日本の安全保障と国際社会の平和と安定
国際原子力機関(IAEA)第58回総会の結果概要
1.山口俊一内閣府特命担当大臣の出席
- (1)9月22日から26日まで,ウィーンにおいて国際原子力機関(IAEA)第58回総会が開催され,我が国政府代表として山口俊一内閣府特命担当大臣(科学技術政策)が出席した。
- (2)山口大臣は,総会初日に一般討論演説(和文(PDF)
/英文(PDF)
)を行い,本年4月に閣議決定した第4次エネルギー基本計画について説明した。また,汚染水対策を含む東京電力福島第一原子力発電所の廃止措置等の進捗状況について説明し,来年,より一層の進展を報告できるよう,政府一丸となって取り組む決意を表明した。さらに,保障措置(不拡散),原子力安全,核セキュリティを確保しながら,原子力活動を継続していく決意を表明した。
- (3)その他,山口大臣は,天野IAEA事務局長,モニーツ米国エネルギー長官,ビゴ仏原子力・代替エネルギー庁長官との会談を行い,エネルギー基本計画の閣議決定を始め我が国の原子力政策等を説明した。
2.事務局長演説
総会初日冒頭の演説において,持続可能な発展にとっての原子力科学・技術の重要性や,エネルギー供給源としての原子力エネルギーの重要性などを強調する発言を行った。また,北朝鮮の核問題については,IAEAとして引き続き,北朝鮮の核計画の検証において不可欠な役割を果たす用意がある旨発言した。イランの核問題については,イランがIAEAとの間で合意した全ての実際的措置を適時に実施することが極めて重要である旨述べた。
3.主要な議題
(1)北朝鮮の核問題
北朝鮮による核実験を非難し,「新たな形態の核実験」の実施を考慮する旨表明した本年3月の北朝鮮による声明を重大な懸念をもって想起し,北朝鮮による核戦力建設政策につき,非核化のコミットメントに逆行するものとして懸念を持って留意し,5MW黒鉛減速炉の再稼働及びウラン濃縮施設の稼働やさらなる改良等に強い遺憾の意を表明し,すべての関連活動等の停止等を要求すること等を内容とする北朝鮮の核問題に関する決議(「IAEAと北朝鮮との間のNPT保障措置協定の実施」に関する決議)がコンセンサスで採択された。
(2)中東におけるIAEA保障措置の適用
全ての中東域内国に対してNPTへの加入及びIAEA保障措置に関連する国際的な義務の遵守を求めるとともに,全ての関係国に対して域内の非核兵器地帯設立に向けた取組を求めること等を内容とする決議が賛成多数で採択された(決議全体への投票は,賛成117(我が国他),反対0,棄権13。全ての域内国にNPTへの加入を求めるパラ2は分割投票にかけられ,賛成113(我が国他),反対1,棄権15。)。
(3)イスラエルの核能力
イスラエルの核能力に関し,核兵器の拡散が中東の安全と安定にもたらす影響について懸念を表明し,イスラエルに対してNPTに加入すること及び全ての核施設をIAEA保障措置下に置くことを求めること等を内容とする決議案をアラブ諸国が提出したが,反対多数で否決された(賛成45,反対58(我が国他),棄権27。)。
(4)保障措置の強化・効率化
効率的な保障措置の必要性,各保障措置協定締結国による協定上の義務の完全な履行の重要性を強調するとともに,本年9月に理事会においてテイク・ノート(留意)された「国レベルの保障措置概念」に関する文書を歓迎し,また同概念が既存の保障措置協定上の権利義務を超えるものではないことを確認すること等を内容とする決議が無投票で採択された。
(5)原子力安全
IAEA原子力安全行動計画を最も重要な優先事項として包括的かつ協調して実施すること及びIAEA等の国際機関によって報告された福島第一原発事故の経験と教訓を生かしていくことを事務局及び加盟国に求めるとともに,原子力損害賠償責任に関する国際的な制度の構築に向けた取組を加盟国に求めること等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。
(6)核セキュリティ
加盟国に対し,核物質及び原子力施設の高いレベルでの核セキュリティの維持及び核セキュリティ強化のための国際的な取組に対する支援提供の検討を求めること等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。
(7)技術協力,原子力応用
技術協力に関しては,原子力の平和利用のため,活動強化の必要性を強調するとともに,加盟国の原子力技術及びノウハウの移転を促進するよう事務局に求めること等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。また,原子力の応用に関しては,小中型炉を用いた飲用水の生成,サイバースドルフ原子力応用研究所の改修,アフリカ連合のツェツェ蝿及び眠り病撲滅キャンペーン(AU-PATTEC)の支援,マラリアやデング熱等の感染症媒介蚊の統制と撲滅技術の開発、食糧・農業分野における加盟国の支援強化,原子力エネルギーの導入や革新的原子力技術開発におけるIAEAの活動の重要性の確認等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。
(8)新規加盟国
コモロ,ジブチ,ガイアナ,バヌアツの新規加盟が承認された。