世界貿易機関(WTO)

平成28年9月5日

第四部 貿易及び開発

第三十六条 原則及び目的

  1. 締約国は、
    1. この協定の基本的な目的がすべての締約国の生活水準の引上げ及び経済の漸進的開発を含むことを想起し、また、この目的の達成が低開発締約国にとつて特に緊急なものであることを考慮し、
    2. 低開発締約国の輸出収入がこれらの締約国の経済開発において決定的な役割を果たすことができること並びにこの寄与の程度が低開発締約国により不可欠な輸入に対して支払われる価格、これらの締約国の輸出の数量及びこれらの輸出に対して支払われる価格にかかつていることを考慮し、
    3. 低開発国における生活水準と他の国における生活水準との間に大きい格差があることに留意し、
    4. 低開発締約国の経済開発を促進し、かつ、これらの国における生活水準の急速な引上げをもたらすため、個別行動及び共同行動が不可欠であることを認め、
    5. 経済的及び社会的な発展を達成する手段としての国際貿易が、この条に定める目的に合致する規則及び手続並びにそのような規則及び手続に適合する措置によつて規律されるべきであることを認め、
    6. 低開発締約国がその貿易及び開発を促進するための特別の措置を執ることを締約国団が認めることができることに留意して、次のとおり協定する。
  2. 低開発締約国の輸出収入の急速かつ持続的な増大が、必要である。
  3. 成長する国際貿易において低開発締約国がその経済開発上の必要に相応した取分を占めることを確保することを意図した積極的な努力が、必要である。
  4. 多くの低開発締約国が限られた範囲の一次産品の輸出に引き続き依存しているので、これらの産品の世界市場への進出のための一層有利な条件であつて受諾可能なものを可能な最大限度において設けることが必要であり、また、適当な場合にはいつでも、経済開発のための一層多くの資源をこれらの国に提供するために世界の貿易及び需要の拡大並びにこれらの国の実質的な輸出収入の不断のかつ着実な増大を可能にするように、これらの産品についての世界市場の条件の安定及び改善を意図した措置(特に、価格を安定した、衡平な、かつ、採算のとれるものにすることを意図した措置を含む。)を講ずることが必要である。
  5. 低開発締約国の経済の急速な拡大は、その経済構造の多様化及び一次産品の輸出に対する過度の依存の回避によつて容易にされる。したがつて、低開発締約国が輸出について特別の関心を現に有し又は将来有することがある加工品及び製品の有利な条件による市場への進出を可能な最大限度において増進することが、必要である。
  6. 低開発締約国における輸出収入その他の外国為替収入の慢性的な不足のため、貿易と開発のための資金上の援助との間には、重要な相互関係がある。したがつて、締約国団及び国際的な融資機関が、これらの低開発締約国によるその経済開発のための負担を軽減するために最も効果的に貢献することができるように、緊密かつ継続的な協力を行なうことが、必要である。
  7. 締約国団並びに低開発国の貿易及び経済開発に関連がある活動を行なつている他の政府間機関及び国際連合の諸機関が適切な協力を行なうことが、必要である。
  8. 先進締約国は、貿易交渉において行なつた関税その他低開発締約国の貿易に対する障害の軽減又は廃止に関する約束について相互主義を期待しない。
  9. これらの原則及び目的を具体化するための措置を執ることは、締約国が個個に、及び共同して、目的意識をもつて努力すべき問題である。

第三十七条 約束

  1. 先進締約国は、可能な最大限度において、すなわち、やむを得ない理由(法的な理由を含む。)によつて不可能である場合を除くほか、次の規定を実施しなければならない。
    1. 低開発締約国が輸出について特別の関心を現に有し又は将来有することがある産品についての障害(加工されていない産品と加工された産品との間に不当な差別を設けるような関税その他の制限を含む。)の軽減及び廃止に高度の優先権を与えること。
    2. 低開発締約国が輸出について特別の関心を現に有し又は将来有することがある産品について関税又は関税以外の輸入障害を新設し又は強化することを差し控えること。
    3. 全部又は大部分が低開発締約国の領域内で生産される一次産品(加工されているといないとを問わない。)の消費の増大を著しく阻害する財政措置で特にこれらの産品に適用されるものについて、
      1. そのような財政措置を新たに執ることを差し控えること。
      2. 財政政策の調整の際に、そのような財政措置の軽減及び廃止に高度の優先権を与えること。
    4. 低開発締約国の経済開発を促進し、かつ、これらの国における生活水準の急速な引上げをもたらすため、個別行動及び共同行動が不可欠であることを認め、
    5. 経済的及び社会的な発展を達成する手段としての国際貿易が、この条に定める目的に合致する規則及び手続並びにそのような規則及び手続に適合する措置によつて規律されるべきであることを認め、
    6. 低開発締約国がその貿易及び開発を促進するための特別の措置を執ることを締約国団が認めることができることに留意して、次のとおり協定する。
    1. 1(a)、(b)又は(c)のいずれかの規定が実施されていないと認められるときはいつでも、その問題は、当該規定を実施していない締約国又は他の関係締約国によつて締約国団に報告されなければならない。
      1. 締約国団は、いずれかの関係締約国から要請を受けたときは、この問題に関し、当該関係締約国及び他のすべての関係締約国と、第三十六条に定める目的を助長するためにすべての関係締約国にとつて満足な解決に到達することを目的として、協議しなければならない。この協議は、二国間協議を妨げるものではない。これらの協議においては、1(a)、(b)又は(c)の規定が実施されなかつた場合におけるその理由が検討されるものとする。
      2. 他の先進締約国と共同で行動することによつて1(a)、(b)又は(c)の規定の個個の締約国による実施が一層容易に達成される場合があるので、前記の協議は、適当な場合には、そのような行動を目的として行なうことができる。
      3. 締約国団による協議は、また、適当な場合には、第二十五条1に定めるこの協定の目的を助長するための共同行動についての合意を目的として行なうことができる。
  2. 先進締約国は、
    1. 全部又は大部分が低開発締約国の領域内で生産される産品の再販売価格を政府が直接又は間接に決定する場合には、販売差益を衡平な水準に維持するため、あらゆる努力を払わなければならない。
    2. 低開発締約国からの輸入の増進の可能性を増大させることを意図した他の措置を執ることを積極的に検討し、かつ、このため、適切な国際活動を行なうことに協力しなければならない。
    3. 特定の問題に対処するためにこの協定によつて許されている他の措置を執ることを検討する場合には、低開発締約国の貿易上の利益を特に考慮しなければならず、また、これらの措置がこれらの締約国の重大な利益に影響を及ぼすようなものであるときは、これを執るに先だつて、可能なすべての建設的な救済措置を検討しなければならない。
  3. 低開発締約国は、第四部の規定の実施にあたり、過去における貿易の推移及び低開発締約国全体の貿易上の利害関係を考慮して、現在及び将来における自国の開発上、資金上及び貿易上の必要に合致する限りにおいて、他の低開発締約国の貿易上の利益のために適切な措置を執ることに同意する。
  4. 各締約国は、1から4までに規定する約束の実施にあたり、生ずることがある問題又は困難に関してこの協定の通常の手続による協議を行なう十分な機会を直ちに他の関係締約国に与えなければならない。

第三十八条 共同行動

  1. 締約国は、第三十六条に定める目的を助長するため、この協定の枠わく内で、又は適当な場合には他の態様で、共同して行動しなければならない。
  2. 特に、締約国団は、
    1. 適当な場合には、低開発締約国が特別の関心を有する一次産品の世界市場への進出のための改善された条件であつて受諾可能なものを設けるため、並びにこれらの産品についての世界市場の条件の安定及び改善を意図した措置(これらの産品の輸出のための価格を安定した、衡平な、かつ、採算のとれるものにすることを意図した措置を含む。)を講ずるための行動(国際取極による行動を含む。)をしなければならない。
    2. 貿易及び開発の政策の問題に関し、国際連合及びその諸機関(国際連合貿易開発会議の勧告に従つて設立される機関を含む。)と適切な協力を行なうように努めなければならない。
    3. 個個の低開発締約国の開発の計画及び政策を分析すること並びに潜在的な輸出能力の開発を促進し、及びそのようにして開発された産業の産品の輸出市場への進出を容易にするための具体的な措置を講ずるために貿易と援助との関係を検討することに協力しなければならず、また、この点に関し、個個の低開発締約国の貿易と援助との関係の組織的研究であつて、潜在的な輸出能力、市場の見通し及びさらに必要となることがある行動を明確に分析することを目的とするものにおいて、各国政府及び国際機関(特に、経済開発のための資金上の援助に関して権限のある機関)と適切な協力を行なうように努めなければならない。
    4. 低開発締約国の貿易の成長率を特に考慮しつつ世界貿易の推移を絶えず検討し、かつ、締約国に対し、その状況において適当と認められる勧告を行なわなければならない。
    5. 各国の政策及び規則の国際的な調和及び調整により、生産、輸送及び市場取引に関する技術上及び商業上の基準の設定により、並びに貿易に関する情報の供給の増大及び市場調査の発達のための措置を通ずる輸出の促進によつて経済開発のために貿易を拡大することにつき、実行可能な方法を求めることに協力しなければならない。
    6. 第三十六条に定める目的を助長し、かつ、この部の規定を実施するために必要な制度上の措置を講じなければならない。

附属書A 第一条2(a)にいう地域の表

  • グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国
  • グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国の属領
  • カナダ
  • オーストラリア連邦
  • オーストラリア連邦の属領
  • ニュー・ジーランド
  • ニュー・ジーランドの属領
  • 南アフリカ連邦(南西アフリカを含む。)
  • アイルランド
  • インド(千九百四十七年四月十日現在)
  • ニューファウンドランド
  • 南ローデシア
  • ビルマ
  • セイロン

前記の地域のうちのあるものは、ある種の産品について有効な二以上の特恵税率を有する。その地域は、それらの産品の最恵国税率による主要供給国たる他の締約国との取極によつて、それらの特恵税率を単一の特恵税率と代替することができる。この単一の特恵税率は、最恵国税率による供給国にとつて、その代替前に有効であつた特恵より全体として不利なものであつてはならない。

千九百四十七年四月十日にこの附属書に掲げる地域のうちの二以上の地域の間にのみ存在していた内国税の特恵の限度に替えるため、又は次に掲げる特恵的数量取極に替えるために同等の限度の特恵関税を課することは、特恵関税の限度の拡張とはみなされない。

第十四条5(b)にいう特恵取極とは、冷蔵及び冷凍の牛肉及び子牛肉、冷凍の羊肉及び子羊肉、冷蔵及び冷凍の豚肉並びにべーコンに関し、カナダ、オーストラリア及びニュー・ジーランドの各政府との合意に基いて千九百四十七年四月十日に連合王国において効力を有していた取極をいう。これらの取極は、第二十条(h)の規定に基く措置の適用を妨げることなく、廃止し、又は特恵関税に替えるものとし、かつ、このための交渉を実質的に関係を有する国又は当事国の間でできる限りすみやかに行うものとする。

ニュー・ジーランドにおいて千九百四十七年四月十日に有効であつた映画フィルム賃借税は、この協定の適用上、第一条の規定に基く関税として取り扱う。ニュー・ジーランドにおいて千九百四十七年四月十日に有効であつた映画賃貸者に対する映画フィルムの割当は、この協定の適用上、第四条の規定に基く映写時間割当として取り扱う。

インド及びパキスタンの両自治領は、千九百四十七年四月十日には自治領として存在していなかつたので、前記の表に独立して掲げていない。

附属書B 第一条2(b)にいうフランス連合の地域の表

  • フランス
  • フランス領赤道アフリカ(コンゴー川流域条約地域※その他の地域)
  • フランス領西アフリカ
  • フランスの委任統治下にあるカメルーン※
  • フランス領ソマリ・コースト及び属地
  • インドにおけるフランス殖民地※
  • オセアニアにおけるフランス殖民地
  • ニュー・ヘブリディーズ共同統治地域におけるフランス殖民地※
  • ガドループ及び属地
  • フランス領ギアナ
  • インド・シナ
  • マダガスカル及び属地
  • モロッコ(フランス地帯)※
  • マルティニック
  • ニュー・カレドニア及び属地
  • レユニオン
  • サン・ピエール・エ・ミクロン
  • フランスの委任統治下にあるトーゴー※
  • テュニジア

※フランス本土及びフランス連合の地域への輸入のため

附属書C 第一条2(b)にいうベルギー=ルクセンブルグ=オランダ関税同盟の地域の表

  • ベルギー=ルクセンブルグ経済同盟
  • ベルギー領コンゴー
  • ルアンダ・ウルンディ
  • オランダ
  • ニュー・ギニア
  • スリナム
  • オランダ領アンティーユ
  • インドネシア共和国

関税同盟を構成する地域への輸入のみのため

附属書D 第一条2(b)にいうアメリカ合衆国に関する地域の表

  • アメリカ合衆国(関税地域)
  • アメリカ合衆国の属領
  • フィリピン共和国

千九百四十七年四月十日にこの附属書に掲げる地域のうちの二以上の地域の間にのみ存在した内国税における特恵の限度に替えるためにそれと同等の限度の特恵関税を課することは、特恵関税の限度の拡張とはみなされない。

附属書E 第一条2(d)にいうチリとその隣接国との間の特恵取極の適用を受ける地域の表

一方チリと、他方次の地域との間にのみ有効な特恵

  1. アルゼンティン
  2. ボリヴィア
  3. ペルー

附属書F 第一条2(d)にいうレバノン及びシリアとその隣接国との間の特恵取極の適用を受ける地域の表

一方レバノン=シリア関税同盟と他方次の地域との間にのみ有効な特恵

  1. パレスタイン
  2. トランスジョルダン

附属書G 第一条4にいう特恵の最大限度を設定する日付

  • オーストラリア 千九百四十六年十月十五日
  • カナダ 千九百三十九年七月一日
  • フランス 千九百三十九年一月一日
  • レバノン=シリア関税同盟 千九百三十九年十一月三十日
  • 南アフリカ連邦 千九百三十八年七月一日
  • 南ローデシア 千九百四十一年五月一日

附属書H 第二十六条の決定を行うために用いる対外貿易総額の百分率(千九百四十九年から千九百五十三年までの平均に基く。)

この協定が、日本国政府の同協定への加入前に、対外貿易額が第一欄により第二十六条6に規定する百分率を占める締約国により受諾されたときは、前記の規定の適用上、第一欄が適用される。この協定が、日本国政府の加入前に、前記のように受諾されなかつたときは、前記の規定の適用上、第二欄が適用される。

第一欄(千九百五十五年三月一日現在の締約国) 第二欄(千九百五十五年三月一日現在の締約国及び日本国)
オーストラリア 三・一 三・〇
オーストリア 〇・九 〇・八
ベルギー=ルクセンブルグ 四・三 四・二
ブラジル 二・五 二・四
ビルマ 〇・三 〇・三
カナダ 六・七 六・五
セイロン 〇・五 〇・五
チリ 〇・六 〇・六
キューバ 一・一 一・一
チェッコスロヴァキア 一・四 一・四
デンマーク 一・四 一・四
ドミニカ共和国 〇・一 〇・一
フィンランド 一・〇 一・〇
フランス 八・七 八・五
ドイツ連邦共和国 五・三 五・二
ギリシャ 〇・四 〇・四
ハイティ 〇・一 〇・一
インド 二・四 二・四
インドネシア 一・三 一・三
イタリア 二・九 二・八
オランダ王国 四・七 四・六
ニュー・ジーランド 一・〇 一・〇
ニカラグァ 〇・一 〇・一
ノールウェー 一・一 一・一
パキスタン 〇・九 〇・八
ペルー 〇・四 〇・四
ローデシア及びニアサランド 〇・六 〇・六
スウェーデン 二・五 二・四
トルコ 〇・六 〇・六
南アフリカ連邦 一・八 一・八
連合王国 二〇・三 一九・八
アメリカ合衆国 二〇・六 二〇・一
ウルグァイ 〇・四 〇・四
日本国 二・三
一〇〇・〇 一〇〇・〇

(注) これらの百分率は、関税及び貿易に関する一般協定が適用されるすべての領域の貿易を考慮して算定した。


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