アジア

平成29年8月7日
第18回ASEAN+3外相会議1
第18回ASEAN+3外相会議2
第18回ASEAN+3外相会議3

 7日午前10時10分から12時頃まで,フィリピン・マニラにおいて,ASEAN+3外相会議が開催され,我が国から河野外務大臣が出席し共同議長を務めたところ,河野大臣の発言を中心に概要以下のとおりです。

1 冒頭発言

 カエタノ・フィリピン外務大臣の発言に引き続いて,河野大臣から,(1)本年は,ASEAN+3設立20周年という記念すべき年であり,過去20年にわたり,ASEAN+3の枠組みで,金融や経済面などの実務協力が進展していることを歓迎,(2)世界で保護主義や内向き志向の台頭などが懸念される現下の状況を踏まえると,今後の地域・世界経済の予測可能性を高め,脆弱性の軽減に努めるとともに自由貿易体制を維持・強化するため,ASEAN+3においても緊密に協力していきたい旨述べました。

2 ASEAN+3協力のレビューと将来の方向性

(1)河野大臣より,ASEAN+3協力に関する日本の取組を中心に以下の7点について説明しました。

 アジアの膨大なインフラ需要に対し,昨年,「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ(PDF)別ウィンドウで開く」を発表し,今後5年間,約2,000億ドルの資金を,ASEANを含む世界のインフラ案件に供給していく。また,「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則(PDF)別ウィンドウで開く」をもとに,質の高いインフラの国際スタンダードの確立と普及に努めていく。特に,インフラ整備に際しては,港湾などのインフラの開放性や透明性,非排他的な運営の確保,対象国の財政健全性などに留意する。また,日本は,ASEAN統合の鍵を握るメコン各国と協力し,インフラ整備に加え,通関の効率化,人材育成などのソフト面での取組を通じ,域内のインフラがつながり活用される「生きた連結性」の実現に取り組んでいる。

 2016年に国際機関となったASEAN+3マクロ経済調査事務局(AMRO)については,本年,国連オブザーバー・ステータスの申請手続が開始された。我が国としても,同事務局を国際社会から一層信頼される存在にするための努力を継続する。

 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉は東アジア経済統合の重要な柱。市場アクセスとともに,ルールも含めた交渉全体における,包括的で,バランスのとれた,質の高い協定の早期妥結を目指し,引き続き精力的に交渉を進めたい。

 食料安全保障分野の協力も重要である。今年も,ASEAN+3緊急コメ備蓄協定の枠組みを活用し,フィリピン,ラオス,ミャンマーに対してコメを拠出する。
 東日本大震災から6年以上が経過した。日本産食品への輸入規制を維持している国に対しては,科学的根拠に基づき,できるだけ速やかな規制撤廃・緩和を求めたい。

 日本は,「産業人材育成協力イニシアティブ(PDF)別ウィンドウで開く」のもと,各国のニーズを踏まえた産業人材育成を推進。
 本年の9月から学生の受入れを開始する「イノベーティブ・アジア事業」を含め,ASEANと日本を結ぶ高度人材育成のための留学事業や研究交流等により,ASEANの人材育成や人的連結性を後押ししていく。

 東アジア・ビジョン・グループ(EAVG)IIのフォローアップとして,日本は,公衆衛生や高等教育などを主導していく。特に高等教育分野では,ASEAN+3の政府間ワーキング・グループを主導し,地域の学生流動性向上や質保証のため,引き続き貢献していく。

 今後5年間のASEAN+3の方向性を決める新たなASEAN+3協力作業計画の合意を歓迎。

(2)会議の中で,多くの国から,過去20年間にわたる,ASEAN+3での金融,経済,食料安全保障,貧困対策,災害,人と人との連結性,観光等の様々な分野における実務協力の進展を歓迎する発言がありました。

3 地域・国際情勢

(1)河野大臣から,以下の5点を述べました。

 7月28日の北朝鮮による2回目のICBM級弾道ミサイルの発射は,北朝鮮が国際社会の声を無視し,核・ミサイル開発に邁進していることを改めて示すもの。今は北朝鮮が非核化に向けた行動を示すよう,最大限の圧力をかけるべき局面。新たな厳しい安保理決議の採択を歓迎。この決議を含む関連安保理決議の厳格かつ全面的な履行が必要。さらに,拉致問題は,日本の主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題であり,基本的人権という国際社会全体の普遍的な問題である。拉致問題について強いメッセージを発出すべき。

 核軍縮の進め方を巡っては,核兵器国と非核兵器国の信頼関係の再構築が,核軍縮の実質的な進展のための大きな課題。日本はこの課題を解決すべく,唯一の戦争被爆国として,核兵器国もしっかり巻き込む形で粘り強く取り組んでいく。

 法の支配に基づく,自由で開かれた海洋秩序は国際社会の平和と繁栄の礎。フィリピン・マレーシア・インドネシアによるスールー・セレベス海の協調パトロールを支持。アジア海賊対策協定(ReCAAP)の枠組みも活用した地域協力も重要。

 アジアにおけるテロの脅威は,この地域が一体となって取り組むべき最優先課題の一つ。日本は,ミンダナオにおけるフィリピンによるテロとの闘いを全面的に支持。テロはいかなる理由でも許されず,断固として非難。日本は,この分野において,フィリピンに対し,約1,200万ドルの支援を実施。

 日本は,現在,日中韓サミットの議長国。日中韓の安定した協力関係は,ASEAN+3における協力強化にも有益。本年日本で開催予定の日中韓サミットに向け,中国及び韓国と調整を続けていく。

(2)これに対して,多くの国から,核実験,弾道ミサイル発射等の北朝鮮の動向に懸念が示されました。また,複数の国が日中韓協力の重要性を指摘しました。


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