核軍縮・不拡散

平成29年2月24日
平成29年2月21日から23日まで東京において,第24回アジア輸出管理セミナーが,一般財団法人安全保障貿易情報センター(CISTEC)の主催,外務省及び経済産業省の共催により開催され,45の国・地域・国際機関等から約190人が参加しました。

1 セミナー開催の背景

(1)アジア諸国・地域,特にASEAN諸国においては,経済発展に伴い,大量破壊兵器の開発に転用可能な物資・技術の生産能力を獲得してきていることに加え,第三国への中継貿易地として発展を遂げているところもあり,これらの国・地域が拡散者による違法な調達活動に意図せずして関わる危険性が高まっています。

(2)本セミナーは,このような状況を踏まえ,我が国の安全保障及び経済活動上重要なアジア各国・地域の輸出管理担当者の輸出管理に関する共通認識を醸成し,輸出管理能力を強化することにより,アジア地域及び国際的な不拡散の取組を促進することを目的として開催されました。

2 今次セミナーの概要

(1)開会挨拶

冒頭,武井俊輔外務大臣政務官が挨拶し,北朝鮮の核・ミサイル能力の増強がアジアのみならず国際的な不拡散体制への新たな段階の脅威となる中,大量破壊兵器等の不拡散・輸出管理強化に向けた取組の重要性は一層高まっていると述べました。

(2)安全保障貿易管理を巡る環境の変化

北朝鮮による核・ミサイル開発やテロリズムの脅威,高度化された民生技術の軍事利用,調達活動の多様化等の環境の変化を背景に,安全保障貿易管理のあり方についてパネルディスカッション形式で議論され,出席者からは,アジア地域全体としての輸出管理強化,政府,産業界や学術界等が一体となった取組,無形技術移転管理,関係者の能力強化や情報共有の重要性等が指摘されました。

(3)テロ対策としての輸出管理強化

EUの武器輸出管理政策及び汎用品の輸出管理規範の改正案の概要,テロリストへの武器移転防止に向けた方策につき報告があり,テロ対策としての輸出管理のあり方として,機微な移転先への輸出の管理強化や無可動化された銃器の管理の強化等が提起されました。

(4)国際的な輸出管理レジームの活動

国際的な輸出管理レジーム(オーストラリア・グループ(AG),ミサイル技術管理レジーム(MTCR),原子力供給国グループ(NSG),ワッセナー・アレンジメント(WA))の代表が,それぞれのレジームの活動や課題を紹介しました。

(5)国連の活動

国連安全保障理事会決議第1540号(1540決議)委員会専門家,国連北朝鮮制裁委員会専門家パネル委員,国連軍縮研究所研究員から,それぞれ,1540決議の包括的レビューの結果明らかとなったアジア地域における同決議の履行状況,新たな北朝鮮制裁決議(安保理決議第2321号)に基づく各国の義務内容,最終需要者証明書の重要性等につき報告が行われました。

(6)アジアにおける輸出管理制度

アジア諸国の輸出管理制度の現状評価,安全保障貿易管理の導入前後でのハイテク製品の貿易額の変化を示す統計が報告されたほか,タイ,中国,フィリピンから自国の輸出管理制度の強化に向けた取組の現状につき報告が行われました。

(7)産業界・学術界へのアウトリーチ

スイスから企業の輸出管理内部規程整備に向けた取組や産業界へのアウトリーチにつき報告が行われるとともに,株式会社ジェイテクト及び名古屋大学から,それぞれの輸出管理の取組の優良事例が紹介されました。

(8)その他のトピック

オランダ及びシンガポールから通過管理の現状,米国及び韓国からキャッチオール規制の現状につき報告が行われました。

3 参加国・地域・機関

(1)アジア(19国・地域)

バングラデシュ,カンボジア,中国,香港,インド,インドネシア,韓国,ラオス,マレーシア,モンゴル,ミャンマー,パキスタン,フィリピン,シンガポール,スリランカ,台湾,タイ,ベトナム,日本

(2)アジア以外(13国・地域)

オーストラリア,カナダ,欧州連合,フランス,ドイツ,カザフスタン,メキシコ,オランダ,スイス,トルコ,アラブ首長国連邦,英,米

(3)国際輸出管理レジーム(4レジーム)

オーストラリア・グループ(AG),ミサイル技術管理レジーム(MTCR),原子力供給国グループ(NSG),ワッセナー・アレンジメント(WA)

(4)国際機関,大学等(9機関等)

国連安全保障理事会決議第1540号委員会専門家グループ,国連北朝鮮制裁委員会専門家パネル,国連軍縮研究所,キングス・カレッジ・ロンドン,ジョージア大学,ニューヨーク州立大学,名古屋大学,株式会社ジェイテクト,グローバル・トレード・セキュリティ・コンサルティング

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