核軍縮・不拡散
第31回アジア輸出管理セミナー

2025年2月18日から20日まで、第31回アジア輸出管理セミナーが一般財団法人安全保障貿易情報センターの主催、外務省及び経済産業省の共催により開催され、32の国・地域と6の国際機関等から約170人が参加しました。
1 背景
アジア各国・地域が経済成長に伴い、生産拠点や中継貿易地として発展を続ける中、大量破壊兵器等に転用可能な物資・技術にかかる懸念国等による違法な調達活動に意図せず関わる危険性が高まっています。特に、昨今のサプライチェーンの複雑化や汎用技術の増大、厳しさを増す地域・国際情勢を背景に、輸出管理を含む不拡散の重要性が増しています。本セミナーはこうした状況を踏まえ、アジア各国・地域の輸出管理担当者の認識向上と能力構築を図り、我が国の安全保障にも直結するアジアの不拡散体制を強化することを目的に平成5年から開催されています。
2 概要
(1)開会挨拶
冒頭、英利アルフィヤ外務大臣政務官から、貿易量の増加やサプライチェーンの複雑化、北朝鮮の核・ミサイル開発、ロシアによるウクライナ侵略及びテロの懸念をはじめとする厳しい地域・国際情勢に加え、新興技術などの科学技術の急速な発展に伴う拡散リスクの高まりを指摘しました。このような情勢を踏まえ、各国・地域による適切な輸出管理の実施が不可欠となる中、本セミナーの重要性がこれまでになく高まっていることを強調しました。また、輸出管理が、拡散防止だけでなく、貿易・投資相手国の信頼を醸成すること、また、貿易や投資を阻害するのではなく、むしろ更なる経済成長のための良好な環境作りに貢献することを強調した上で、国際の平和及び安定と更なる経済発展のため、不拡散コミュニティ全体で取り組んでいくことを呼びかけました(挨拶全文(英語))。
(2)輸出管理規則の最新情報(アジア以外)
我が国、EU、英国及びカナダから、近年の技術発展や国際情勢の変化に対応するための輸出管理や制裁の制度改定や直近の課題について説明がありました。また、産業界との関与を強化するために何が有効かなど、輸出管理の様々な課題に対する各国政府の取組について意見が交わされました。
(3)輸出管理規則の最新情報(アジア)
タイ、シンガポール、バングラデシュ、香港、ラオス、カンボジア、中国、ベトナム及びパキスタンから最新の輸出管理の取組について紹介がありました。国連安保理決議第1540号を履行するための制度、輸出管理制度の導入や運用強化に向けた取組などについて説明がありました。質疑応答では、輸出管理当局の体制や、輸出審査の状況など基礎的な課題のほか、技術移転、新興技術、拡散金融対策など輸出管理の新しい課題についても言及がありました。
(4)懸念国・地域による不正な調達
専門家から、懸念主体による調達活動の多様化、輸出管理当局間の連携強化、大学や企業における技術流出対策強化などの課題について発表が行われました。また、我が国から、国連安保理決議に違反する北朝鮮による不正調達の実態及び調達ネットワークの具体的な事例も紹介されました。
(5)無形技術移転
豪州、我が国、ノルウェー及びマレーシアから、大学や研究機関における無形技術移転の管理に向けた各国の取組として、みなし輸出規制などの法制度の改正、違反事例に関する事例研究及び政府機関によるアウトリーチ活動の紹介がありました。
(6)輸出審査
ドイツ、オランダ、我が国、英国、シンガポール及びインドから、輸出審査制度・方針・手続、省庁間協力及びベスト・プラクティスについて紹介がありました。
(7)国際機関の発表
国連軍縮部及び政治・平和構築局から、国連安保理決議第1540号及び第2231号に関する最新の取組について発表が行われました。また、弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範から、取組が紹介されました。
(8)国際輸出管理レジームの発表
原子力供給国グループ、オーストラリア・グループ及びワッセナー・アレンジメントから、各国際輸出管理レジームの取組が紹介されました。
(9)法執行・遵守
フィリピン、韓国、カナダ及び豪州から、法執行や遵守に関する取組として、罰則規定や罰則軽減措置、産業界へのアウトリーチ、法執行に関する事例研究、省庁間協力などについて説明と質疑応答が行われました。
3 参加国・地域・国際機関等
(1)アジア(16か国・地域)
我が国、バングラデシュ、カンボジア、中国、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、パキスタン、フィリピン、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、香港及び台湾
(2)アジア域外(16か国・地域)
豪州、カナダ、チェコ、エストニア、EU、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、オランダ、ノルウェー、スペイン、ウクライナ、アラブ首長国連邦、英国及び米国
(3)国際機関等(6団体)

国連軍縮部、国連政治・平和構築局、弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範、オーストラリア・グループ、原子力供給国グループ及びワッセナー・アレンジメント