世界貿易機関(WTO)

令和2年8月5日
(写真1)アブドゥル・ハミード・マムドゥ氏 (アブドゥル・ハミード・マムドゥ氏)
(写真2)トゥドル・ウリアノブスキ氏 (トゥドル・ウリアノブスキ氏)

 前回に引き続き、熱戦が繰り広げられているWTO事務局長に名乗りを上げた残りの六名の候補者を指名順にご紹介する。多彩な候補者ひとりひとりの姿を写真とともに思い浮かべながらお読みいただければ幸いである。

 三人目は、エジプトからの候補、アブドゥル・ハミード・マムドゥ氏である。現在は大学客員教授と国際法律事務所の顧問を務める。外交官出身で、WTO事務局での勤務経験が長いことが他の候補にない持ち味だ。1990年代にはGATT事務局でウルグアイラウンド交渉に携わり、その後15年以上WTOサービス投資部長を務めた。
 四人目は、モルドバのトゥドル・ウリアノブスキ氏。37歳の若さにして、2018年から2019年にかけて外務・欧州統合大臣を務めている。大臣に就任する前は、ジュネーブ代表部大使としてWTO行財政委員長をはじめ複数の委員会で議長を務める等、WTOにおける経験も積んでいる。

(写真3)兪明希氏 (兪明希氏)
(斜視4)アミナ・モハメド氏 (アミナ・モハメド氏)

 続いて五人目は、韓国の兪明希(ユ・ミョンヒ)氏。国家公務員出身であり、通商分野の専門家だ。現在は、産業通商資源部で通商交渉本部長を務めており、貿易立国ともいえる母国の通商政策を一手に担っている。これまで外交通商部への出向、在中国大使館での勤務といった外交感覚に加え、首席交渉官として米韓自由貿易協定(FTA)改正交渉にあたった経験がある。
 六人目はケニア指名のアミナ・モハメド氏。スポーツ・文化・遺産大臣の前は教育長官等を歴任。2000年から2006年までジュネーブ代表部大使として、WTO一般理事会や紛争解決機関の議長、第10回WTO閣僚会議では、主催国ケニアの外務・国際貿易長官として議長を務め、修正TRIPS協定(知的所有権の貿易側面に関する協定)や情報技術協定品目拡大の合意をまとめた。第6回アフリカ開発会議の成功に尽力し、旭日大紋章を受賞している。

(写真5)ムハンマド・アル=トワイジリ氏 (ムハンマド・アル=トワイジリ氏)
(写真6)リアム・フォックス氏 (リアム・フォックス氏)

 七人目はムハンマド・アル=トワイジリ氏。候補者締め切り最終日の7月8日にサウジアラビアから指名された。現在は国内外の経済案件を扱う王立裁判所顧問を務めており、元経済企画大臣。候補者の中では唯一、金融分野出身で、JPモルガン証券やHSBC(香港上海銀行)で経験を積んだのち大臣に就任している。
 最後は、英国から指名を受けたリアム・フォックス氏。保守党議員であり、2019年までの3年間、英国のEU離脱を担当する国際貿易大臣を務めた。政治家として長年の経験を有し、国防大臣や保守党幹事長なども歴任。なお、グラスゴー大学の医学部を卒業しており、政治家になる前は医者として働いていたという側面ももつ。

 新型コロナ禍において多角的貿易体制を強化する必要性が改めて認識されている。WTO改革は国際社会にとって待ったなしの課題であり、次のWTO事務局長には164に上る加盟国をまとめる強力なリーダーシップが必要となる。八名の横顔は多種多様であり、国際社会が重責を任せるに相応しい面々が候補として揃ったといえる。現在は各候補者の加盟国に対するキャンペーン期間であるが、いよいよ9月7日からは加盟国による候補者の絞り込みが始まる。白熱するWTO事務局長選から目が離せない。
 連載はしばらく夏休みに入り、次回は9月に身も心もリフレッシュして再開します!

(写真はすべてWTOホームページより。)


世界貿易機関(WTO)へ戻る