核軍縮・不拡散

平成29年10月6日

 9月18日から22日まで,ウィーンにおいて国際原子力機関(IAEA)第61回総会が開催されたところ,概要は以下のとおり。

1 松山政司 内閣府特命担当大臣の出席

  • (1)総会には,松山内閣府特命担当大臣が我が国政府代表として出席し,初日に一般討論演説(和文(PDF)別ウィンドウで開く英文(PDF)別ウィンドウで開く)を行った。総会の冒頭に天野事務局長の再任が正式に承認されたことを受け,松山大臣の演説では再任に祝意を述べると共に,北朝鮮の六度目の核実験を非難し,北朝鮮に対し,挑発行動の自制,安保理決議や六者会合共同声明の遵守,NPTとIAEA保障措置の履行を強く求めた。
    また,日本の取組として,ア 日本の原子力政策(「基本的考え方」等の策定,プルサーマルの推進等を通じたプルトニウムの着実な利用,プルトニウム管理状況の公表等を通じた透明性や信頼性向上の取組,核燃料サイクルの推進),イ 福島第一原発後の取組(廃炉・汚染水対策や環境回復の着実な進展の説明及び日本産食品の安全確保の取組の紹介と輸入規制の撤廃の呼びかけ),ウ 原子力安全強化(廃棄物合同条約レビュー会合への参加や福島IAEA緊急時対応能力研修センターの活動の支援,IRRSフォローアップミッションをはじめとするIAEAピアレビューミッションの受入れ),エ グローバル課題(天野事務局長が掲げる「平和と開発のための原子力」への支持,及びIAEAによる技術協力への日本の貢献),オ 核セキュリティの強化(IAEAの中心的役割への支持及び日本の貢献,IPPASフォローアップミッションの受入れ),カ 核不拡散体制強化のための取組(アジア地域の不拡散強化に向けた日本の取組及び北朝鮮の核問題に関するIAEAの対応の支持)等を紹介した上で,イランの核合意への我が国の支持とイラン向け保障措置トレーニング実施について述べ,原子力の平和的利用の促進及び核不拡散の強化に一層貢献していく決意を改めて表明した。
  • (2)また,松山大臣は,天野IAEA事務局長,ペリー米国エネルギー省長官,及びヴェルヴェルド仏原子力・代替エネルギー庁長官との会談を行った。

2 天野IAEA事務局長の演説

 総会初日冒頭の演説において,過去60年間に亘る国際の平和と安全へのIAEAの貢献に言及した上で,9月3日の北朝鮮による6回目の核実験を極めて遺憾とし,北朝鮮が全ての関連の国連安保理決議とIAEA決議の下での自らの義務を完全に果たすよう呼びかけるとともに,IAEAが北朝鮮での活動再開に向けた準備態勢を維持している旨述べた。また,イランの核合意の監視・検証への取組,技術協力を通じた各国のSDGs達成への引き続きの支援,温暖化ガス削減とエネルギー安全保障の改善における原子力エネルギーの重要な役割や,原子力技術の活用における安全と核セキュリティの高い重要性などについて説明した。

3 主要な議題

(1)北朝鮮の核問題

 本年9月3日に行われたものを含め,北朝鮮による6回の核実験を最も強い言葉で非難するとともに,北朝鮮の核兵器保有に対する国際社会の断固とした反対を改めて表明し,北朝鮮に対し,核戦力増強政策を放棄するよう強く要求することなどを内容とする北朝鮮の核問題に関する決議(「IAEAと北朝鮮との間のNPT保障措置協定の実施」に関する決議)がコンセンサスで採択された。

(2)中東におけるIAEA保障措置の適用

 全ての中東域内国に対してNPTへの加入及びIAEA保障措置に関連する国際的な義務の遵守を求めるとともに,全ての関係国に対して域内の非核兵器地帯設立に向けた取組を求めること等を内容とする決議が賛成多数で採択された(決議全体への投票は,賛成123(我が国他),反対0,棄権5。全ての域内国にNPTへの加入を求めるパラ2は分割投票にかけられ,賛成123(我が国他),反対1,棄権6。)。

(3)保障措置の強化・効率化

 効果的・効率的な保障措置の必要性,各保障措置協定締結国による協定上の義務の完全な履行の重要性を強調するとともに,事務局長から理事会に対し,国レベル・アプローチの適用を通じて得られた知見を報告すること等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。

(4)原子力安全

 原子力発電及び放射線技術の導入を検討している国の増加を踏まえ,原子力安全分野における加盟国の取組及び基盤の維持・向上のためのIAEA及び加盟国相互の支援を奨励すること,原子力安全の強化のための国際協力の重要性を認識すること,原子力安全関連条約の締結及びその義務の履行を加盟国に要請すること,可搬型(水上浮揚型)または小型モジュール等の型式の炉に関する原子力安全の観点からの継続的な検討をIAEAに要請すること等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。

(5)核セキュリティ

 国際社会の核セキュリティ強化におけるIAEAの中心的な役割を確認しつつ,加盟国に対し,核物質及び原子力施設の高いレベルでの核セキュリティの維持及び核セキュリティ強化のためのIAEAの取組に対する支援提供の検討を求めるとともに,IAEAに対し,核セキュリティ上のリスクに対処するための技術的能力を高めることを奨励し,事務局に対し,核セキュリティ文化に関する国際ワークショップを開催することを奨励すること等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。

(6)技術協力,原子力応用

 技術協力に関しては,原子力の平和的利用分野における技術協力活動の促進や,右活動を通じた持続可能な開発目標(SDGs)の達成への取組,資源動員の強化,パートナーシップの拡大につき事務局に求めること等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。また,原子力技術の応用に関しては,水資源管理,サイバースドルフ原子力応用研究所の改修事業,原子力発電等にかかるIAEAの活動についての決議がコンセンサスで採択された。

(7)新規加盟国

 グレナダの新規加盟が承認された。



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