自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)

平成26年11月28日

 嶋正和株式会社ロジスティック代表取締役の講演「EPAビジネス戦略の実際」の概要は以下のとおり。

 政府がEPA交渉を積極的に推進する中,企業がEPAをビジネス戦略としてどのように活用すれば良いかについて説明する。

 株式会社ロジスティックは,企業のSCM(サプライチェーン・マネジメント)を最適にすることをミッションとしたコンサルティング・ファームであり,EPA活用コンサルティング事業を行っている。

 EPAは,企業が海外戦略を考える上で活用が必須であり,その適用エリアは米国,EU,中国へと今後広がっていく。すでに,EPAを活用する企業と活用していない企業の競争力格差が生まれつつある一方で,早くからEPAの活用を進めている企業は,海外間EPAを積極的に活用し,EPA適用を見越した部材調達・商品製造を行うなど,更に先んじた戦略をとっている。

 企業のEPAを活用は,4つのステップに分けて考えることができる。第1ステップとして単にEPAを使うという観点では,日本のEPAは各EPAのフォーマットを国がそろえる努力をしてきたため,類似したものとなっており,商工会議所,書籍及びインターネット上から多くの情報が入手できるなど,大変使いやすい環境にある。他方で,巨大な金額が動く国家間の協定であり,その対応を企業の担当者に丸投げすることは大きなリスクを伴うため,実際には第2ステップとして,組織でEPAを活用する必要がある。EPA活用に必要な特定原産地証明には一定の技術と経験が必要であり,その書類は保管義務があるため,証明のプロセスと責任部署を企業として構築することが重要となる。

 ただし,EPAの効果は輸入時の関税削減にあり,ただ活用するだけではその効果は輸入者しか享受できない。よってEPAの効果を刈り取るために,第3ステップとしてサプライチェーンに応用することが必要となる。最近では,EPAの活用ありきで部材の調達先を考え直すといったことも実際に起きている。加えて,グローバルSCMを考える際には,関税以外の税や法的側面についても検討することが不可避であり,それらを総合的して経営戦略としてのグローバルSCMを築けあげなければ大きな損失を伴うことになる。そのため実際には,この第4ステップのグローバルSCMを見据えた経営戦略の構築を念頭に置きつつ,逆の順にステップ3,2,1と下っていかなければ,EPA活用の成功は難しいと言えよう。


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