原子力の平和的利用
安倍総理大臣の米国核セキュリティ・サミット出席
平成28年4月2日



3月31日~4月1日,米国(ワシントン)において核セキュリティ・サミットが開催され,我が国から安倍総理が出席したところ,概要と評価は以下のとおり。
1 ワーキング・ディナー(31日夜)
(1)「核セキュリティ脅威の認識」をテーマに意見交換が行われ,昨今の頻繁なテロ事件に代表される国際テロ情勢を踏まえ,改めて核テロの脅威が現実のものとならないよう,各国が連携して核セキュリティの強化に努めるべきであることが確認された。
(2)安倍総理からは,ブリュッセルを始めとする昨今のテロ事件に言及し,全世界の国々が一致団結し,断固としてテロと戦っていくべきであること,また,北朝鮮に関し核実験と弾道ミサイル発射を強行し,挑発的な言動を繰り返すことは看過できず,日本は国際社会と協調し,先般採択された安保理決議と我が国独自の措置を,厳格に履行していく旨述べた。また,サイバー攻撃等の新たな脅威に対する国内の取組を紹介した。
(2)安倍総理からは,ブリュッセルを始めとする昨今のテロ事件に言及し,全世界の国々が一致団結し,断固としてテロと戦っていくべきであること,また,北朝鮮に関し核実験と弾道ミサイル発射を強行し,挑発的な言動を繰り返すことは看過できず,日本は国際社会と協調し,先般採択された安保理決議と我が国独自の措置を,厳格に履行していく旨述べた。また,サイバー攻撃等の新たな脅威に対する国内の取組を紹介した。
2 オープニング・セッション(1日午前)
「核セキュリティ向上のための国家の取組」をテーマに,各国の取組につき活発な議論が行われた。安倍総理は基調発言者として概要以下のとおり発言。
- 日本における核セキュリティは、福島原発事故と密接不可分。震災から5周年を迎え、全世界からの支援に改めて感謝。
- 福島事故の経験を踏まえ、世界で最も厳しいレベルの新規制基準を作成。事故の教訓を世界と共有し、原発の安全性、事故対策の知見を世界に広げていくことが日本の使命。人材育成、各国への支援、安全基準に関する国際協力等を積極的に行っていく。
- 原子力の平和的利用を将来に亘って継続していくためには完全な透明性の確保が必要。日本は一貫して民生用原子力の透明性の向上について世界をリード。
- 核物質の最小化・適正管理に関し、日本は「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を実践。
- 前回サミットで約束した高速炉臨界実験装置(FCA)の核燃料の全量撤去を、日米で緊密に連携し完了。さらに、京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)を低濃縮化し、高濃縮ウラン燃料の全量撤去を行うことを決定。世界の核セキュリティ強化への大きな貢献となるこれらの取組を,日米共同声明の形にまとめ、国際社会に対するメッセージとして発出。
3 ワーキング・ランチ(1日昼)
「核セキュリティ強化のための国際的及び組織的な取組」をテーマに,各国からは,核セキュリティ・サミット終了後のIAEAの国際調整における中心的役割に対する高い期待が述べられた。安倍総理からは,原子力安全や透明性の向上に取り組むIAEAの重要性は一層高まっており,日本はIAEAの核セキュリティ強化に向けた活動が天野事務局長の指導の下で一層発展するよう協力する点を強調した。また,日本のこれまでの核セキュリティ分野での人材育成やG7伊勢志摩サミットや東京オリンピック・パラリンピック等の国際行事を見据えた核テロ防止策の強化について言及した。
4 クロージング・セッション(1日午後)
放射性物質の盗難への対応に関して,具体的なシナリオに基づいた議論が行われたとともに,ISIL等のテロリストの現実の脅威にいかに対応していくかに関し,活発な協議が行われた。クロージング・セッションでは,首脳コミュニケ,及び今次サミット終了後も引き続き核セキュリティ強化に取り組むための,国連,IAEA等の国際機関・枠組みにおける5つの行動計画が採択された。
5 評価
(1)核セキュリティ・サミット全体の評価
今回が最後となる核セキュリティ・サミットでは,53ヶ国及び3国際機関から約40名の首脳レベルが参加し,ベルギー等におけるテロ事件を踏まえ,ISILを始めとする国際テロ組織による核テロの脅威は,国際社会全体として取り組むべき喫緊の課題であるとの認識を共有し,サミット後,各国が連携して具体的措置を取る必要性を再確認した。これまで4回の核セキュリティ・サミットを通じて,核テロへの認識向上に加え,核物質防護条約改正については,発効要件である現締約国の3分の2である102か国の締結が得られ,発効する見通しとなったほか,各国における核物質の最小化や防護強化を含め,核セキュリティ強化に向けた世界の取組が促進された。
(2)我が国の貢献・イニシアティブ
核物質の最小化と適正管理に関し,FCAの核燃料の全量撤去を完了し,さらにKUCAの低濃縮化を通じた高濃縮ウラン燃料の撤去を決定したことは,議長国の米国を含む各国から評価された。G7伊勢志摩サミットや東京オリンピック・パラリンピック等を見据えた核テロ対策の推進を始めとする国内取組は,我が国の世界の核セキュリティ強化に対する具体的貢献を示すことができた。また,日本が原発事故から得られた教訓を踏まえ,世界の原子力安全に積極的に貢献する意思を示すとともに,原子力の平和的利用の継続のため透明性の確保の必要性を強調した。
さらに,核セキュリティ上の秘匿性の高い情報の共有を可能にするための日米間の国際約束締結に向けた交渉開始を含む日米共同声明を発出したことは,日米核セキュリティ分野における日米間の協力関係を確認するとともに,世界の核セキュリティ強化に対する,日米のリーダーシップを示した。