エネルギー安全保障
第27回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会(結果概要)



12月5日及び6日,若宮健嗣外務副大臣は,松本洋平経済産業副大臣と共に,パリで開催された第27回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会に出席したところ,概要以下のとおりです。
1 会議概要
(1)今次閣僚理事会は,「エネルギーの未来の構築」というテーマの下,ポーランドのミハウ・クルティカ気候大臣が議長を務め,IEAメンバー国30か国及びEUに加え,アソシエーション参加国(中国,インドネシア,タイ,シンガポール,モロッコ,インド,ブラジル,南アフリカ),参加申請国(チリ,リトアニア),OECD加盟手続国(コロンビア)の閣僚等及び,エネルギービジネス評議会に属する我が国企業を含む世界のエネルギー関連企業のCEO等が出席しました。
(2)閣僚間の議論においては,ア エネルギー安全保障の拡大・強化,イ 持続可能,革新的,包括的なエネルギー・システムに向けて,ウ グローバル・エネルギー・ガバナンスの次のレベルへの引き上げ等をテーマについて議論が行われ,会合の成果として,コミュニケ(英文/仮訳(PDF)
)が発出されるとともに,アソシエーション参加国であるインドとの間で,「戦略的パートナーシップ」の立ち上げに向けた協議開始が合意されました。
注:アソシエーション:世界のエネルギー消費量におけるOECD非加盟国の割合の増加といったエネルギー情勢の変化を受け,IEA非メンバー国との協力関係を制度的枠組の構築を通じて強化することを目指すイニシアティブ。2019年12月現在,中国,インドネシア,タイ,シンガポール,モロッコ,インド,ブラジル,南アフリカの8か国がアソシエーションに参加済み。
2 主な議論の内容
(1)サイドイベント:エネルギーにおける女性(5日午前)

エネルギー部門におけるジェンダー・タイバーシティ推進のための政策や産業界の役割について議論が行われ,若宮副大臣から,本年6月のG20大阪サミットで合意された「25by25」の達成に向けてのフォローアップ等,国際協力について紹介するとともに,日本としてもクリーンエネルギー分野における女性の参画拡大を後押ししたい旨述べました。
(2)閣僚朝食会(6日午前)(注:IEAメンバー国のみ出席)
ア 本朝食会でコミュニケが採択され,若宮副大臣から,世界のエネルギー情勢の転換期にあって,IEAメンバー国が全体として一致したメッセージを発出できることの意義は大きく,コミュニケの合意に向け尽力した議長輩出国のポーランドに敬意を表する旨述べました。
イ また,若宮副大臣から,アソシエーションの先を求めるインドとの間で「戦略的パートナーシップ」立ち上げに向けた協議開始が合意されることは,今次会合の最大の成果であり,日本としては,IEAとインドとの間の協議の前進に貢献していきたい旨述べるとともに,インド以外のアソシエーション参加国との協力促進も継続していきたい旨表明しました。
(3)全体会合セッション1「エネルギー安全保障の拡大・強化」(6日午前)
今日の石油市場変動の課題から生じるリスク及び機会,LNGの増加に伴う天然ガス市場安全保障,変動型・分散型発電のシェアの増加に対応するための市場デザイン及びオペレーション,エネルギー分野におけるサイバー・リスクへの対応等につき議論され,松本経産副大臣から,エネルギー安全保障上の課題に対する日本の取組を紹介しました。
(4)全体会合セッション2「持続可能,革新的,包括的なエネルギー・システムに向けて」(6日午前)
ア 省エネに関する政策実施に対する支援,エネルギー転換における再生可能エネルギーの役割,普遍的なエネルギー・アクセスの実現及びエネルギー貧困の終了,国際協力を通じた「エネルギー・イノベーション」の促進等について議論が行われました。
イ 若宮副大臣から,本年6月のG20大阪サミットにおいても,エネルギー・アクセスを含めたエネルギー関連問題における国際協力の重要性を確認した旨述べるとともに,日本としてもアフリカ開発会議(TICAD)の枠組で,アフリカのエネルギー・アクセスの向上に取り組んでおり,オフ・グリッド・エネルギーに係る支援や地熱発電を含む再生可能エネルギーに係る支援を継続していく旨表明しました。また,松本経産副大臣からは,エネルギー・イノベーションの推進の重要性について発言しました。
(5)閣僚昼食会(全体会合セッション3)「グローバル・エネルギー・ガバナンスの次のレベルへの引き上げ」(6日午後)
ア アソシエーションの現状及び次のステップ,信頼でき安価でクリーンなエネルギーを確保するための協力の拡大,明日に向けたIEAビジョンの構築等について議論が行われました。
イ 若宮副大臣から,日本は,アソシエーションの枠組を通じ,非メンバー国との協力が更に深まることを期待している旨述べるとともに,アソシエーションの先を求める国のために,最終的なIEAメンバーシップへの潜在的な道筋となる「戦略的パートナーシップ」を発展させることが重要である旨表明しました。
3 その他
若宮外務副大臣は,今次会合中,ビロルIEA事務局長,クラック米国務次官,サハイ・インド電力省次官,トレンブレイ・カナダ天然資源省次官,タン・シンガポール外務担当兼貿易産業担当上級政務次官と会談しました。
(1)若宮副大臣とビロルIEA事務局長との会談


5日,若宮副大臣は,今次閣僚理事会に先立ち,ファティ・ビロルIEA事務局長との会談を行いました。若宮副大臣からは,現代化に向けたIEAの取組を評価するとともに,今次会合の最大の成果は,インドとの間で「戦略的パートナーシップ」立ち上げに向けた協議開始が合意されたことであり,ビロル事務局長のリーダーシップを高く評価する旨述べました。これに対し,ビロル事務局長からは,我が国のIEAへの支援・協力に対する高い評価が表明されました。
(2)若宮副大臣とクラック米国務次官との意見交換

5日,若宮副大臣は,キース・クラック米国務次官と意見交換を行いました。若宮副大臣からは,IEAが国際エネルギー協力において中核的な役割を果たしていくにあたり,インドを含むアソシエーション参加国との中長期的な関係強化が重要であり,米国とも緊密に連携していきたい旨を述べました。また,双方は,日米間で連携し,自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の下で更なる協力を進めていく旨を確認しました。
(3)若宮副大臣とサハイ・インド電力省次官との意見交換

6日,若宮副大臣は,サンジーブ・ナンダン・サハイ・インド電力省次官と意見交換を行いました。若宮副大臣からは,安倍総理とモディ首相の個人的信頼関係の下,日印関係が飛躍的に拡大していることを喜ばしく思う旨述べるともに,今次会合でインドとIEAとの間で「戦略的パートナーシップ」の立ち上げに向けた協議開始が合意されたことは画期的なことであり,IEAを通じた国際エネルギー協力を深化させていきたい旨述べました。これに対し,サハイ次官からは,IEAにおけるインドとの協力に対する謝意とともに,日印エネルギー協力の強化への期待が表明されました。
(4)若宮副大臣とトレンブレイ・カナダ天然資源省次官との会談

6日,若宮副大臣は,トレンブレイ・カナダ天然資源省次官と会談を行いました。若宮副大臣からは,11月20日の第二次トルドー政権発足に祝意を表すとともに,互恵的な日加間のエネルギー協力の進展を歓迎する旨述べました。これに対し,トレンブレイ次官からは,日本は,エネルギー分野での協力を含めカナダの重要なパートナーである旨発言がありました。
(5)若宮副大臣とタン・シンガポール外務担当兼貿易産業担当上級政務次官との会談

6日,若宮副大臣は,タン・ウーメン・シンガポール外務担当兼貿易産業担当上級政務次官と会談を行いました。若宮副大臣からは,IEAとシンガポールとの間で,クリーンエネルギー分野を中心に協力が進展していることを歓迎しつつ,アソシエーションの枠組みの下,実質的な協力が深化することを期待する旨述べました。これに対し,タン上級政務次官からは,IEAが掲げる全ての燃料及び水素を含むクリーンエネルギーの推進に賛同する旨発言がありました。また,両者は南シナ海問題や北朝鮮問題,経済連携についても意見交換を行いました。