核軍縮・不拡散

平成27年12月10日

 平成27年12月2~3日,ウィーンにおいてワッセナー・アレンジメント(WA)(注1)の第21回総会が開催されたところ,同総会の後に発出された議長声明の主要点は以下のとおり。

1 総論

 WAは,2015年においても,通常兵器及び関連汎用品・技術の移転における透明性とより大きな責任を促進することによって国際及び地域の安全と安定に貢献する努力を継続してきた。

2 2015年の取組

(1)規制リストの改正等

 WA参加国は,好ましくない輸出の探知及び拒否を確保するため,また,既存の規制リストを更に改訂し,審査当局や輸出者にとって一層わかりやすくかつ使いやすいものとするために取り組んできた。本年は,WAの規制品目リストを引き続き妥当なものとするために行っている同リストの包括的かつ計画的な見直しに関する進展があった。
 また,WA参加国は,爆発物の追加を始めとする多くの分野における新たな輸出規制に合意した。生物剤の防護装備及び探知装置,軍用ヘルメット用の電子機器,アナログ・デジタル変換器に関する規制を明確化した。また,いくつかのタイプの工作機械及びコンピュータ,自動車生産や家庭用医療機器等の消費産業に用いられる技術,太陽光発電用の反射鏡,電池,水中用カメラ,情報セキュリティ用の装置に関する規制を緩和した。

(2)新たな文書の採択

 WA参加国は,新たに「通過又は積替えに関するベストプラクティス・ガイドライン」を採択した。また,WA参加国は,通常兵器の移転に関する国際的な報告義務遵守のためにすべての参加国を支援する意図をもって,「報告義務の効果的な遵守のための要素」の文書を発出した。

(3)地域情勢等に係る情報交換の実施

 WA参加国は,武器及び関連汎用品に係る情報交換を実施した。また,WA参加国は,紛争地域を含む特定の懸念のある地域への不法な武器の流入に関連したリスクを評価した。
 また,WA参加国は,地域及び国際の安定と安全を確保するために,不安定化をもたらす通常兵器及び弾薬の蓄積防止に向けた協力を継続することの重要性を強調した。

(4)テロとの闘いのための輸出管理の強化

 WA参加国は,輸出管理をさらに強化すること,テロリストによる武器取引並びに通常兵器(特に小型武器及び軽兵器)及び関連汎用品・技術の入手を防止するために協力を深化させることの重要性を強調した。

(5)国内的な輸出管理の実施の強化に向けた議論

 WA参加国は,武器貿易のリスク評価,再輸出,仲介,無形技術移転の規制及びキャッチオール規制といった国内的な輸出管理の実施を強化する方策に関する議論などを行った。また,産業界や学術界の関与及び輸出管理内部規程に関する情報の交換も実施した。

(6)原子力供給国グループ(NSG)との連携

 WA参加国は,NSGとの間で規制品目リストに関する非公式の連携を継続した。

(7)2016年の機能見直しの枠組みの採択

 WA参加国は,2016年に実施される5回目のWAの機能見直しに係る取組の枠組みを採択した。これは,WAの全体的な機能の見直しと評価を行うとともに,WAの有効性と効率性を向上させるための広範な作業である。

3 2016年の取組

(1)20周年記念関連事業

 WAは,来年で設立20年を迎え,同年12月に開催される総会の機会に特別記念行事を開催する。また,より広範なWA非参加国に情報を共有するため,同年6月にウィーンにおいて技術的側面に焦点を当てたワークショップを開催する。

(2)アウトリーチ活動の継続

 WAは,WA非参加国がWAの基準を自主的に遵守することを慫慂するため,アウトリーチ活動を継続する。当該アウトリーチ活動とは,特に,WAのベスト・プラクティスに関する文書の普及を促進する多数国に向けたブリーフ,二国間の対話(アウトリーチ訪問を通じてのものを含む)及び産業界や学術界との連携を通じた活動である。また,WAは,関連する活動に従事する他の適切な地域的・国際的な機関との連携を継続する。WA事務局は,WAの目的に沿った形で,武器貿易条約(ATT)に関する国際的な協力にWAが貢献するための機会の模索を継続する。

(3)新たな課題への取組

 WAは,国際的な環境の進化を考慮しつつ,技術,研究及びイノベーションの進歩に対応していくため,懸念のある新興技術を含めた新たな課題への取組について更なる作業を実施する。

(4)次回総会の予定等

 次回のWA総会は,2016年12月にウィーンで開催される。フィンランドが来年の総会議長を務めることとなり,アヌ・ラーマネン大使を議長に任命した。

4 主要関連文書

 規制リストやベストプラクティス・ガイドラインを含むWAの主な文書は,今般バージョンアップされたWAのウェブサイト別ウィンドウで開くに掲載されている。

 (注1)WAは,通常兵器及び関連汎用品・技術の過度の蓄積を防止することによって,地域及び国際社会の安全と安定に寄与することを目的とする国際的な輸出管理レジーム。

 (注2)同総会にて発出された対外発表は,WAのウェブサイト(PDF)に掲載されている。


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