当たり、申請者の輸入実績を考慮すべきである。このことに関連し、過去に申請者に与えられた輸入許可が最近の代表的な期間において完全に消化されているかいないかを考慮すべきである。加盟国は、輸入許可が完全に消化されていない場合には、その理由を検討し、新規の輸入許可の分配に当たり、その理由を考慮に入れる。経済的に有意の量の産品について輸入許可を与えることが望ましいことを念頭に置きつつ、輸入許可の適当な分配を新規の輸入者に対して確保することについても考慮を払う。このことに関連し、開発途上加盟国、特に、後発開発途上加盟国の原産に係る産品を輸入する者に対しては、特別の考慮を払うべきである。
    11. 輸入許可によって実施される割当てが供給国間に配分されない場合には、輸入許可を受けた者(注)は、輸入する産品の供給国を選択することができるものとする。割当てが供給国間に配分される場合には、輸入許可は、供給国を指定して与える。

      注: 「割当てを受けた者」という場合もある。

    12. 第一条8の規定の適用において、輸入の量又は価額が輸入許可に係る量又は価額を超えた場合には、将来の輸入許可の分配においてその超えた分に見合った調整を行うことができる。

第四条 機関

各加盟国の代表で構成する輸入許可に関する委員会をこの協定により設置する。委員会は、議長及び副議長を選出するものとし、また、この協定の実施又はこの協定の目的の達成に関する事項について協議する機会を加盟国に与えるため、必要に応じて会合する。

第五条 通報

  1. 加盟国は、輸入許可手続を新設し又は変更する場合には、その公表の後六十日以内に委員会に通報する。
  2. 輸入許可手続の新設の通報には、次の情報を含める。
    1. 輸入許可手続の対象とされる産品の表
    2. 資格に関する情報を得るための窓口
    3. 申請書の提出先である行政機関
    4. 輸入許可手続を公表する刊行物の日付及び名称
    5. 輸入許可手続が第二条に定める自動輸入許可又は第三条に定める非自動輸入許可のいずれに係るものであるか
    6. 自動輸入許可の手続の場合には、その行政上の目的
    7. 非自動輸入許可の手続の場合には、その手続により実施される措置
    8. ある程度の確度をもって推定することができる場合には、輸入許可手続の予想される適用期間。推定することができない場合には、当該適用期間についての情報が提供されない理由
  3. 輸入許可手続の変更の通報には、2に掲げる事項のうち変更の生ずるものを示す。
  4. 加盟国は、委員会に対し、第一条4の規定により要求される情報が公表されることとなる刊行物を通報する。
  5. 利害関係を有するいずれの加盟国も、他の加盟国が輸入許可手続の新設又は変更を1から3までの規定に従って通報していないと認める場合には、当該他の加盟国の注意を喚起することができる。その後速やかに通報が行われなかった場合には、当該利害関係を有する加盟国は、当該輸入許可手続の新設又は変更(すべての利用可能な関連情報を含む。)を通報することができる。

第六条 協議及び紛争解決

この協定の実施に影響を及ぼす問題に関する協議及び紛争解決については、紛争解決了解によって詳細に定められて適用される千九百九十四年のガット第二十二条及び第二十三条の例によるものとする。

第七条 検討

  1. 委員会は、この協定の目的、権利及び義務を考慮に入れて、必要に応じ、少なくとも二年に一回、この協定の実施及び運用について検討する。
  2. 事務局は、委員会の検討の基礎とするため、第五条の規定により提供される情報、輸入許可手続に関する年次質問書(注)への回答その他委員会が利用可能な信頼し得る関連情報に基づき事実関係についての報告書を作成する。この報告書には、これらの情報(特に検討の対象となった期間中における変更又は進展を示すもの)その他委員会が合意する情報の概要を含める。
  3. 注: 当初は千九百七十一年三月二十三日付けの千九百四十七年のガット文書(文書番号L―三五一五)として配布されたもの

  4. 加盟国は、輸入許可手続に関する年次質問書に速やかにかつ十分に回答することを約束する。
  5. 委員会は、検討の対象となった期間における進展について物品の貿易に関する理事会に通報する。

第八条 最終規定

留保

  1. この協定のいかなる規定についても、他のすべての加盟国の同意なしには、留保を付することができない。

国内法令

    1. 各加盟国は、世界貿易機関協定が自国について効力を生ずる日以前に、自国の法令及び行政上の手続をこの協定に適合したものとすることを確保する。
    2. 各加盟国は、この協定に関連を有する自国の法令の変更及びその運用における変更につき、委員会に通報する。

世界貿易機関(WTO)へ戻る