ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:平成28年3月31日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件概要
(1)供与国名
インド
(2)案件名
貨物専用鉄道建設計画(フェーズ1)(第三期)
(3)目的・事業内容
貨物専用鉄道の計画区間であるデリー・ムンバイ間及びルディアナ・デリー・ソンナガル間のうち,特に整備優先度が高いとされるグジャラート州,ラジャスタン州及びハリヤナ州の主要都市を結ぶ新線を建設し,全自動信号・通信システム及び大容量かつ高速の機関車を導入することにより,今後高い成長率が見込まれる貨物輸送需要への対応及び物流ネットワークの効率化を図り,もって経済成長の促進及び貧困・環境問題の改善に寄与するものである。
- ア 主要事業内容
- (ア)土木・建築工事,調達機器,電気機関車等
- (イ)コンサルティング・サービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 1,036.64億円 0.10% 40(10)年 タイド (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。
- ア EIA(環境影響評価)
本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げるカテゴリAに該当する。本計画に係るEIA報告書は,2009年8月に承認済み。なお,インド国内法上は,EIA作成義務対象外である。 - イ 用地取得及び住民移転
本計画では,約3,714.3haの用地取得と962世帯の住民移転を伴い,同国国内手続に沿って作成された住民移転計画に基づき実施される。 - ウ 外部要因リスク:特になし。
- ア 開発ニーズ
インドでは,貨物輸送量が年率約15%で伸びる一方で,貨物鉄道の輸送能力は限界に近づいている。輸送貨物における貨物鉄道のシェアも低下傾向であり,大量輸送が可能で道路輸送に比べ環境配慮型である鉄道の整備・強化は同国の経済成長において不可欠な課題となっている。とりわけ,同国屈指の消費地・生産拠点である首都デリーと大陸東西の玄関港であるムンバイ,コルカタ,そして南東部のチェンナイを結ぶ「黄金の四角形」と呼ばれる路線の貨物輸送量は全国の約65%を占めており,今後もコンテナ貨物の増加や農産物・鉱工業資源の輸送量の増加が見込まれることから,大容量かつ高速化と他の交通機関との連携による輸送能力の強化が求められている。
また,インド政府は,第12次5か年計画(2012年4月~2017年3月)において,第11次5か年計画に引き続き,幹線鉄道における大量輸送を可能とするための路線拡充及び25トンの軸重の高速貨物車両の導入,港湾施設へのアクセス改善等の必要性について言及するとともに,特に,デリー~ムンバイ間及びルディアナ~デリー~コルカタ間の貨物専用鉄道の早期整備と旅客・貨物車輌拡充の必要性を強調している。
このため,本計画を実施することは,貨物専用鉄道の計画区間であるデリー・ムンバイ間及びルディアナ・デリー・ソンナガル間のうち,特に整備優先度が高いとされるグジャラート州,ラジャスタン州及びハリヤナ州の主要都市を結ぶ新線を建設し,全自動信号・通信システム及び大容量かつ高速の機関車を導入することにより,今後高い成長率が見込まれる貨物輸送需要への対応及び物流ネットワークの効率化を図り,もって経済成長の促進及び貧困・環境問題の改善に寄与するものであり,インドの開発政策とも高い整合性を有しており,本計画のニーズは大きい。 - イ 我が国の基本政策との関係
2006年5月に策定された「対インド国別援助計画」においては,対インドODAの重点目標として,(a)経済成長の促進,(b)貧困・環境問題の改善及び(c)人材育成・交流拡大を掲げている。本計画は,都市交通システムの整備という観点から上記(a)に,地方開発という観点から上記(b)に合致するものである。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
(2)効率性
本計画においては,貨物専用鉄道公社(DFCCIL)が雇用するコンサルタントが財務戦略策定を含めた運営・維持管理体制の強化をフォローするほか,円借款附帯技術協力を実施し,組織体制の改善に対して提案を行う予定である。また,エイズ感染が危惧される同国において,工事労働者が現場に集中する大規模工事であり,従事する労働者には単身で居住する移動労働者が多数含まれる見込みであるため,HIV感染リスクが高いものと考えられる。そのため,本事業においては,コンサルタントが現地NGOと連携し,HIV予防活動をはじめとする建設労働者への労働衛生,安全対策活動を実施することで適切な労働環境を提供する体制にする。
(3)有効性
本計画の実施により,今後高い成長率が見込まれる貨物輸送需要への対応及び物流ネットワークの効率化を図り,経済成長の促進及び貧困・環境問題の改善に寄与することが期待される。運用・効果指標(いずれも事業完成2年後(2026年)見込み)として,車両走行距離(双方向)(25万km/日:2007年3万7千km/日),輸送コンテナ数(222/日:2007年33/日),輸送量(3億3,600万トンキロ/日:2007年5,500万トンキロ/日),最高速度(100km/時間:2007年75km/時間),輸送時間短縮(20時間)等を設定している。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,インド国別評価報告書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構から提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。(了)