核軍縮・不拡散

平成27年6月30日

 2015年6月1日~5日,パースにおいて,オーストラリア・グループ(AG)(生物・化学兵器関連物資・技術の拡散防止のための国際輸出管理レジーム)の30周年記念総会が開催されたところ、同総会後に発出された議長声明の主要点は以下のとおり。

1 総論

 AG参加国は,今次総会において,輸出管理は,合法的に取引される物資が大量破壊兵器に転用されることを防止することにより,貿易を促進するものであることに言及した。拡散上機微な物資及び技術の輸入者は,当該物資及び技術が拡散者の利益のために再輸出されないとの信頼感を供給者に与えるために,輸出管理を実施する必要があることを強調した。また,輸出管理は,国連安保理決議第1540号の実施を支援するものである。

 AG参加国は,生物・化学兵器の不拡散を強化するために,特に次の措置をとることに合意した。

  • 生物・化学兵器の開発に使用され得る新興の技術に対してAGの主力を注いでいくこと。
  • 生物・化学兵器を開発する専門的な知識の獲得を試みようとしている国及び非国家主体の脅威を強調すべく,AG非参加国並びに産業界及び学界に対するアウトリーチを拡大していくこと。

 また,今次総会においては,AGへの新規参加に関する特定国の関心及び将来のAGの構成国のあり方について検討が行われた。

2 技術的な事項

 AG参加国は,AGの規制リストに掲載されている技術の移転を管理するため,各国の取組を強化していくことに合意した。また,AG参加国は,査証審査及び拡散上機微な仲介業務の管理に関する取組について,情報交換を継続していく。

 近年,輸出審査及び取締りの専門家は,生物・化学関連の機微な汎用資機材の拡散の試みを防止するために,その経験や関連情報を共有してきた。AGは,新興の技術に関連する拡散懸念について検討を行った。今次総会に参加した専門家は,AGの規制リストに掲載されている生物・化学関連品目に適用される輸出管理を改善するための取組を継続した。更新されたAG規制品目リスト及びガイドラインは,AGのウェブサイト別ウィンドウで開くで閲覧が可能である。

3 アウトリーチ

 生物・化学兵器の拡散を防止するための取組を強化するベスト・プラクティス及び手法を共有するため,AG参加国と6のAG非参加国との間で,取締りに関する机上演習を中心とした「対話」が行われた。このような「対話」がAG総会と同時に開催されたのは本年が初めてであり,同「対話」により,AG非参加国は全てのAG参加国と直接に交流することができた。

 AGは,生物・化学兵器の拡散を防止するための取組を更に促進するため,2015年から2016年においても国際的なアウトリーチ活動に関する積極的な計画を継続していくことで合意した。AGガイドラインの遵守の促進,増大する生物・化学兵器テロの脅威への対策,キャッチオール規制の必要性並びに産業界及び学界に対するアウトリーチの重要性が特に重視された。

 AG総会は,拡散の脅威に対処するため,引き続き,政府,産業界及び学界の間の理解を醸成し,協力を構築する積極的な取組を推奨した。合意された主な取組は以下のとおりである。

  • 国内の主要な産業界及び学界に対するアウトリーチに関する情報をAG参加国間で共有すること。
  • AG非参加国に対して,拡散を防止するために当該国が国内で行うアウトリーチ活動の重要性について注意を喚起すること。
  • 拡散問題への関心を高めるため,産業・学術分野の国際的な会合に対して直接に働きかけること。

 AGは,カザフスタンが,2014年の総会における決定に従い,AGガイドラインを遵守する旨を公式に通知したことを評価した。このような遵守を促進していくことは,関連品目の輸出管理に関する国際的なベスト・プラクティスの指標としてAGの規制品目リスト及びガイドラインを使用する多くのAG非参加国との相乗効果を高めるため,また,拡散者やテロリストにより活用され得る抜け穴を減らすために重要である。AGガイドラインを遵守する国に対しては,同国による国際的なベスト・プラクティスの実施を支援するため,AG参加国から幅広い情報が提供される。AG参加国は,全ての国に対し,AGガイドライン(その改訂を含む。)に従い,AG規制品目リストに掲載されている全ての品目について輸出管理を行うとの政治的なコミットメントをAG議長に対して書面により通知することを通じて,遵守を表明することを要請する。

4 国別の状況

 AGは,シリア国民に対する化学兵器の使用により,化学兵器禁止条約(CWC)の世界的な遵守及び効果的な実施を通じた全ての国による化学兵器の完全な廃絶の必要性が強調されたとの認識を確認した。AGは,2013年のシリアのCWC加入以降,同国による申告された化学兵器の廃棄に関する進捗を歓迎する。しかしながら,化学兵器を用いた攻撃は継続している。国際社会は,かかる攻撃が中止されない限り,また,シリアが化学兵器の完全かつ検証された廃棄を促進し,かつ,化学兵器禁止機関への申告に関する一切の不透明性を排除しない限り,シリアによる国連安保理決議第2118号及び同第2209号並びにCWCの義務の完全な履行を信頼しないであろう。AG総会は,北朝鮮及び中東地域を含め,シリア以外の地域における生物・化学兵器関連活動にも懸念を表明した。

5 その他

 ビショップ・オーストラリア外務大臣は,AG総会に対するスピーチにおいて,AGが生物・化学兵器の拡散の防止において果たす重要な役割を強調した。

 AG参加国は,2016年にパリで次回総会を主催するとのフランスの提案を受け入れた。


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