核軍縮・不拡散
グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長の訪日(結果)
ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長(H.E. Mr. Rafael Mariano Grossi, Director General of the International Atomic Energy Agency)は、3月12日から14日まで、外務省賓客として訪日しました。
グロッシー事務局長は、日本滞在中に、岸田総理大臣への表敬、上川外務大臣との会談をはじめ、我が国政府要人との会談等を行ったほか、東京電力福島第一原子力発電所の視察を含む福島訪問や日本の大学等の民間組織との意見交換・講演を行い、ALPS処理水の海洋放出や原子力の平和的利用の促進、核不拡散における日本とIAEAの協力強化に取り組みました。概要は以下のとおりです。
1 政府関係者との会談
(1)岸田総理大臣表敬 (3月14日)
(3)関係閣僚等との会談
伊藤環境大臣との会談 (3月12日)
齋藤経済産業大臣との会談 (3月12日)
2 福島訪問
3月13日、グロッシー事務局長は、昨年8月のALPS処理水の海洋放出開始後初めて東京電力福島第一原子力発電所を訪問し、ALPS処理水の海洋放出設備を視察したほか、東電関係者と意見交換を行いました。同視察中、グロッシー事務局長からは、これまでALPS処理水の海洋放出が適切な管理の下安全に行われてきている旨発言したほか、ALPS処理水の「最後の一滴」が放出されるまでIAEA関与を継続するというコミットメントを再確認した旨発言しました。
また、同日には、福島県内において廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会に出席し、地元参加者と意見交換を行ったほか、地元の高校生を対象とした講演会を実施しました。
3 原子力の平和的利用の促進に向けた日・IAEA協力の強化
(1)東京大学での講演会
グロッシー事務局長は、東京大学にて講演を行い、原子力の軍事的利用の危険性に触れるとともに、医療やエネルギー分野などにおける原子力の平和的利用の優れた点に触れ、平和的利用の促進が重要であることにつき紹介しました。また、それらについて、参加した学生との間で活発な質疑応答が行われました。
(2)「Rays of Hope」にかかる調印式
グロッシー事務局長は、福島県立医科大学にて、放射線を用いたがん治療の能力強化を目的としたIAEAのイニシアティブである「Rays of Hope」に関する調印式を行いました。同調印式では、一般財団法人温知会から「Rays of Hope」に対する10万ユーロの寄付が発表されたほか、日本の16の国内医療機関から成るネットワークが「Rays of Hope」に協力する「アンカーセンター」として登録されたことが発表されました。
(3)原子力サプライチェーンシンポジウムでの講演
グロッシー事務局長は、第2回原子力サプライチェーンシンポジウムにて開会挨拶を行い、原子力の平和的利用が様々な地球規模課題の解決に果たす役割について言及しつつ、同分野における技術開発や人材育成の重要性、日本の民間組織とIAEAの協力強化について紹介しました。
4 フォーリン・プレスセンターでの記者会見(3月14日)
グロッシー事務局長は、フォーリン・プレスセンターにて、国内外のメディアに対し、今次訪日における日本政府関係者との会談や東電福島第一原発の視察を含めた訪日の成果について説明し、その後、質疑応答を行いました。
IAEAは、原子力の平和的利用を促進することを核不拡散と並ぶIAEAの二大目的の一つとしており、IAEAが有する原子力科学・技術にかかる、知識や経験、ネットワーク等を活用し、その加盟国に対して技術協力を実施し、国際社会における原子力の平和的利用の促進と、この活動を通じた加盟国の社会・経済の発展に取り組んでいます。原子力科学・技術は、原子力発電分野に加えて、保健・医療、食糧・農業、水・環境等、様々な分野に応用されており、IAEAは、これらの原子力技術の利用やその安全性の向上に向けて、専門家の派遣や研修生の受入れ、機材供与、情報提供等を行っています。
原子力の平和的利用は、核兵器不拡散条約(NPT)において、締約国の「奪い得ない権利」と規定され、同条約において軍縮、核不拡散に並ぶ3本柱の一つであり、原子力の平和的利用の促進にかかるIAEAの活動は、国際的な社会・経済の発展に資するだけでなく、NPTに基づく核軍縮・不拡散にかかる国際社会の努力にも貢献するものです。原子力の平和的利用は、地球規模課題の解決やSDGsの達成に資するものとして、近年ますます注目が高まっています。