日本の安全保障と国際社会の平和と安定
オーストラリア・グループ(AG)総会(概要)
1 輸出管理の強化
AG参加国は,生物・化学兵器の不拡散を強化するために,特に次の措置をとることに合意した。
- 生物・化学関連品目の輸出管理に関する国際的なベスト・プラクティスの指標としてAGの規制品目リスト及びガイドラインを使用する多くのAG非参加国との相乗効果を高めるとともに,拡散者やテロリストにより活用され得る抜け穴を減らすため,より多くのAG非参加国に対してAGガイドラインを遵守するよう働きかけるとともに,AGガイドライン(その改訂を含む。)に従い,AG規制品目リストに掲載されている全ての品目について輸出管理を行うとの政治的なコミットメントを行うよう働きかける。AGガイドラインを遵守する国に対しては,同国による国際的なベスト・プラクティスの実施を支援するため,AG参加国から幅広い情報が提供され得る。
- AGの規制品目の輸出許可審査を行う際にテロリストへの移転の危険性を考慮する旨の要件をAGガイドラインに追記すること並びに生物・化学兵器テロに関するより多くの情報をAG参加国間で及びAG非参加国に対して共有することを含め,国連安保理決議第1540号に従い,生物・化学兵器テロに対抗する取組を強化する。
- 生物・化学兵器の拡散の危険性及び拡散の防止に貢献する方法に対する理解を向上させるため,産業界及び学界に対するアウトリーチを強化する。その際には,国内の産業界及び学界に対するアウトリーチのみならず,多数国間の産業及び学術関連の会合並びにAG非参加国に対するアウトリーチも対象とする。
2 シリア
AGは,シリア国民に対する化学兵器の使用が,化学兵器禁止条約(CWC)の世界的な遵守及び効果的な実施を通じた全ての国による化学兵器の完全な廃絶の必要性を強調したことを確認した。AGは,シリアのCWC加入以降における同国の化学兵器の廃棄に関する進捗を歓迎した。しかしながら,国際社会は,シリアが化学兵器の完全かつ検証された廃棄を促進し,かつ,化学兵器禁止機関(OPCW)への申告に関する一切の不透明性を排除しない限り,シリアによる国連安保理決議第2118号及びCWCの義務の完全な履行を信頼しないであろう。AG総会は,目下のシリアでの騒擾において化学剤の使用に関する継続的な報告がなされていることに懸念を表明した。AG総会は,シリアにおける化学兵器計画から得られた教訓を考慮し,不拡散のための輸出管理を更に強化するための措置について合意した。
3 AGの課題
AGは,新たな技術及び新興の技術に関連する拡散の危険性についての検討を継続した。また,AG総会に参加した専門家は,輸出管理の対象となり得る生物・化学関連品目のリストの見直しを継続した。更新されたAG規制品目リスト及びガイドラインは,AGのウェブサイトで閲覧が可能である。
輸出許可審査及び執行に関する専門家は,昨年の総会と同様に,今次総会により,生物化学関連の機微な汎用資機材の拡散の試みを防止するための経験と情報を共有することができた。今次総会の参加者は,執行に関する様々な課題への対応を評価するための机上演習を実施するとともに,AG規制品目の識別に関する包括的なハンドブックが米国の支援により作成されたことを歓迎した。AG参加国は,自国の輸出管理が生物・化学分野における合法的な貿易及び技術協力を阻害しないことを確保する決意を確認した。
AG参加国は,生物・化学兵器計画に貢献する可能性のあるAGで規制されていない品目の輸出管理(キャッチオール規制)への注目を高め,かつ,同規制の実施を特に優先するため,AGガイドラインを改訂することに合意した。また,AG参加国は,研修の実施を通じた移転を含め,AGで規制されている無形技術の移転又は無形の手段による移転を管理する国内の取組を強化することに合意した。さらに,AGは,査証審査及び拡散に関連する仲介業務の規制に関する取組についての情報共有を継続する。AG参加国は,各国による輸出管理の実施における統一性を促進するAGの「ノー・アンダーカット」政策の実施を明確にした。
4 新規参加
AGへの新規参加に正式な関心を表明している新規参加候補国について検討が行われた。
5 アウトリーチ活動の継続
AGは,生物・化学兵器の拡散を防止するための取組を更に促進するため,AGガイドラインの遵守の促進,生物・化学兵器テロの脅威,キャッチオール規制の必要性並びに産業界及び学界に対するアウトリーチの重要性を特に重視しつつ,2014年から2015年においても国際的なアウトリーチ活動に関する積極的な計画を継続していくことで合意した。
6 AG設立30周年記念総会
AG参加国は,AGの設立30周年を記念するため,2015年のAG総会を豪州のパースで開催するとの同国の提案を受け入れた。