アジア
第20回ASEAN+3(日中韓)外相会議



1 冒頭
ASEAN議長国のドーン・タイ外務大臣及び日中韓側の議長国である王毅中国外交部長の発言に続き,康京和韓国外交部長官,河野大臣の順で冒頭発言を行った。
康京和長官からは,日本の輸出管理措置の見直しについての立場の表明があった。
河野大臣からは,(1)APTは過去20年以上にわたり,食料安全保障,金融・経済,教育,環境,文化,青少年交流といった実務的な協力を推進し,地域の平和,安定,繁栄の確保に大きく貢献してきたこと,(2)保護主義が高まる中,この地域の経済成長を維持・増進していくためには,自由で公正な世界貿易を掲げる必要があること,(3)6月のASEAN首脳会議の議長声明で確認されたとおり,ASEAN+6でRCEPを本年中に妥結することが極めて重要であること,(4)また,今回の輸出管理の見直しについては,安全保障の観点から機微な品目及び技術に対して実効的な輸出管理を実施することは,国際社会の一員としての日本の責任であり,日本の輸出管理の必要かつ正当な見直しは,WTO協定及び関連するルールを含む自由貿易の枠組みとも完全に整合的である旨言及した。
2 ASEAN+3協力のレビューと将来の方向性
河野大臣から,ASEAN+3協力作業計画に沿った日本の取組及びイニシアティブの成果を中心に以下の発言を行った。
(1)総論
日本は,APTを含むパートナー諸国と共に,自由で開かれたインド太平洋の実現に向け,G20大阪サミットで承認された「質の高いインフラ投資に関するG20原則」に基づき,国際スタンダードに則った質の高いインフラ整備を推進し,ASEANを中心とするインド太平洋地域の連結性向上に貢献していく。
(2)金融
日本が協力してきた東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF:シードリフ)に基づく最初の成果であるラオス・ミャンマー向け災害保険が本年中に稼働される見込みであり,域内の防災対策に貢献していきたい。大規模災害発生時等の効果的な活用を期待している。
(3)食料安全保障
日本が主導的な役割を果たしてきたASEAN+3緊急コメ備蓄(APTERR:アプター)協定に基づき,2018年度にフィリピン及びミャンマー向けの米の現物備蓄の実施を決定し,先月に日本から船積された。
(4)環境協力
海洋プラスチックごみ問題について,G20大阪サミットで共有された「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」への賛同をASEANにも呼びかけた。また,日本は,同ビジョンの実現に向け,新たに立ち上げた「MARINE(マリーン)イニシアティブ」に基づき,ASEAN諸国の廃棄物管理に関する能力構築及びインフラ整備等を支援していく。さらに,昨年のAPT首脳会議で安倍総理が表明した「ASEAN+3海洋プラスチックごみ協力アクション・イニシアティブ」の下,今後,ERIAにナレッジセンターを設置し,情報集積の拠点にしたい。
(5)教育・人的交流
APT域内の質保証の伴った高等教育の流動性を促進するため,政策立案者及び高等教育関係者とともに,政策対話の促進や高等教育の共同プログラムの実施に貢献したい。また,日中韓の枠組みで成果をあげてきた,質の高い大学間交流プログラムである「キャンパス・アジア」について,今後,ASEAN地域と連携して進めていきたい。
(6)保健衛生
保健衛生について,日本はアジア健康構想を進展させたい。日本は,協力の枠組みを作り,具体的な事業にするため,ASEAN各国との協力覚書を結ぶべく取り組んでいる。アジアの医薬品・医療機器産業等を含むヘルスケア産業の振興にも取り組んでいく。
(7)その他
東日本大震災から8年以上が経過した現在もAPTの一部の国は日本産食品に対する輸入規制を維持していることは残念である。日本産食品の安全性は科学的な根拠により確保され,必要なモニタリング・管理措置が採られており,速やかな規制撤廃を求める。
また,会議の中で,多くの国から,これまでのASEAN+3での金融,経済,食料安全保障,貧困対策,災害,人と人との連結性,観光等の様々な分野における実務協力の進展を歓迎し,引き続き実質的な協力を進めることに対する積極的な発言があった。
3 地域・国際情勢
北朝鮮に関して河野大臣から,北朝鮮による弾道ミサイル発射は遺憾であり,国際社会が一体となって米朝プロセスを後押ししていくことが重要,更に「瀬取り対策」を含め安保理決議の完全な履行の堅持が不可欠である旨の発言を行った。また,河野大臣は拉致問題の早期解決に向けて,各国による引き続きの協力を期待する旨の発言を行った。
これに対し,各国からは,安保理決議の完全な実施の必要性や,対話による解決の重要性につき言及があった。
4 閉会発言
河野大臣から,今回の輸出管理の見直しについて改めて言及すると共に,それとは別の問題として,韓国による水産物の輸入規制は非科学的な不当な措置であり早急に撤廃されるべきこと,旧朝鮮半島出身労働者問題に関する韓国大法院判決は,日韓国交正常化の法的基盤を根本から覆すものであり,韓国が国際法を遵守する必要があることを発言した。