エネルギー安全保障

平成26年12月1日
エネルギー憲章条約フォーラムの様子
登壇者の発言の様子

1 会議概要

2 各セッション要旨

(1)セッション1 「投資仲裁:仲裁機関の役割」

モデレーター:西村あさひ法律事務所 淀川詔子弁護士

ア アネット・マクヌソン ストックホルム商工会議所仲裁裁判所事務局長(資料(PDF)
世界銀行の投資紛争解決国際センター(ICSID)と比較する形で,ストックホルム商工会議所仲裁裁判所の特徴について説明した。
イ ブルックス・デイリー 常設裁判所(PCA)事務次長(資料(PDF)
本年7月にPCAにおいて判決が出たユーコス事案を示しつつ,国や企業が仲裁裁判所を選択する際の判断基準の観点からPCAを紹介した。
ウ アレハンドロ・カルバッロ エネルギー憲章事務局法務顧問(資料(PDF)
仲裁裁判の証拠に資する文書の提供や解釈文書の作成を含むエネルギー憲章事務局の活動について説明した。

(2)セッション2 「投資仲裁:実務家の視点」

モデレーター:濵本正太郎 京都大学教授

パネリスト:
ヤス・バニファテミ シャーマンアンドスターリング法律事務所弁護士
ペドロ・クラロス クアトレカサス法律事務所弁護士
アレハンドロ・エスコバル ベーカー・ボッツ法律事務所弁護士
谷口安平 京都大学名誉教授

 濵本教授の司会の下,ラウンドテーブル形式でセッションが取り進められた。仲裁機関・仲裁人の選択,投資仲裁裁判へ至る判断の困難さ,コスト,判決の執行,取消,透明性等に関する意見交換が行われた。

(3)セッション3 「投資仲裁:実際に提訴するには」

モデレーター:福永有夏 早稲田大学教授

ア ヤス・バニファテミ シャーマンアンドスターリング法律事務所弁護士
最近の仲裁裁判の傾向として見られる「平行手続」について説明した。
イ 井口直樹 長島・大野・常松法律事務所弁護士(資料(PDF)
「暫定措置」について,定義,実例,意義等について説明した。
ウ 石川知子 筑波大学准教授(資料(PDF)
「補償」について,条約条文を参照しつつ,補償を決める指標がない中で,実例を挙げて,補償の内容がいかに決まっていくのかについて説明した。
エ 手塚裕之 西村あさひ法律事務所弁護士(資料(PDF)
国際法曹協会(IBA:International Bar Association)の「証拠」のルールについて,実例を挙げて説明した。

(4)セッション4 「エネルギー憲章条約の下での和解調停」

モデレーター:中川淳司 東京大学教授

ア 茅野みつる 伊藤忠商事執行役員兼法務部長
投資家の立場から見る仲介調停の有用性について解説した。
イ アンナ・ジュバン=ブレット 元UNCTAD(国連貿易開発会議)上級専門家(資料(PDF)
投資紛争解決手段としての仲裁と仲介調停の違い,IBAの仲介ルール(Mediation Rule)の概要,仲介結果の履行等について実例を挙げて説明した。
ウ ニコラス・リンガード フレッシュフィールズ法律事務所弁護士(資料(PDF)
実務的な紛争解決の交渉における仲介調停の有用性と,仲介調停結果の執行の担保について説明した。

3 評価

  • (1)本フォーラムでは,エネルギー憲章条約に基づく投資仲裁・調停・仲介等の紛争解決について,仲裁機関,仲裁人,弁護士,企業の法務部,研究者等による専門的かつ具体的な議論を通じて,実務的かつ有益な情報が共有された。
  • (2)各セッションにおける質疑応答では,具体的にどのような条件下で提訴を行うことが可能か,提訴する仲裁裁判所としてはどこが適切なのか,仲裁人の選抜において留意すべき点は何か,参考にすべきルールや準備すべき証拠等に関する具体的な質問が多数寄せられ,投資仲裁に対する企業関係者の関心の高さがうかがえた。
  • (3)本フォーラムは,紛争解決条項を中心とするエネルギー憲章条約の意義及び活用法に関する理解促進を通じた日本企業の海外展開を下支えする一つの機会を提供した。また,豊富な実務経験を有する海外のパネリストと日本企業関係者との間の新たな人的ネットワーク構築の機会を提供した。

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