ASEAN(東南アジア諸国連合)

平成28年7月27日
7月25日(月曜日)午後12時10分(現地時間)から約1時間20分間,ラオス・ビエンチャンにおいて日ASEAN外相会議が行われたところ,概要以下のとおり。岸田外務大臣とリム・ジョクセン・ブルネイ首相府大臣兼第二外務貿易大臣が共同議長を務めた。

1 日ASEAN関係のレビューと将来の方向性

(1)総論

岸田大臣より,日本は対等な戦略的パートナーとして,ASEANの中心性と一体性を強く支持しており,ASEAN共同体が,地域協力の中心として,法の支配に立脚した地域の安定と繁栄を主導していくことを強く期待する旨述べ,ラオスが本年優先する8分野を支持し,ASEAN共同体の更なる統合努力を引き続き全面的に支援する旨述べた。また,2013年に表明した5年間で2兆円のODA供与は既に1兆7千億円以上を達成しており,2014年の「日ASEAN健康イニシアティブ」としての5年間で8000人の人材育成は既に4500人,昨年の3年間で4万人の「産業人材育成協力イニシアティブ」は既にASEANに対し1万5千人以上を育成する等,日本はコミットメントを着実に実施している旨述べた。
ASEAN側の多くの国から,「日ASEAN友好協力ビジョン・ステートメント」の4分野の下での日ASEANの協力関係の進展を歓迎する旨が述べられ,連結性の強化,格差是正等,ASEAN共同体に対する日本の支援,ASEAN中心性に対する日本の一貫した支持への感謝が述べられた。

(2)経済分野での協力

岸田大臣より,「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」,「日メコン連結性イニシアティブ」,「産業人材育成協力イニシアティブ」や,今後5年間でアジア全体で1000人の優秀な学生を受け入れる留学事業「Innovative Asia」を通じ,連結性の強化や産業の高度化,国民生活の改善,人材育成支援を図り,2025年のASEANの更なる統合目標に向けて,ASEAN共同体の強化,包摂的で持続的な成長を引き続き全面的に支援し,ASEAN統合の鍵となるメコン地域の発展にも尽力していく旨述べた。また,日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)等を通じた経済関係の深化,日ASEAN航空協定交渉,日本アセアンセンターの新たな役割への期待を述べた。
ASEAN側の多くの国から,「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」,「産業人材育成協力イニシアティブ」,「日メコン連結性イニシアティブ」といった日本のイニシアティブに対して歓迎の声が示された。

(3)社会分野での協力及び文化・人的交流

岸田大臣より,近日設立予定の「日本ASEAN女性エンパワーメントファンド」を通じた女性の活躍支援,生活習慣病,医療格差,高齢化といった保健分野における新たな課題等,国民生活の改善にも日本の知見を活かして貢献していく旨述べ,ASEAN防災人道調整(AHA)センターを通じた防災面での協力も,引き続き推進していく旨述べた。また,人的交流による相互理解を促進すべく,JENESYS2016を通じて本年度に約3700名の交流を実施し,「文化のWA」プロジェクトとして昨年度,双方向の芸術・文化交流事業では約380件の事業を行い,80万人以上が参加した旨述べた。
ASEAN側からは,「日本ASEAN女性エンパワーメントファンド」を歓迎し,日ASEAN健康イニシアティブを通じた保健分野での貢献やAHAセンター支援等防災面での協力を評価するとともに,JENESYSや文化のWAを通じた文化・人的交流面での取り組みに感謝する旨が述べられた。

(4)政治・安全保障分野での協力

岸田大臣より,法の支配に基づく安定した国際秩序の維持が,地域の繁栄の前提条件であり,日本は,国際協調主義に基づく「積極的平和主義」とその具体的実践である平和安全法制の下,地域・国際社会の平和と安定,繁栄の確保にASEANと共に貢献していく旨述べた。
また,岸田大臣より,ダッカ襲撃テロ事件等,テロ行為を断固として非難し,暴力的過激主義によるテロの脅威の拡大に対し,日ASEANテロ対策対話,各国のテロ対処能力の向上支援,テロの根本原因への対処等,日ASEAN間での協力を強化したい旨述べた。また,サイバーセキュリティーの確保のための能力向上支援についても今後,政府一丸となって推進していく旨述べた。
更に,岸田大臣より,海上交通の安全,海における法の支配の促進のため,今般,ASEAN船舶航行システム(VTS)訓練センターの設立,マラッカ・シンガポール海峡の水路調査への支援を決定した他,各国の海上法執行能力の向上も引き続き支援していく旨述べた。
ASEAN側からは,「積極的平和主義」による日本の地域・国際社会への貢献を歓迎するとともに,海洋分野における支援に感謝する旨が述べられ、またテロ対策についても協力を強化していきたい旨が述べられた。

2 地域・国際情勢

(1)南シナ海問題

岸田大臣より,南シナ海における状況のエスカレーションを深刻に懸念しており,南シナ海は,日本にとって死活的に重要なシーレーンであるとともに,地域全体の平和と安定にとって重要であり,この海域で,国際法が遵守され,航行の自由を確保する必要がある旨述べ,全ての当事国が,緊張を高めるような行動を自制し,国連海洋法条約を含む国際法に基づき,問題の平和的解決を追求すべき旨述べた。また,比中仲裁裁判の判断は,裁判の当事国を法的に拘束し,両当事国がこの判断に従うことにより,南シナ海を巡る紛争の平和的解決につながっていくことを期待する旨述べ,南シナ海行動宣言(DOC)の完全かつ効果的な実施,南シナ海行動規範(COC)の早期締結を強く期待すること,南シナ海問題は,法の支配という原理・原則に則って対応すべきであることを述べた。
ASEAN側の多くの国から,最近の情勢に対する懸念とともに、航行・上空飛行の自由の重要性、国連海洋法条約等の国際法に沿った紛争の平和的な解決、緊張を高める行為の自制、非軍事化、力の行使や威嚇を控えるべき、DOCの完全な履行及びCOCの早期締結の重要性について述べられ、複数の国から法的・外交的プロセスの尊重、比中仲裁の判断を歓迎・支持するとの発言があった。

(2)北朝鮮問題

岸田大臣より,北朝鮮の核・ミサイル脅威を踏まえ,断固たる対応が必要である,安保理決議の厳格な履行,決議の履行状況の安保理への報告が重要である,日本は決議履行に係る能力向上支援を含め必要な協力を惜しまない旨述べるとともに,一日も早い全ての拉致被害者の帰国を実現すべく,ASEAN各国の理解と協力を期待する旨述べた。
ASEAN側からは,北朝鮮の核・ミサイル開発に対する懸念、安保理決議の遵守の重要性や六者会合の早期再開への期待が述べられ、複数の国から、拉致問題は深刻な人道上の懸念であるとして、日本の懸念を共有するとの発言があった。

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