知的財産権
知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)
令和6年2月7日
1 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)とは
国際的な自由貿易秩序維持形成のための知的財産権の十分な保護や権利行使手続の整備を加盟各国に義務付けることを目的としています。
TRIPS協定は多国間協定であり、WTOの規定によって加盟各国は本協定に拘束され、協定の内容は各国の法律に反映されるようになっています。
2 設立の背景
1980年代以降、発明・デザイン等の知的財産を伴った商品やサービスの取引が増加する中、知的財産を保護する実効的な国際ルールの不在により、国際市場が発展する程、偽物ブランド商品や海賊版CDなど、国際貿易に甚大な被害を及ぼすケースが増大しました。
そのような中、1986年に開始されたウルグアイ・ラウンド交渉において、新分野として知的財産権保護が検討され、米国などの先進国は、国際的ルールを通じた知的財産権の保護の強化を主張しました。農業・繊維分野で先進国が譲歩したことで、途上国も知的財産権交渉に参加し、1995年にWTO設立協定附属書1CとしてTRIPS協定が発効しました。
3 協定の意義
- 知的財産権に関する既存の条約(パリ条約、ベルヌ条約等)の遵守を義務づけた上でさらなる保護の強化を規定する「パリプラスアプローチ」をとっています。
- 内国民待遇(自国民と外国人の差別の禁止)とともに最恵国待遇(いずれかの国に与える最も有利な待遇を他のすべての加盟国に対しても与えなければならない)を基本原則としています。
- 国境措置、民事執行、刑事執行といった知的財産権行使(エンフォースメント)に関する規定が設けられています。
- 多国間における紛争解決手続が導入され、協定に違反した場合、WTOの中の紛争解決機関(DSB)に提訴し、違反措置の是正を求めることが可能となっています。是正が勧告される場合、これに応じない場合には制裁措置がとられることになります。
4 加盟国数
164か国・地域(WTO加盟国と同じ)(うち26か国がLDC)
5 組織
TRIPS協定の下では、TRIPS理事会が設置され、同理事会においてTRIPS協定の運用や実施についての議論が行われるとともに、貿易や知的財産に関する課題についての協議が行われています。
TRIPS理事会は、TRIPS協定の運用や実施を管理する責任を負っています。また、知的財産の貿易関連の側面に関する課題について加盟国間の協議の場を提供するとともに、WTO下の他の組織やWIPO等の国際機関とも連携しています。