核軍縮・不拡散

平成28年10月6日
 9月26日から30日,ウィーンにおいて国際原子力機関(IAEA)第60回総会が開催されたところ,概要は以下のとおり。

1 石原宏高内閣府副大臣の出席

  • (1)総会には,石原内閣府副大臣が我が国政府代表として出席した。同副大臣は,初日に一般討論演説(和文(PDF)別ウィンドウで開く英文(PDF)別ウィンドウで開く)を行い,冒頭,天野事務局長の力強いリーダーシップを評価しつつ,IAEA全加盟国に対し,天野事務局長の再選支持を呼びかけた。
     また,日本の取組として,ア 日本の原子力政策,イ 福島第一原発事故への対応(廃炉・汚染水対策や環境回復の着実な進展の説明,及び日本産食品の安全確保の取組や科学的根拠に基づく対応の呼びかけ),ウ 原子力安全強化(国際協力の重要性の強調と貢献への意志の表明),エ グローバル課題(天野事務局長が掲げる「平和と開発のための原子力」への支持,及びIAEAによる技術協力への日本の貢献),オ 核セキュリティの強化(IAEAの中心的役割への支持,及び日本の貢献),カ 核不拡散体制強化のための取組(アジア地域の不拡散強化に向けた日本の取組,及び北朝鮮の核問題やイラン核合意に対するIAEAの対応の支持)等を紹介しつつ,原子力の平和的利用の促進及び核不拡散の強化に一層貢献していく決意を改めて表明した。
  • (2)また,石原副大臣は,天野IAEA事務局長,モニーツ米国エネルギー長官,及びヴェルベールド仏原子力・代替エネルギー庁長官との会談を行った。

2 天野IAEA事務局長の演説

 天野事務局長は,総会初日冒頭の演説において,過去60年間,IAEAは国際の平和と安全に大きく貢献したとしつつ,持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた貢献,深刻な懸念である北朝鮮の核問題への対応,イランの核合意の監視・検証の取組,原子力発電を行っている国に対する安全や核セキュリティ分野における支援の実施,原子力安全や核セキュリティの強化のための取組等について説明した。
 また,こうした取組のモメンタムを維持することが重要であり,加盟国から事務局長としての信任が得られれば,喜んで継続するとしつつ,理事会議長に対して,次の任期を務める用意があることを通知した旨述べた。

3 主要な議題 

(1)北朝鮮の核問題

 本年1月及び9月に行われたものを含め,北朝鮮による5回の核実験を最も強い言葉で非難するとともに,北朝鮮の核兵器保有に対する国際社会の断固とした反対を改めて表明し,北朝鮮に対し,核戦力増強政策を放棄するよう強く要求することなどを内容とする北朝鮮の核問題に関する決議(「IAEAと北朝鮮との間のNPT保障措置協定の実施」に関する決議)がコンセンサスで採択された。

(2)中東におけるIAEA保障措置の適用

 全ての中東域内国に対してNPTへの加入及びIAEA保障措置に関連する国際的な義務の遵守を求めるとともに,全ての関係国に対して域内の非核兵器地帯設立に向けた取組を求めること等を内容とする決議が賛成多数で採択された(決議全体への投票は,賛成122(我が国他),反対0,棄権6。全ての域内国にNPTへの加入を求めるパラ2は分割投票にかけられ,賛成119(我が国他),反対1,棄権5。)。

(3)イスラエルの核能力

 イスラエルの核能力に関し,例年,アラブ諸国が,イスラエルに対しNPTへの加入を求めるとともに,全ての核施設をIAEA保障措置の下に置くことを呼びかける内容の決議案を提出しているが,本年,アラブ諸国は,本件決議案の提出を見合わせた。ただし,議題は維持し,その下で一部の国が発言した。

(4)保障措置の強化・効率化

 効率的な保障措置の必要性,各保障措置協定締結国による協定上の義務の完全な履行の重要性を強調するとともに,新たに,各国に対し,国内又は地域計量管理制度の維持・強化を奨励すること,事務局長から理事会に対し,国レベル・アプローチの適用を通じて得られた知見を報告すること等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。

(5)原子力安全

 原子力発電及び放射線技術の導入を検討している国の増加を踏まえ,原子力安全の強化のための国際協力の重要性を認識すること,IAEA原子力安全行動計画,IAEA福島報告書及び原子力安全に関するウィーン宣言の実施から得た教訓を新しい戦略とIAEAの事業プログラムの策定に活かすよう事務局に要請すること,原子力安全関連条約の締結を加盟国に要請すること,及び原子力損害賠償責任に関する国際的な制度の構築に向けた取組を加盟国に求めること等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。

(6)核セキュリティ

 核セキュリティにおけるIAEAの中心的及び調整的な役割を確認しつつ,加盟国に対し,核物質及び原子力施設の高いレベルでの核セキュリティの維持及び核セキュリティ強化のための国際的な取組に対する支援提供の検討を求めるとともに,新たに,IAEAに対し,核セキュリティ上のリスクに対処するための技術的能力を高めることを奨励し,事務局に対し,核セキュリティ文化に関する国際ワークショップを開催することを奨励すること等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。

(7)技術協力,原子力応用

 技術協力に関しては,原子力の平和的利用のための活動強化の必要性,IAEA技術協力プロジェクトと持続可能な開発目標(SDGs)の関連付けに重きを置くよう事務局に求めること等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。また,原子力技術の応用に関しては,不妊虫放飼技術(SIT),アフリカ連合のツェツェ蝿及び眠り病撲滅キャンペーン(AU-PATTEC)の支援,小型及び中型原子炉を用いた経済的な飲料水の生産,食糧・農業分野における加盟国支援の強化,及びサイバースドルフ原子力応用研究所の改修におけるIAEAの活動の重要性の確認等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。

(8)新規加盟国

 セントルシア, セントビンセント及びグレナディーン諸島,並びにガンビア・イスラム共和国の新規加盟が承認された。



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