世界貿易機関(WTO)

(アンチダンピング協定)

平成28年9月5日

加盟国は、ここに、次のとおり協定する。

第一部

第一条 原則

ダンピング防止措置は、千九百九十四年のガット第六条に定める条件の下において、かつ、この協定に従って開始し(注)、実施する調査に基づいてのみとることができる。次の諸規定は、ダンピング防止に関する法令に基づいて措置がとられる場合に限り、同条の規定の適用を規律する。

注: 以下「開始する」又は「開始」とは、加盟国が第五条の規定に従って正式に調査を始めるための手続上の措置をとることをいう。

第二条 ダンピングの決定

  1. この協定の適用上、ある国から他の国へ輸出される産品の輸出価格が輸出国における消費に向けられる同種の産品の通常の商取引における比較可能な価格よりも低い場合には、当該輸出される産品は、ダンピングされるもの、すなわち、正常の価額よりも低い価額で他の国に導入されるものとみなす。
  2. 輸出国の国内市場の通常の商取引において同種の産品の販売が行われていない場合又は市場が特殊な状況にあるため若しくは輸出国の国内市場における販売量が少ないために(注)そのような販売によっては適正な比較を行うことができない場合には、ダンピングの価格差については、適当な第三国に輸出される同種の産品の比較可能な価格(代表的な価格である場合に限る。)との比較により、又は原産国における生産費に管理費、販売経費、一般的な経費及び利潤としての妥当な額を加えたものとの比較により決定する。

    注: 輸出国の国内市場において消費に向けられる同種の産品の販売が対象となる産品の輸入加盟国への販売の五パーセント以上である場合には、そのような販売は、通常、正常の価額の決定に十分な量であるとみなす。もっとも、輸出国の国内市場における当該販売の割合が五パーセント未満であっても、その国内販売が適当な比較を行うために十分な量であることが証拠によって明らかにされる場合には、そのような低い割合を受け入れるべきである。

    1. 単位当たりの生産費(固定費及び変動費)に管理費、販売経費及び一般的な経費を加えたものを下回る価格による同種の産品の輸出国の国内市場における販売又は第三国への販売については、その販売が長い期間(注1)にわたり相当な量(注2)で、かつ、合理的な期間内にすべての費用を回収することができない価格で行われていると当局(注3)が決定する場合にのみ、価格を理由として当該販売を通常の商取引には当たらないものとみなし、正常の価額の決定において無視することができる。販売の際の単位当たりの費用を下回る価格であっても、当該価格が調査の対象となった期間における単位当たりの費用の加重平均を上回る場合には、当該価格は、合理的な期間内に費用を回収することができるものであるとみなす。

      注1: 長い期間は、通常一年とすべきである。ただし、いかなる場合にも、六箇月未満であってはならない。

      注2: 正常の価額を決定するために検討の対象となる取引における販売価格の加重平均が単位当たりの費用の加重平均を下回ること又は単位当たりの費用を下回る価格による販売の量が正常の価額を決定するために検討の対象となる取引の二十パーセント以上であることを当局が認める場合には、単位当たりの費用を下回る価格による販売は、相当な量で行われたものとする。

      注3: この協定において「当局」とは、適当な上級の当局をいうものと解する。

      1. 2.2の規定の適用上、費用については、通常、調査の対象となる輸出者又は生産者が保有している記録に基づいて算定する。ただし、その記録が、輸出国において一般的に認められている会計原則に従ったものであり、かつ、検討の対象となる産品の生産及び販売に係る費用を妥当に反映していることを条件とする。当局は、費用の適正な配分に関して入手することができるすべての証拠を考慮する。この証拠には、調査の過程において輸出者又は生産者によって提出されたものを含む。ただし、費用の配分が、特に、無形固定資産及び有形固定資産についての適当な減価償却期間の設定並びに資本的支出その他開発費についての引当金の積立てに関し、輸出者又は生産者によって伝統的に行われてきたものであることを条件とする。立ち上がり段階の操業(注)が調査の対象となった期間中の費用に与える影響又は将来若しくは現在の生産に資する経常外費用が、この2.2.1.1に規定する費用の配分において反映されていない場合には、費用は、それらに応じて適切に調整される。

        注: 立ち上がり段階の操業のために行われる調整については、立ち上がり期間の終了時における費用又は、その期間が調査の対象となった期間を超える場合には、調査期間中に当局が合理的に考慮することができる最新の費用を反映させる。

    2. 2.2の規定の適用上、管理費、販売経費、一般的な経費及び利潤の額については、調査の対象となる輸出者又は生産者による同種の産品の通常の商取引における生産及び販売に関する実際の情報を基礎とする。その情報を基礎としてこれらの額を決定することができない場合には、当該額については、次のものを基礎として決定することができる。
      1. 当該輸出者又は生産者が原産国の国内市場において同一の一般的な部類に属する産品の生産及び販売に関して負担し及び得た実際の額
      2. 調査の対象となる他の輸出者又は生産者が原産国の国内市場において同種の産品の生産及び販売に関して負担し及び得た実際の額の加重平均
      3. その他合理的な方法。ただし、これにより設定される利潤の額が、他の輸出者又は生産者が原産国の国内市場において同一の一般的な部類に属する産品の販売に関して通常得る利潤の額を超えないことを条件とする。
  3. 輸出価格がない場合又は関係当局が輸出者と輸入者若しくは第三者との間の連合若しくは補償取決めのために輸出価格を基準とすることができないと認める場合において、輸出価格については、輸入された産品が独立した買手に販売されるときは独立した買手に最初に販売される価格に基づいて又は、当該産品が独立した買手に販売されないとき若しくは輸入された時の状態で販売されないときは当局が決定する合理的な基礎に基づいて、決定することができる。
  4. 輸出価格と正常の価額との比較は、公正に行われるものとする。この比較は、商取引の同一の段階(通常の場合には、工場渡しの段階)において、かつ、できる限り同一の時点で行われた販売について行われる。価格の比較に影響を及ぼす差異(販売条件、課税、商取引の段階、量、物理的な特性における差異その他価格の比較に影響を及ぼしていると立証されたあらゆる差異を含む(注)。)に対しては、それぞれの場合に応じて妥当な考慮を払う。2.3に規定する場合には、輸入から販売までの間に生じた費用(関税及び内国税を含む。)及び利潤に対しても考慮を払うべきである。この場合において、価格の比較に影響が及ぼされるときは、当局は、構成された輸出価格の商取引の段階に相当する商取引の段階で正常の価額を定め、又はこの2.4の規定によって正当とされる妥当な考慮を払う。当局は、関係当事者に対して、公正な比較を確保するためにいかなる情報が必要であるかを示すものとし、また、不合理な立証責任を課してはならない。

    注: これらの要因は、一部重複することがあることを了解する。当局は、この2.4の規定に基づいて既に行った調整を重複して行わないことを確保する。

    1. 2.4の規定に基づく比較が通貨の換算を必要とする場合には、その換算は、販売の日(注)における為替相場を用いて行われるべきである。ただし、先物市場における外国通貨の取引が輸出のための販売と直接に結び付いている場合には、先物取引における為替相場を用いることを条件とする。為替相場の変動は、無視されるものとし、また、当局は、調査に当たって、調査の対象となった期間中の為替相場の持続的な動向を反映させるよう輸出価格を調整するため、輸出者に対し少なくとも六十日の期間を認める。

      注: 販売の日は、通常、契約、注文、注文の確認又は送り状の日付のうち、実質的な販売条件が定められる日をいう。

    2. 公正な比較について規律する2.4の規定に従うことを条件として、調査の段階において、ダンピングの価格差の存在については、通常、加重平均によって定められた正常の価額と比較可能なすべての輸出取引の価格の加重平均との比較を基礎として、又は個々の取引における正常の価額と輸出価格との比較によって認定する。輸出価格の態様が、購入者、地域又は時期によって著しく異なっていると当局が認め、かつ、加重平均と加重平均又は個々の取引と取引とを比較することによってはこのような輸出価格の相違を適切に考慮することができないことについて説明が行われる場合には、加重平均に基づいて定められた正常の価額を個々の輸出取引の価格と比較することができる。
  5. 産品が原産国から直接に輸入されず、中間国から加盟国に輸入される場合には、当該産品が輸出国から輸入加盟国へ販売される価格については、通常、輸出国における比較可能な価格と比較する。もっとも、例えば、当該産品が輸出国において単に積み替えられる場合、当該産品が輸出国において生産されていない場合又は輸出国に当該産品についての比較可能な価格がない場合には、原産国における価格と比較することができる。
  6. この協定において「同種の産品」とは、同一の産品、すなわち、検討の対象となる産品とすべての点で同じである産品又は、そのような産品がない場合には、すべての点で同じではないが当該産品と極めて類似した性質を有する他の産品をいうものと解する。
  7. この条の規定は、千九百九十四年のガット附属書1(注釈及び補足規定)の「第六条について」の「1について」の2の規定の適用を妨げるものではない。

第三条 損害(注)の決定

注: この協定において「損害」とは、別段の定めがない限り、国内産業に対する実質的な損害若しくは実質的な損害のおそれ又は国内産業の確立の実質的な遅延をいい、この条の規定により解釈する。

  1. 千九百九十四年のガット第六条の規定の適用上、損害の決定は、実証的な証拠に基づいて行うものとし、(a)ダンピング輸入の量及びダンピング輸入が国内市場における同種の産品の価格に及ぼす影響並びに(b)ダンピング輸入が同種の産品の国内生産者に結果として及ぼす影響の双方についての客観的な検討に基づいて行う。
  2. 調査当局は、ダンピング輸入の量については、ダンピング輸入が絶対量において又は輸入加盟国における生産若しくは消費と比較して相対的に著しく増加したかしなかったかを考慮する。調査当局は、ダンピング輸入が価格に及ぼす影響については、ダンピング輸入の価格が輸入加盟国の同種の産品の価格を著しく下回るものであるかないか又は、ダンピング輸入の及ぼす影響により、価格が著しく押し下げられているかいないか若しくはダンピング輸入がなかったとしたならば生じたであろう価格の上昇が著しく妨げられているかいないかを考慮する。これらの要因のうち一又は数個の要因のみでは、必ずしも決定的な判断の基準とはならない。
  3. 二以上の国からのある産品の輸入が同時にダンピング防止のための調査の対象である場合において、調査当局は、(a)各国からの輸入について定められるダンピングの価格差が5.8に規定するきん少であるものよりも大きく、かつ、各国からの輸入の量が無視することができるものではなく、また、(b)輸入産品の間の競争の状態及び輸入産品と国内の同種の産品との間の競争の状態に照らして輸入の及ぼす影響を累積的に評価することが適当であると決定したときにのみ、このような輸入の及ぼす影響を累積的に評価することができる。
  4. ダンピング輸入の関係国内産業に及ぼす影響についての検討は、当該国内産業の状態に関係を有するすべての経済的な要因及び指標(販売、利潤、生産高、市場占拠率、生産性、投資収益若しくは操業度における現実の及び潜在的な低下、資金流出入、在庫、雇用、賃金、成長、資本調達能力若しくは投資に及ぼす現実の及び潜在的な悪影響、国内価格に影響を及ぼす要因又はダンピングの価格差の大きさを含む。)についての評価を含む。これらの要因及び指標は、すべてを網羅するものではなく、また、これらの要因のうち一又は数個の要因のみでは、必ずしも決定的な判断の基準とはならない。
  5. ダンピング輸入が3.2及び3.4に規定するダンピングの及ぼす影響によりこの協定に定義する損害を与えていることが立証されなければならない。ダンピング輸入と国内産業に対する損害との因果関係は、当局が入手したすべての関連する証拠の検討に基づいて明らかにする。当局は、ダンピング輸入以外の要因であって、国内産業に対して同時に損害を与えていることが知られているいかなる要因も検討するものとし、また、これらの他の要因による損害の責めをダンピング輸入に帰してはならない。この点について関連を有することがある要因には、特に、ダンピング価格によることなく販売されている輸入の量及び価格、需要の減少又は消費態様の変化、外国の生産者及び国内生産者の制限的な商慣行並びに外国の生産者と国内生産者との間の競争、技術の進歩並びに国内産業の輸出実績及び生産性を含む。
  6. ダンピング輸入の及ぼす影響については、入手することができる資料により、生産工程、生産者の販売、利潤等に基づいて同種の産品の国内生産を他の産品の国内生産と区別することができる場合には、当該同種の産品の国内生産との関連において評価する。そのような区別を行うことができない場合には、ダンピング輸入の及ぼす影響については、必要な情報を入手することができる最小範囲の産品(同種の産品を含む。)の生産について検討することによって評価する。
  7. 実質的な損害のおそれの決定は、事実に基づくものでなければならず、単に申立て、推測又は可能性の希薄なものに基づくものであってはならない。ダンピングが損害を与えるような事態を生ずるに至る状況の変化は、明らかに予見され、かつ、差し迫ったものでなければならない(注)。当局は、実質的な損害のおそれの存在に関する決定を行うに当たっては、特に、次の要因を考慮すべきである。

    注: 近い将来においてダンピング価格による産品の輸入が相当に増加すると信ずるに足りる確かな理由のあることが一例であるが、これに限らない。

    1. 国内市場へのダンピング輸入の著しい率による増加であって、輸入が相当に増加する可能性を示すもの
    2. 輸出者の能力の十分な余力又は輸出者の能力の差し迫ったかつ相当な増加であって、輸入加盟国の市場へのダンピング輸出が相当に増加する可能性を示すもの。この点について、追加的な輸出を吸収することができる他の輸出市場の存在に考慮を払う。
    3. 国内価格を著しく押し下げ又は国内価格の上昇を著しく妨げる影響を有する価格であって、追加的な輸入に対する需要を増加させる可能性がある価格で輸入が行われているかいないか。
    4. 調査の対象となる産品の在庫
    これらの要因のうち一の要因のみでは、必ずしも決定的な判断の基準とはならず、考慮された要因が、全体として、追加的なダンピング輸出が差し迫っており、かつ、保護的な措置がとられない限り実質的な損害が生ずるという結論を導くものでなければならない。
  8. ダンピング輸入が損害を与えるおそれがある事案に関しては、ダンピング防止措置の適用は、特別の注意をもって検討し及び決定する。

第四条 国内産業の定義

  1. この協定の適用上、「国内産業」とは、同種の産品の国内生産者の全体又はこれらの国内生産者のうち当該産品の生産高の合計が当該産品の国内総生産高の相当な部分を占めている生産者をいうものと解する。 もっとも、
    1. 生産者がダンピングされていると申し立てられた産品の輸出者若しくは輸入者と関係を有する(注)場合又は生産者自身がダンピングされていると申し立てられた産品の輸入者である場合には、「国内産業」には、これらの生産者を含まないと解することができる。

      注: この4.1の規定の適用上、生産者は、輸出者又は輸入者との間において、(a)両者のいずれか一方の者が他方の者を直接若しくは間接に支配している場合、(b)両者が同一の第三者によって直接若しくは間接に支配されている場合又は(c)両者が共同して同一の第三者を直接若しくは間接に支配している場合にのみ、関係を有するものとみなす。この場合において、生産者が輸出者又は輸入者と関係を有するものであるとみなすためには、その関係による影響が、当該生産者に対して、関係を有しない生産者の行動とは異なる行動をとらせるようなものであることを信じ又は疑うに足りる理由があることを条件とする。この4.1の規定の適用上、一方の者が法律上又は事実上他方の者を拘束し又は指図する地位にある場合には、当該一方の者は、当該他方の者を支配しているものとみなされる。

    2. 例外的な状況においては、一の加盟国の領域を関係産品の生産について二以上の競争的市場に分割し、各市場内の生産者を別個の国内産業とみなすことができる。もっとも、(a)各市場内の生産者が生産した当該産品の全部又はほぼ全部をそれぞれの市場で販売しており、かつ、(b)その領域の当該市場以外の場所にある生産者が当該市場に当該産品を実質的に供給していないことを条件とする。このような例外的な状況においては、国内産業全体の相当な部分に損害が生じていないときでも、このような分割された市場にダンピング輸入が集中しており、かつ、当該ダンピング輸入がその市場内の当該生産の全部又はほぼ全部を生産する生産者に損害を与えていることを条件として損害の存在を認定することができる。
  2. 国内産業が特定の地域、すなわち、4.1(ii)に規定する市場における生産者をいうものと解される場合には、ダンピング防止税は、最終的な消費のためにその地域に仕向けられる産品についてのみ課する(注)。輸入加盟国の憲法がこのような方法によってダンピング防止税を課することを認めていない場合には、輸入加盟国は、地域についての限定を付することなくダンピング防止税を課することができる。ただし、(a)第八条の規定により、ダンピング価格による当該地域に対する輸出を停止する機会及びその他の保証を与える機会を輸出者に提供したにもかかわらず、この点に関し適当な保証が速やかに得られず、かつ、(b)ダンピング防止税を当該地域に供給を行う特定の生産者の産品に対してのみ課することができない場合に限る。

    注: この協定において「課する」とは、関税又は内国税の確定的又は最終的な賦課又は徴収を法令により行うことをいう。

  3. 二以上の国が千九百九十四年のガット第二十四条8(a)に規定する単一の統一された市場としての性格を有する統合の水準に達した場合には、統合された地域全体における産業は、4.1に規定する国内産業とみなされる。
  4. 3.6の規定は、この条について準用する。

第五条 調査の開始及び実施

  1. 5.6に規定する場合を除くほか、申し立てられたダンピングの存在、程度及び影響を決定するための調査は、国内産業によって又は国内産業のために行われる書面による申請に基づいて開始する。
  2. 5.1の申請には、(a)ダンピング、(b)この協定により解釈される千九百九十四年のガット第六条に規定する損害及び(c)ダンピング輸入と申し立てられた損害との間の因果関係についての証拠を含める。関連する証拠によって裏付けられない単なる主張は、この5.2に定める要件を満たすために十分なものであるとみなすことができない。この申請には、申請者が合理的に入手することができる次の事項に関する情報を含むものとする。
    1. 申請者の身元関係事項並びに当該申請者による同種の産品の国内生産の量及び価額に関する記述。書面による申請が国内産業のために行われる場合には、当該申請は、同種の産品の知られているすべての国内生産者(又は同種の産品の国内生産者の団体)の名簿を記載すること並びに可能な限り当該国内生産者による同種の産品の国内生産の量及び価額を記述することによって、申請がいずれの産業のために行われているかを明らかにする。
    2. ダンピングされていると申し立てられた産品に関する完全な記述、関係原産国又は関係輸出国の国名、知られている輸出者又は外国の生産者のそれぞれの身元関係事項及び当該産品を輸入していることが知られている者の名簿
    3. 産品が原産国若しくは輸出国の国内市場において消費に向けて販売される価格に関する情報(又は、適当な場合には、産品が原産国若しくは輸出国から第三国に販売される価格若しくは産品の構成価額に関する情報)及び輸出価格又は、適当な場合には、産品が輸入加盟国の領域内の独立した買手に最初に販売される価格に関する情報
    4. ダンピングされていると申し立てられた輸入の量の推移、これらの輸入が国内市場における同種の産品の価格に及ぼす影響及びこれらの輸入が国内産業に結果として及ぼす影響(国内産業の状態に関係を有する要因及び指標、例えば、3.2及び3.4に規定するものによって示されるもの)に関する情報
  3. 当局は、調査の開始を正当とするための十分な証拠があるかないかを決定するため、申請の際に提供された証拠の正確さ及び妥当性について検討する。
  4. 5.1の調査については、同種の産品の国内生産者が申請について表明した(注1)支持又は反対の程度の検討に基づき、当局が、当該申請が国内産業によって又は国内産業のために行われている(注2)と決定しない限り、開始してはならない。申請は、当該申請について支持を表明している国内生産者の生産高の合計が、当該申請について支持又は反対のいずれかを表明している国内産業の一部が生産する同種の産品の総生産の五十パーセントを超える場合には、「国内産業によって又は国内産業のために」行われたものとみなす。ただし、申請を明示的に支持している国内生産者による生産が国内産業によって生産される同種の産品の総生産の二十五パーセント未満である場合には、調査を開始してはならない。

    注1: 非常に多数の生産者から成る産業であって、その生産者が加盟国の領域内に広く分布するものについては、当局は、統計上有効な標本抽出の方法を用いて支持及び反対を決定することができる。

    注2: 加盟国は、特定の加盟国の領域内においては、同種の産品の国内生産者の被用者又はこれらの代表が5.1の調査のための申請を行い又は支持することができることを認識する。

  5. 当局は、調査を開始する旨の決定が行われない限り、調査の開始を求める申請書を公表しないようにする。もっとも、当局は、適切に作成された申請書を受領した後、調査を開始する前に、関係輸出加盟国の政府に通知する。
  6. 関係当局は、特別な状況において国内産業によって又は国内産業のために行われる調査の開始を求める書面による申請を受領しないで調査を開始することを決定する場合には、調査の開始を正当とする十分な証拠(5.2に規定するダンピング、損害及び因果関係についてのもの)があるときにのみ手続を進める。
  7. ダンピング及び損害の双方についての証拠は、(a)調査を開始するかしないかを決定するに当たり同時に考慮するものとし、(b)その後の調査の過程においても、遅くともこの協定に従って暫定措置がとられる日から、同時に考慮する。
  8. 関係当局は、ダンピング又は損害のいずれか一方についての証拠が事案に関する手続の進行を正当とするために十分でないと認める場合には、速やかに5.1の申請を却下するものとし、また、速やかに調査を取りやめる。関係当局は、ダンピングの価格差がきん少であるものと決定し、又は現実の若しくは潜在的なダンピング輸入の量若しくは損害が無視することのできるものであると決定する場合には、直ちに手続を取りやめる。ダンピングの価格差は、輸出価格に対する百分率によって表示した場合において、二パーセント未満であるときは、きん少であるものとみなす。特定の国からのダンピング輸入の量が輸入加盟国における同種の産品の輸入の量の三パーセント未満であると認められる場合には、当該ダンピング輸入の量は、通常、無視することのできるものとみなす。ただし、ダンピング輸入の量が単独では輸入加盟国における同種の産品の輸入の量の三パーセント未満である国からの輸入の量を合計した場合において、当該輸入の量の合計が輸入加盟国における同種の産品の輸入の量の七パーセントを超えるときは、この限りでない。
  9. ダンピング防止のための手続は、通関手続を妨げるものであってはならない。
  10. 調査については、特別の場合を除くほか、その開始の後一年以内に完結させなければならず、かつ、いかなる場合においても、その開始の後十八箇月を超えてはならない。

第六条 証拠

  1. ダンピング防止のための調査に利害関係を有するすべての者は、当局が必要とする情報について通知されるものとし、また、当該調査について関連を有すると考えるあらゆる証拠を書面により提出する機会を十分に与えられる。
    1. ダンピング防止のための調査に使用される質問書を受領する輸出者又は外国の生産者は、回答のために少なくとも三十日の期間を与えられる(注)。この三十日の期間の延長に関する要請に対しては、妥当な考慮が払われるべきであり、理由が示される場合には、そのような延長は、実行可能なときはいつでも認められるべきである。

      注: 輸出者に与えられる期間は、原則として、質問書の受領の日から起算するものとし、このため、質問書は、回答者又は輸出加盟国の適当な外交上の代表者若しくは、世界貿易機関の加盟国である独立の関税地域については、輸出を行う当該関税地域の公式の代表者に送付された日から一週間で受領されたものとみなす。

    2. 秘密の情報の保護に関する要件に従うことを条件として、利害関係を有する一の者が書面によって提出した証拠については、調査に参加している利害関係を有する他の者が速やかに入手することができるようにする。
    3. 当局は、調査が開始された場合には、5.1に規定する申請書の全文を知られている輸出者(注)及び輸出加盟国の当局に速やかに提供するものとし、また、要請があったときは、利害関係を有する他の者が当該申請書の全文を入手することができるようにする。6.5に規定する秘密の情報の保護に関する要件に対して、妥当な考慮を払う。

      注: 関係する輸出者の数が特に多い場合には、申請書の全文は、輸出者に代えて輸出加盟国の当局又は関係する貿易業者の団体にのみ提供されるべきであると了解する。

  2. ダンピング防止のための調査において、利害関係を有するすべての者は、自己の利益の擁護のための機会を十分に与えられる。このため、当局は、要請があったときは、利害関係を有するすべての者に対し相反する利害を有する者と会合する機会を与えることにより、対立する見解の表明及び反論の提示が行われ得るようにする。その機会を与えるに際しては、秘密保持の必要性及び利害関係を有する者の便宜を考慮しなければならない。利害関係を有するいずれの者も、会合に出席する義務を負わないものとし、また、会合に出席しないことは、その者の立場を害するものではない。利害関係を有する者は、また、正当な理由がある場合には、書面によって提供した情報以外の情報を口頭で提供する権利を有する。
  3. 6.2の規定に基づき口頭で提供された情報は、その後、書面に作成され、6.1.2に規定するところにより利害関係を有する他の者が入手することができるようにされた場合においてのみ、当局によって考慮される。
  4. 当局は、実行可能なときはいつでも、利害関係を有するすべての者に対し、それぞれの立場の主張に関係があるすべての情報であって、6.5に規定する秘密のものではなく、かつ、ダンピング防止のための調査において当該当局が使用するものを閲覧する機会及びこれらの情報に基づいてそれぞれの主張について準備する機会を適時に与える。
  5. いかなる情報も、その性質上(例えば、その開示が競争者に対して競争上の著しい利益を与えること又はその開示が情報を提供した者に対して若しくは情報を提供した者の当該情報についての情報源である者に対して著しい悪影響を及ぼすことを理由として)秘密であるもの又は調査の当事者が秘密の情報として提供したものは、正当な理由が示される場合には、当局により秘密として取り扱われる。当該情報は、当該当事者の明示的な同意を得ないで開示してはならない(注)。

    注 加盟国は、特定の加盟国の領域において厳格な保護命令に定める条件による開示が必要となることのあることを認める。

    1. 当局は、秘密の情報を提供した利害関係を有する者に対し当該情報の秘密でない要約を提出するよう要請する。この要約は、秘密の情報として提供されたものの実質を合理的に理解することができるように十分詳細なものとする。例外的な場合には、当該利害関係を有する者は、当該情報を要約することが不可能であることを示すことができる。このような例外的な場合には、要約することが不可能であることの理由を提出しなければならない。
    2. 当局は、秘密扱いの要請に正当な理由がないと認める場合において、情報の提供者が当該情報の公表を望まず又は一般的な表現若しくは要約された形によるその開示を認めないときは、その情報の正確であることが適当な者から当局に対して十分に立証されない限り、その情報を無視することができる。(注)

    注: 加盟国は、秘密扱いの要請を意的に拒否すべきでないことを合意する。

  6. 当局は、6.8に規定する場合を除くほか、利害関係を有する者が提供した情報であって、自己が行う認定の根拠とするものの正確さについて、調査の過程において十分に確認する。
  7. 当局は、提供された情報を確認し又は更に詳細な情報を入手するため、必要に応じ、他の加盟国の領域において調査を行うことができる。ただし、当局が関係企業の同意を得ること及び当該他の加盟国の政府の代表者に当局がその旨を通知し、かつ、当該他の加盟国が調査に反対しないことを条件とする。他の加盟国の領域において行う調査については、附属書1に定める手続を適用する。秘密の情報の保護に関する要件に従うことを条件として、当局は、当該調査の結果に関係する企業がその結果を入手することができるようにするか又は6.9の規定に従ってこれらの企業にその結果を通知するものとし、また、申請者がその結果を入手し得るようにすることができる。
  8. 利害関係を有する者が妥当な期間内に必要な情報の入手を許さず若しくはこれを提供しない場合又は調査を著しく妨げる場合には、知ることができた事実に基づいて仮の又は最終的な決定(肯定的であるか否定的であるかを問わない。)を行うことができる。この6.8の規定の適用に当たっては、附属書2の規定を遵守する。
  9. 当局は、最終的な決定を行う前に、検討の対象となっている重要な事実であって、確定的な措置をとるかとらないかを決定するための基礎とするものを利害関係を有するすべての者に通知する。その通知は、これらの者が自己の利益を擁護するための十分な時間的余裕をもって行われるべきである。
  10. 当局は、原則として、個々の知られている輸出者又は関係する生産者について、調査の対象となる産品のダンピングの価格差を個別に決定する。関係する輸出者、生産者、輸入者又は産品の種類がその決定を行うことが実行可能でないほど多い場合には、当局は、その検討の対象を合理的な数の利害関係を有する者若しくは産品に制限し(その制限を行うに当たっては、標本抽出の際に当局が利用することができる情報に基づいて統計上有効な標本を使用する。)、又は関係国からの輸出の量のうち合理的に調査することができる範囲で最大の量に制限することができる。
    1. この6.10の規定に基づいて輸出者、生産者、輸入者又は産品の種類の標本抽出を行う場合には、関係する輸出者、生産者又は輸入者と協議し、かつ、これらの者の同意を得て行うことが望ましい。
    2. 当局は、この6.10の規定に基づいて検討の対象を制限する場合においても、標本として当初抽出されなかった輸出者又は生産者であって、必要な情報を調査の過程において検討のための期限内に提供するものについては、ダンピングの価格差を個別に決定する。ただし、ダンピングの価格差を個別に検討することが、当該当局にとって不当な負担となり、かつ、調査を期間内に完結させることを妨げるほど輸出者又は生産者の数が多い場合は、この限りでない。自発的な対応は、妨げられてはならない。
  11. この協定の適用上、「利害関係を有する者」には、次のものを含む。
    1. 調査の対象となる産品の輸出者、外国の生産者、輸入者又は貿易業者の団体若しくは業界団体であって、その構成員の過半数が当該産品の生産者、輸出者若しくは輸入者であるもの
    2. 輸出加盟国の政府
    3. 輸入加盟国における同種の産品の生産者又は貿易業者の団体若しくは業界団体であって、その構成員の過半数が輸入加盟国の領域において同種の産品を生産しているもの
    (i)から(iii)までの規定は、加盟国がこれらの規定に規定する国内又は外国の関係者以外のものを利害関係を有する者に含めることを妨げるものではない。
  12. 当局は、調査の対象となる産品の産業上の使用者及び、調査の対象となる産品が一般に小売段階で販売されている場合には、代表的な消費者団体に対し、ダンピング、損害及び因果関係に係る調査に関連する情報を提供する機会を与える。
  13. 当局は、利害関係を有する者(特に小規模な会社)が要請された情報を提供する際に直面する困難について妥当な考慮を払うものとし、また、実行可能な援助を行う。
  14. 6.1から6.13までに定める手続は、加盟国の当局が、この協定の関連規定に従い、調査の開始及び仮の若しくは最終的な決定(肯定的であるか否定的であるかを問わない。)についての手続の迅速な進行又は暫定措置若しくは最終的な措置の適用を妨げることを目的とするものではない。

第七条 暫定措置

  1. 暫定措置は、次の(i)から(iii)までに定める条件が満たされた場合においてのみ、とることができる。
    1. 第五条の規定に従って調査が開始され、その旨について公告され、並びに利害関係を有する者が情報を提供し及び意見を表明するための十分な機会が与えられること。
    2. ダンピング及びその結果生ずる国内産業に対する損害について肯定的な仮の決定が行われること。
    3. 損害が調査中に生ずることを防止するために暫定措置が必要であると関係当局が認めること。
  2. 暫定措置は、暫定的な税又は、一層望ましいものとしては、現金の供託による若しくは債券等による保証の形式をとることができるものとし、税又は保証の額は、暫定的に算定されたダンピングの価格差を超えない範囲で暫定的に算定されたダンピング防止税の額に等しいものとする。評価差止めは、通常の関税及び算定されたダンピング防止税の額が示され、かつ、他の暫定措置と同一の条件に従う限り、妥当な暫定措置である。
  3. 暫定措置は、調査の開始の日から六十日が経過するまでは、とってはならない。
  4. 暫定措置の適用は、できる限り短い期間に限るものとし、その期間は、四箇月又は、関係する貿易の著しい割合を占める輸出者からの要請により関係当局が決定する場合であっても、六箇月を超えるものであってはならない。当局が、調査の過程において、ダンピングの価格差に相当する額よりも少ない額のダンピング防止税が損害を除去するために十分であるかないかを検討する場合には、これらの期間については、それぞれ六箇月及び九箇月とすることができる。
  5. 暫定措置の適用に当たっては、第九条の関連規定を準用する。

第八条 価格に関する約束

  1. 当局は、ダンピングの与える損害が除去されると認める価格の修正又は関係地域に対するダンピング価格による輸出の停止についての満足すべき自発的な約束を輸出者がした場合には、暫定措置をとらず又はダンピング防止税を課することなく、手続を停止し又は取りやめることができる(注)。約束に基づく価格の引上げは、ダンピングの価格差を無くすために必要な範囲を超えるものであってはならない。ダンピングの価格差に相当する額よりも少ない額の価格の引上げが国内産業に対する損害を除去するために十分である場合には、当該価格の引上げの額は、その少ない額であることが望ましい。

    注: 「手続を停止し又は取りやめることができる」とは、8.4に規定する場合を除くほか、価格に関する約束の実施と併せて手続を継続することを許すものと解してはならない。

  2. 輸入加盟国の当局は、ダンピング及びダンピングによって生ずる損害について肯定的な仮の決定を行わない限り、輸出者に対し価格に関する約束を求め又は認めてはならない。
  3. 当局が、現実の又は潜在的な輸出者が極めて多数であることその他の理由(一般的な政策上の理由を含む。)により、約束を認めることが実際的でないとする場合には、申出のあった約束を認める必要はない。この場合において、当局は、実行可能なときは、約束を認めることが適当でないとするに至った理由を輸出者に提示するものとし、また、可能な限り、輸出者に対しその点について意見を表明する機会を与える。
  4. 約束を認めた場合であっても、輸出者が希望し又は当局が決定するときは、ダンピング及び損害の調査は、完結させる。この場合において、ダンピング又は損害について否定的な決定が行われたときは、約束は、自動的に消滅する。ただし、その決定が主として価格に関する約束の存在によるものである場合は、この限りでなく、その場合には、当局は、この協定に合致する妥当な期間その約束を維持することを要求することができる。ダンピング及び損害について肯定的な決定が行われた場合には、約束は、その条件及びこの協定に従って存続する。
  5. 輸入加盟国の当局は、価格に関する約束を勧奨することができる。もっとも、いかなる輸出者も約束をすることを強制されない。輸出者が約束を申し出ず又は約束を申し出るようにとの勧奨を受け入れないことは、事案を検討する上でいかなる影響も及ぼすものではない。もっとも、当局は、ダンピング輸入が引き続き行われる場合に損害のおそれが現実のものとなる可能性が大きくなると判断することができる。
  6. 輸入加盟国の当局は、約束が認められた輸出者に対し、約束の履行に関連する情報を定期的に提供すること及び当局が関連資料の確認を行うことを認めることを要求することができる。約束の違反があった場合には、輸入加盟国の当局は、この協定に従って迅速な措置(入手可能な最善の情報を用いて暫定措置を直ちにとることを含む。)をとることができる。この場合には、暫定措置がとられた日前九十日を超えない日以後消費のために輸入された産品につき、この協定に従って確定的な税を課することができる。ただし、約束の違反があった日前に輸入された産品については、及して課してはならない。

第九条 ダンピング防止税の賦課及び徴収

  1. ダンピング防止税を課するためのすべての要件が満たされた場合にこれを課するか課さないかの決定及び課すべきダンピング防止税の額をダンピングの価格差に相当する額とするか又は当該相当する額よりも少ない額とするかの決定は、輸入加盟国の当局によって行われる。ダンピング防止税の賦課は、すべての加盟国の領域において裁量行為であることが望ましく、また、ダンピングの価格差に相当する額よりも少ない額のダンピング防止税の賦課が国内産業に対する損害を除去するために十分である場合には、ダンピング防止税の額は、その少ない額であることが望ましい。
  2. いずれかの産品についてダンピング防止税を課する場合には、ダンピング防止税については、ダンピングされ、かつ、損害を与えていると認定された産品の輸入(すべての輸入源からの輸入。ただし、この協定に定める条件による価格に関する約束が認められた輸入源からの輸入を除く。)につき、それぞれの場合において適正な額を無差別に徴収する。当局は、当該産品の供給者を特定する。もっとも、同一の国の複数の供給者が関係している場合において、これらのすべての供給者を特定することが実行可能でないときは、当局は、当該国を特定することができる。当局は、二以上の国の複数の供給者が関係している場合には、関係しているすべての供給者を特定し又は、これが実行可能でないときは、関係しているすべての国を特定することができる。
  3. ダンピング防止税の額は、第二条の規定に基づいて定められるダンピングの価格差に相当する額を超えるものであってはならない。
    1. ダンピング防止税の額を及して確定する場合には、ダンピング防止税の最終的な支払額についての決定は、ダンピング防止税の額の最終的な確定についての要請が行われた日の後、できる限り速やかに、通常、十二箇月以内に行われるものとし、いかなる場合においても十八箇月を超えて行われてはならない(注)。いかなる還付についても、迅速にかつ通常、この9.3.1の規定に基づいて行われた最終的な支払額の決定の後九十日以内に行う。当局は、九十日以内に還付を行わない場合において、要請があったときはいつでも説明を行う。

      注: 関係する産品が司法上の審査手続の対象となる場合には、この9.3.1及び9.3.2に規定する期限を遵守することができないことがあると了解する。

    2. ダンピング防止税の額を予測して確定する場合には、ダンピングの価格差に相当する額を超えて支払われた税額を要請に応じて迅速に還付するための措置をとる。実際のダンピングの価格差に相当する額を超えて支払われた税額の還付についての決定は、ダンピング防止税の対象となる産品の輸入者が証拠によって正当に裏付けられた還付の要請を行った日の後、通常、十二箇月以内に行われるものとし、いかなる場合においても十八箇月を超えて行われてはならない。認められた還付については、通常、決定の日から九十日以内に行うべきである。
    3. 当局は、2.3の規定に従って輸出価格を決定した場合に還付を行うべきか行うべきでないか及びどの程度行うべきかを決定するに当たっては、正常の価額の変化、輸入から販売までの間の費用の変化及び輸入された産品が独立した買手に最初に販売される価格の変動であってその後の取引における販売価格に正当に反映されるものを考慮すべきであり、かつ、これらの変化及び変動についての明確な証拠が提出される場合には、支払われたダンピング防止税の額を控除することなく輸出価格を計算すべきである。
  4. 当局が6.10の後段の規定に基づいて検討の対象を制限した場合には、当該検討の対象に含まれなかった輸出者又は生産者からの輸入に課するダンピング防止税の額は、次のものを超えてはならない。
    1. 標本抽出された輸出者又は生産者について加重平均によって定められたダンピングの価格差
    2. ダンピング防止税の支払額を予測される正常の価額に基づいて計算する場合には、標本抽出された輸出者又は生産者について加重平均によって定められた正常の価額と個別には検討されなかった輸出者又は生産者の輸出価格との差額
    この9.4の規定の適用上、当局は、零及び僅きん少であるダンピングの価格差並びに6.8に規定する状況の下で定められたダンピングの価格差を考慮しないものとする。当局は、検討の対象に含まれなかった輸出者又は生産者であって、6.10.2の規定により調査の過程において必要な情報を提供したものからの輸入については、個別に税額を決定し、又は個別に正常の価額を適用する。
  5. 産品が輸入加盟国においてダンピング防止税の対象となる場合には、当局は、関係輸出国の輸出者又は生産者であって、調査の対象となった期間中に当該輸入加盟国に当該産品を輸出しなかったものについて、ダンピングの価格差を個別に決定するための検討を速やかに行う。ただし、当該輸出者又は生産者が、当該輸出国の輸出者又は生産者であって当該産品に関してダンピング防止税の対象となるもののいずれとも関係を有していないことを示すことができることを条件とする。この検討については、輸入加盟国における通常の税の確定及び見直しの手続に比べて迅速に開始し及び行う。この検討を行っている間は、そのような輸出者又は生産者からの輸入について、いかなるダンピング防止税も課してはならない。もっとも、当局は、この検討の結果として当該輸出者又は生産者に関してダンピングについて決定する場合に当該検討の開始の日に及してダンピング防止税を課することができることを確保するため、評価差止め又は保証の要求を行うことができる。

第十条

  1. 暫定措置又はダンピング防止税は、それぞれ7.1又は9.1の規定に基づいて行われた決定が効力を生じた後に消費のために輸入される産品についてのみ課する。ただし、この条に規定する例外が適用される場合は、この限りでない。
  2. 損害の最終的な決定(損害のおそれ及び産業の確立の実質的な遅延に係るものを除く。)が行われる場合又は、損害のおそれの最終的な決定の場合であって暫定措置がとられなかったとしたならばダンピング輸入の及ぼした影響により損害の決定が行われたであろうと認められるときは、暫定措置がとられていた期間についてダンピング防止税を及して課することができる。
  3. 確定的なダンピング防止税の額が支払われた若しくは支払われるべき暫定的な税の額又は保証のために算定された額を上回る場合には、その差額は、徴収してはならない。確定的なダンピング防止税の額が支払われた若しくは支払われるべき暫定的な税の額又は保証のために算定された額を下回る場合には、その差額を還付し又はダンピング防止税の額を再算定する。
  4. 10.2の場合を除くほか、損害のおそれ又は産業の確立の実質的な遅延の決定が行われる場合において、損害がまだ生じていないときは、確定的なダンピング防止税は、損害のおそれ又は産業の確立の実質的な遅延の決定が行われた日からのみ課することができる。この場合には、暫定措置の適用期間中に行われた供託に係る現金を迅速に還付し、債券等の担保を迅速に解除する。
  5. 最終的な決定が否定的である場合には、暫定措置の適用期間中に行われた供託に係る現金を迅速に還付し、債券等の担保を迅速に解除する。
  6. 当局は、ダンピングされた産品について、
    1. 損害を与えたダンピングの事実が過去に存在し、又は輸出者がダンピングを行っていること及びそのダンピングが損害を与えることを輸入者が知っていたか若しくは知っていたはずであり、
      かつ、
    2. 比較的短期間における産品の大量のダンピング輸入によって当該損害が生じており、当該ダンピング輸入が、その時期及び量その他の状況(輸入産品の在庫の急速な積み増し等)に照らして、適用されるべき確定的なダンピング防止税の救済効果を著しく損なうおそれがあると決定する場合には、暫定措置がとられた日前九十日を超えない日以後消費のために輸入された産品について確定的なダンピング防止税を課することができる。ただし、関係する輸入者が意見を表明する機会を与えられていることを条件とする。
  7. 当局は、調査の開始の後、10.6に定める条件が満たされていることについて十分な証拠を有している場合には、10.6に定めるところによりダンピング防止税を及して徴収するために必要な評価差止め等の措置をとることができる。
  8. 調査の開始の日前に消費のために輸入された産品については、いかなる税も、10.6の規定により及して課してはならない。

第十一条 ダンピング防止税及び価格に関する約束に係る期間及び見直し

  1. ダンピング防止税は、損害を与えているダンピングに対処するために必要な期間及び限度においてのみ効力を有する。
  2. 当局は、ダンピング防止税の賦課を継続することの必要性につき、正当な理由がある場合には、自己の発意に基づいて又は、確定的なダンピング防止税の賦課の日から合理的な期間が経過しているときは、見直しの必要性を裏付ける実証的な情報を提供する利害関係を有する者の要請に基づいて、見直しを行う(注)。利害関係を有する者は、ダンピング防止税の賦課を継続することがダンピングを相殺するために必要であるかないか若しくはダンピング防止税が撤廃され若しくはその額が変更された場合に損害が存続し若しくは再発する可能性があるかないか又はこれらの双方について検討することを当局に要請する権利を有する。当局は、この11.2の規定に基づく見直しの結果、ダンピング防止税を維持する正当な理由がないと決定する場合には、直ちにダンピング防止税を撤廃する。

    注: 9.3に規定するダンピング防止税の最終的な支払額の決定は、この条に規定する見直しを意味するものではない。

  3. 11.1及び11.2の規定にかかわらず、いかなる確定的なダンピング防止税も、その賦課の日、11.2の規定に基づく最新の見直しの日(ただし、当該見直しがダンピング及び損害の双方を対象としていた場合に限る。)又はこの11.3の規定に基づく最新の見直しの日から五年以内に撤廃する。ただし、当局が、自己の発意に基づいて又はその撤廃の日に先立つ合理的な期間内に国内産業によって若しくは国内産業のために行われた正当に裏付けられた要請に基づいて当該撤廃の日前に開始した見直しにおいて、ダンピング防止税の撤廃がダンピング及び損害の存続又は再発をもたらす可能性があると決定する場合は、この限りでない(注)。ダンピング防止税は、この見直しの結果が出るまでの間、効力を有するものとすることができる。

    注: ダンピング防止税の額を及して確定する場合には、9.3.1に定める最新の確定のための手続においてダンピング防止税を課さないと認定することは、それ自体、当局に対して確定的なダンピング防止税の撤廃を求めるものではない。

  4. 証拠及び手続に関する第六条の規定は、この条の規定に基づいて行われる見直しについて準用する。この見直しは、迅速に行うものとし、通常、この見直しの開始の日から十二箇月以内に完結させる。
  5. この条の規定は、第八条の規定に基づいて認められた価格に関する約束について準用する。

第十二条 公告及び決定の説明

  1. 当局は、第五条の規定に基づいてダンピング防止のための調査を開始することを正当とするために十分な証拠があると認める場合には、自国の産品が当該調査の対象となる加盟国及び調査当局に知られている利害関係を有するその他の者にその旨を通知するものとし、また、その旨を公告する。
    1. 調査の開始についての公告は、次の事項に関する適切な情報を含むものとするか、又は公告とは別の報告書(注)によってこれらの情報を入手することができるようにして行う。

      注: 当局は、この条に規定する情報及び説明を別の報告書によって提供する場合には、公衆が当該報告書を容易に入手することができることを確保する。

      1. 輸出国の国名及び関係する産品
      2. 調査の開始の日
      3. 申請書におけるダンピングの申立ての根拠
      4. 損害の申立ての根拠となる要因の要約
      5. 利害関係を有する者による意見の提出先
      6. 利害関係を有する者が意見を表明することができる期限
  2. 仮の又は最終的な決定(肯定的であるか否定的であるかを問わない。)、第八条の規定に基づき約束を認めるための決定、その約束の終了及び確定的なダンピング防止税の撤廃は、公告する。この公告は、事実及び法令に係る問題であって調査当局が重要と認めたすべてのものに関して得られた認定及び結論を十分詳細に記載するか、又は別の報告書によって入手することができるようにして行う。この公告及び別の報告書はすべて、自国の産品が決定又は約束の対象となる加盟国及び知られている利害関係を有するその他の者に送付されるものとする。
    1. 暫定措置の適用についての公告は、ダンピング及び損害に関する仮の決定について十分詳細な説明を記載するか、又は別の報告書によって入手することができるようにして行うものとし、また、提示された論証の採用又は却下をもたらした事実及び法令に係る事項について言及する。この公告又は別の報告書には、秘密の情報の保護に関する要件に妥当な考慮を払いつつ、特に、次のものを含む。
      1. 供給者の氏名又は、これが実行可能でない場合には、関係供給国の国名
      2. 通関上十分に明確な産品に関する記述
      3. 定められたダンピングの価格差並びに第二条の規定に基づく輸出価格及び正常の価額の決定並びにこれらの比較に用いた方法について当該方法を用いた十分な説明
      4. 第三条に規定する損害の決定に関連して行った検討
      5. 決定に至った主な理由
    2. 確定的な税の賦課又は価格に関する約束の承認について肯定的な決定が行われた場合には、調査の完結又は停止についての公告は、秘密の情報の保護に関する要件に十分な考慮を払いつつ、最終的な措置の適用又は価格に関する約束の承認をもたらした事実及び法令に係る事項並びに理由についてのすべての関連情報を含むものとするか、又は別の報告書によってこれらの情報を入手することができるようにして行う。この公告又は別の報告書には、特に、12.2.1に規定する情報、輸出者及び輸入者が提示した関連する論証又は主張を採用し又は却下した理由並びに6.10.2の規定に基づいて行った決定の根拠を含む。
    3. 第八条の規定に基づいて約束を認めた後に行う調査の完結又は停止についての公告は、その約束のうちの秘密でない部分を含むものとするか、又は別の報告書によって当該部分を入手することができるようにして行う。
  3. この条の規定は、前条の規定に基づく見直しの開始及び完結並びに第十条に規定するダンピング防止税を及して課するための決定について準用する。

第十三条 司法上の審査

加盟国は、自国の法令にダンピング防止措置に関する規定を有する場合には、特に、最終的な決定及び第十一条に規定する決定の見直しに関する行政上の措置を速やかに審査するため、司法裁判所、仲裁裁判所若しくは行政裁判所又はそれらの訴訟手続を維持する。これらの裁判所又は訴訟手続は、当該最終的な決定又は見直しについて責任を有する当局から独立したものとする。

第十四条 第三国のためのダンピング防止措置

  1. 第三国のためのダンピング防止措置の申請は、その措置を求める当該第三国の当局が行う。
  2. 14.1の申請は、輸入産品がダンピングされていることを示す価格についての情報及び申し立てられたダンピングが第三国の関係国内産業に損害を与えていることを示す詳細な情報によって裏付けられるものとする。当該第三国の政府は、輸入国の当局が必要とする追加の情報を入手することができるように、その当局にあらゆる援助を与える。
  3. 輸入国の当局は、14.1の申請を検討するに当たり、申し立てられたダンピングが第三国の関係国内産業全体に及ぼす影響を考慮する。すなわち、損害については、申し立てられたダンピングが当該関係国内産業の当該輸入国向けの輸出に及ぼす影響との関連のみにおいて評価してはならず、また、そのダンピングが当該関係国内産業の輸出全体に及ぼす影響との関連のみにおいても評価してはならない。
  4. 事案について手続を進めるか進めないかの決定については、輸入国が行う。輸入国が措置をとる用意があると決定する場合には、その措置について物品の貿易に関する理事会の承認を求めるための同理事会に対する申請については、当該輸入国が行う。

第十五条 開発途上加盟国

先進加盟国は、この協定に基づいてダンピング防止措置をとることを検討する場合には、開発途上加盟国の特別な事情を特に考慮しなければならないことを認める。ダンピング防止税の賦課が開発途上加盟国の重大な利益に影響を及ぼすものである場合には、その賦課に先立ち、この協定に定める建設的な救済措置をとる可能性について検討する。

第二部

第十六条 ダンピング防止措置に関する委員会

  1. この協定により、各加盟国の代表で構成するダンピング防止措置に関する委員会(この協定において「委員会」という。)を設置する。委員会は、議長を選出するものとし、少なくとも年二回会合するほか、この協定の関連規定の定めるところによりいずれかの加盟国の要請に基づき会合する。委員会は、この協定に基づく任務又は加盟国により与えられた任務を遂行するものとし、この協定の実施又はこの協定の目的の達成に関する事項について協議する機会を加盟国に与える。世界貿易機関事務局は、委員会の事務局として行動する。
  2. 委員会は、適当な場合には、補助機関を設置することができる。
  3. 委員会及び補助機関は、その任務を遂行するため、適当と認めるいかなる者とも協議し及びこれらの者から情報を求めることができる。もっとも、委員会又は補助機関は、いずれかの加盟国の管轄内にある者から情報を求めるのに先立ち、当該加盟国にその旨を通知するものとし、当該加盟国及び協議を受ける企業の同意を得る。
  4. 加盟国は、ダンピング防止のためにとられたすべての仮の又は最終的な措置を遅滞なく委員会に報告する。その報告は、事務局において、他の加盟国による閲覧に供する。加盟国は、また、半年ごとに、直前の六箇月の期間にとられたすべてのダンピング防止措置に関する報告を提出する。その半年ごとの報告については、合意された標準的な様式で提出する。
  5. 各加盟国は、委員会に対し、(a)第五条に規定する調査を開始し及び実施する権限を有する当局並びに(b)この調査の開始及び実施を規律する国内手続について通報する。

第十七条 協議及び紛争解決

  1. この条に別段の定めがある場合を除くほか、この協定に係る協議及び紛争解決には、紛争解決了解を適用する。
  2. 各加盟国は、この協定の実施に影響を及ぼす問題に関し他の加盟国がした申立てに好意的な考慮を払うものとし、その申立てに関する協議のための機会を十分に与える。
  3. 加盟国は、この協定に基づき直接若しくは間接に自国に与えられた利益が他の加盟国によって無効にされ若しくは侵害されており又はこの協定の目的の達成が他の加盟国によって妨げられていると認める場合には、問題の相互に満足すべき解決を図るため、当該他の加盟国に対し書面により協議を要請することができる。各加盟国は、協議の要請に対し好意的な考慮を払う。
  4. 協議を要請した加盟国が17.3の規定に基づく協議において合意による解決が得られなかったとし、かつ、輸入加盟国の行政当局が最終的な措置として確定的なダンピング防止税を課し又は価格に関する約束を認めた場合には、当該協議を要請した加盟国は、問題を紛争解決機関に付託することができる。協議を要請した加盟国は、また、暫定措置が著しい影響を及ぼしている場合において、当該暫定措置が7.1の規定に反してとられたとするときは、問題を同機関に付託することができる。
  5. 紛争解決機関は、申立てをした国の要請により、次の陳述書等に基づいて問題を検討するため、小委員会を設置する。
    1. 要請を行う加盟国の陳述書であって、この協定に基づき直接若しくは間接に自国に与えられた利益がいかに無効にされ若しくは侵害されているかを示し又はこの協定の目的の達成が妨げられていることを示すもの
    2. 輸入加盟国の当局が適当な国内手続に従って入手した事実
  6. 17.5の問題を検討する場合には、次のとおりとする。
    1. 小委員会は、問題に関する事実の評価に当たっては、当局による事実の認定が適切であったかなかったか及び当局による事実の評価が公平かつ客観的であったかなかったかについて決定する。当局による事実の認定が適切であり、かつ、当局の評価が公平かつ客観的であった場合には、小委員会が異なった結論に達したときも、当該当局の評価が優先する。
    2. 小委員会は、この協定の関連規定を解釈に関する国際法上の慣習的規則に従って解釈する。小委員会は、この協定の関連規定が二以上の許容し得る解釈を容認していると判断する場合において、当局の措置がこれらの許容し得る解釈の一に基づいているときは、当該措置がこの協定に適合しているものと認める。
  7. 小委員会に提供された秘密の情報については、当該情報を提供した者、団体又は当局の正式の同意を得ないで開示してはならない。秘密の情報の開示が小委員会に対して要求された場合において、小委員会による当該情報の開示が認められないときは、当該情報の秘密でない要約であって当該情報を提供した者、団体又は当局により開示が認められたものが提供される。

第三部

第十八条 最終規定

  1. 他の加盟国からのダンピング輸出に対するいかなる措置も、この協定により解釈される千九百九十四年のガットの規定による場合を除くほか、とることができない。(注)

    注: この18.1の規定は、適当な場合には千九百九十四年のガットの他の関連規定による措置をとることを妨げるものではない。

  2. この協定のいかなる規定についても、他のすべての加盟国の同意なしには、留保を付することができない。
  3. 次の18.3.1及び18.3.2の規定に従い、この協定は、調査及び既存の措置の見直しであって、各加盟国について世界貿易機関協定が効力を生ずる日以後に行われる申請に基づいて開始されるものについて適用する。
    1. 9.3に定める還付の手続におけるダンピングの価格差の算定については、最新のダンピングの決定又は見直しに用いた方式を適用する。
    2. 既存のダンピング防止措置に11.3の規定を適用するに当たっては、当該措置は、遅くとも各加盟国について世界貿易機関協定が効力を生ずる日にとられたものとみなす。ただし、同日に効力を有する加盟国の法令が既に11.3に規定する条項と同様のものを有する場合を除く。
  4. 各加盟国は、世界貿易機関協定が自国について効力を生ずる日以前に、自国の法令及び行政上の手続を当該加盟国について適用されるこの協定に適合したものとすることを確保するため、すべての必要な一般的又は個別的な措置をとる。
  5. 各加盟国は、この協定に関連を有する法令の変更及びその運用における変更につき、委員会に通報する。
  6. 委員会は、この協定の目的を考慮して、毎年この協定の実施及び運用について検討する。委員会は、検討の対象となった期間における状況について毎年物品の貿易に関する理事会に報告する。
  7. この協定の附属書は、この協定の不可分の一部を成す。

附属書1 6.7の規定に基づく現地調査に関する手続

  1. 調査の開始に当たっては、現地調査の実施に関する意図を輸出加盟国の当局及び関係があると知られている企業に通知すべきである。
  2. 例外的な状況において調査団に政府の職員ではない専門家を含めようとする場合には、企業及び輸出加盟国の当局にその旨を通知すべきである。その専門家は、秘密の取扱いに係る要件に違反した場合には、効果的な制裁の対象とされるべきである。
  3. 訪問調査を最終的に計画する前に輸出加盟国における関係企業の明示の同意を得ることを標準的な慣行とすべきである。
  4. 調査当局は、関係企業の同意を得たときは、速やかに、訪問調査を受ける企業の名称及び所在地並びに合意された訪問調査の日を輸出加盟国の当局に通知すべきである。
  5. 訪問調査を行う前に、関係企業に対し十分前もって通知すべきである。
  6. 質問書について説明するための訪問調査は、輸出企業の要請に基づいてのみ行うべきである。当該訪問調査は、(a)輸入加盟国の当局が関係加盟国の代表者にその旨を通知し、かつ、(b)その代表者が訪問調査に反対しない場合にのみ行うことができる。
  7. 現地調査については、提供された情報を確認し又は更に詳細な情報を入手することを主たる目的としていることにかんがみ、質問書に対する回答を受領した後に行うべきである。ただし、企業が同意し、輸出加盟国の政府が予定されている訪問調査について調査当局より通知され、かつ、当該政府が当該訪問調査に反対しない場合は、この限りでない。更に、訪問調査の前に、確認する情報の一般的な性格及び追加的に必要な情報について関係企業に通知することを標準的な慣行とすべきである。ただし、このことは、入手した情報に照らして更に詳細な情報の提供を現地において要請することを妨げるものではない。
  8. 輸出加盟国の当局又は企業が行った照会又は質問であって現地調査の成功に不可欠なものについては、可能なときはいつでも、訪問調査を行う前に回答すべきである。

附属書2 6.8に規定する入手可能な最善の情報

  1. 調査当局は、調査の開始の後できる限り速やかに、利害関係を有する者から入手することを要する情報の詳細及び利害関係を有する者がその回答において当該情報を記載する際に従うべき方法の詳細を特定すべきである。調査当局は、また、情報が妥当な期間内に提供されない場合には、調査当局が知ることができた事実(調査の開始を求める国内産業の申請書に記載された事実を含む。)に基づいて決定を行うことができる旨を当該利害関係を有する者が認識することを確保すべきである。
  2. 調査当局は、また、利害関係を有する者がその回答を特定の媒体(例えば、コンピュータ用磁気テープ)又はプログラム言語を使用して行うことを要請することができる。調査当局は、その要請を行う場合には、特定された媒体又はプログラム言語によって当該利害関係を有する者が回答するための妥当な能力を有しているかいないかを考慮すべきであり、また、当該利害関係を有する者に対し、当該利害関係を有する者が使用しているコンピュータシステム以外のコンピュータシステムを回答のために使用することを要請すべきではない。調査当局は、利害関係を有する者がその会計の処理に当たってコンピュータを使用しておらず、かつ、調査当局の要請に応じた回答を行うことが利害関係を有する者に不合理な追加の負担をもたらす場合(例えば、不合理な追加の費用及び困難を伴う場合)には、コンピュータを使用した回答に関する要請に固執すべきではない。調査当局は、利害関係を有する者がその会計の処理に当たってコンピュータを使用している場合において、調査当局が特定した媒体又はプログラム言語を使用しておらず、かつ、調査当局の要請に応じた回答を提供することが利害関係を有する者に不合理な追加の負担をもたらすとき(例えば、不合理な追加の費用及び困難を伴うとき)は、当該特定の媒体又はプログラム言語を使用した回答に関する要請に固執すべきではない。
  3. 調査当局に提供された情報であって、確認が可能であり、適時に提供され、過度の困難をもたらすことなく調査に使用することができるように適切に提供され、かつ、場合により、調査当局が要請した媒体又はプログラム言語によって提供されたすべての情報は、決定を行う際に考慮すべきである。調査当局が特定した媒体又はプログラム言語によって利害関係を有する者が回答しない場合であっても、2に定める要件が満たされていると調査当局が認めるときは、当該特定の媒体又はプログラム言語によって回答しないことが調査を著しく妨げているとみなすべきではない。
  4. 調査当局が特定の媒体(例えば、コンピュータ用磁気テープ)を使用して提供される情報を処理する能力を有しない場合には、情報は、書面の形式その他調査当局が受け入れることができる形式で提供されるべきである。
  5. 提供された情報がすべての点において必ずしも完全なものではない場合においても、利害関係を有する者が最善を尽くしたときは、調査当局が当該情報を無視することは、正当とされるべきではない。
  6. 証拠又は情報を採用しない場合には、当該証拠又は情報を提供した利害関係を有する者にその理由を直ちに通知すべきであり、また、調査の期限について妥当な考慮を払いつつ、合理的な期間内に更に説明を行う機会を当該利害関係を有する者に与えるべきである。調査当局は、その説明に満足しない場合には、公表する決定において、当該証拠又は情報を採用しない理由を示すべきである。
  7. 調査当局は、二次的な情報源からの情報(調査の開始を求める申請において提供されたものを含む。)に基づいて認定(正常の価額に関するものを含む。)を行う場合には、特に慎重に行うべきである。この場合において、調査当局は、当該情報を、実行可能なときは、他の独立した情報源からの情報であって利用することができるもの(例えば、公表された価格表、公的な輸入統計及び関税統計)及び調査中に利害関係を有する他の者から入手した情報に照らして確認すべきである。もっとも、利害関係を有する者が協力しないために調査当局が関連情報を入手することができない場合には、この状態が当該利害関係を有する者が協力した場合よりも当該利害関係を有する者にとって不利な結果をもたらすことは、明らかである。

世界貿易機関(WTO)へ戻る