中東

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マーリキー・イラク首相の訪日(概要と評価)

平成23年11月23日

1 概要

 11月20日(日曜日)から23日(水曜日),ヌーリー・アル=マーリキー・イラク首相は,ルアイビ石油大臣,アーミリー運輸大臣等の随員と共に,実務訪問賓客として訪日。本邦滞在中,野田佳彦内閣総理大臣と会談し,玄葉外務大臣等の表敬を受けた。

  1. (1)日イラク首脳会談及び夕食会

     22日,日イラク首脳会談,続いて野田総理主催による夕食会が開催され,共同声明(日本語骨子)日本語仮訳英文)が発表されたところ,会談のポイント以下のとおり。

    1. (ア)野田総理大臣から,イラクの民主化の進展を評価しつつ,イラクから米軍が 撤退した後も,イラクが地域の安定勢力として発展することへの期待を表明。マーリキー首相から,債務削減,円借款,自衛隊の活動を含むこれまでの日本の多大な支援に感謝の意を表明。双方は日・イラク間のパートナーシップを新たな段階に引き上げることで一致。2012年に開催する経済合同委員会において今回の合意をフォローすることとした。
    2. (イ)双方は,貿易保険枠組取決めの署名及び投資協定の原則合意等,ビジネス環境整備での多くの成果を歓迎し,イラクへの日本企業の進出拡大を進めることで一致。
    3. (ウ)双方は,エネルギー分野でも二国間協力を強化し,ガッラーフ油田,東バグダッド油田,ナーシリーヤ油田について協力と対話を促進することで一致。また,マーリキー首相より,緊急時の原油供給とLNGの安定的供給に関する申し出があり,野田総理大臣はこれに謝意を表明。
    4. (エ)野田総理大臣から,保健,通信及び石油製油所に関する4案件に,約7.5億ドル(約670億円)の新たな円借款供与に必要な措置をとることとした旨表明し(注:50億ドル支援公約を達成し,新たな支援を行うもの),マーリキー首相より感謝の意を表明。
  2. (2)上記首脳会談に先立つ16時50分頃から約30分間,マーリキー・イラク首相は,滞在先宿舎にて玄葉外務大臣の表敬訪問を受けた。同表敬訪問においては,エネルギー分野を含む経済関係を中心とする二国間関係の強化や中東・北アフリカ情勢について率直な意見交換が行われた。
  3. (3)マーリキー首相は,枝野経済産業大臣や我が国企業関係者等の表敬を受けるとともに,日イラク産業協力会議,民主党日イラク友好議連との会合,自民党議員との会合等に出席し,中東調査会で講演を行った。

2 評価

  1. (1)マーリキー首相は,イラクが本年末の米軍撤収を目前に控え,自立への大きな一歩を踏み出す重要なタイミングで訪日した。
  2. (2)今回の訪日では,このようなイラクとの関係を「新たな段階」に引き上げ,これまでの援助からビジネスへと日イラクの経済関係を転換し,日イラクの経済関係を抜本的に強化していくことで一致した。
  3. (3)特に,日イラク経済関係強化のため,以下のような具体的成果が得られたことは有意義だった。

    <投資環境整備,枠組みの構築>

    • 政府間経済合同委員会の設置(来年開催)
    • 民間も参加した産業協力会議の開催
    • 貿易保険枠組取決め署名
    • 投資協定の原則合意

    <エネルギー分野>

    • ガッラーフ油田,東バグダッド油田,ナーシリーヤ油田について対話と協力を促進。
    • イラク側より緊急時の原油追加供給を申し出。
    • 南部随伴ガス事業に近く署名。同プロジェクトから得られるLNGを日本に輸出
    • 原油等を担保とする新たなファイナンス・スキームの議論の開始

     野田総理からは,日イラク経済関係強化のため,上記のとおり円借款供与を表明し,これまでの50億ドル支援の公約を越え,新たな支援を行うことを表明した。

  4. (4)今回の訪日は,豊富な石油資源を有し,今後優良なインフラ輸出先となることが見込まれるイラクへの日本企業の進出を促進することに資するものとなった。明年開催される経済合同委員会で今回の成果をフォローアップしていく考え。
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