ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:平成28年3月31日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件概要
(1)供与国名
インド
(2)案件名
北東州道路網連結性改善計画(フェーズ1)(第一期)
(3)目的・事業内容
インド北東州における国道51号線及び54号線の改良等を行うことにより,同地域内及び国内外他地域との連結性向上を図り,もって同地域内の経済成長の促進及び貧困・環境問題の改善に寄与するものである。
- ア 主要事業内容
- (ア)国道54号線の道路改良
- (イ)国道51号線の道路改良
- (ウ)コンサルティング・サービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 671.70億円 1.40% 30(10)年 一般アンタイド (注)金利は,一般条件(固定・オプション1)を適用。コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。
- ア EIA(環境影響評価)
本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げるカテゴリAに該当する。本計画に係るEIA報告書は,2015年11月に承認済み。なお,インド国内法上は,EIA作成義務対象外である。 - イ 用地取得及び住民移転
本計画では,約846haの用地取得と1,974世帯,10,250人の非自発的住民移転,228軒の経済的移転を伴い,同国国内手続に沿って作成された住民移転計画に基づき実施される。 - ウ 外部要因リスク:特になし。
- ア 開発ニーズ
インドにおいて,道路は運輸部門のうち85%の旅客輸送,60%の貨物輸送を担っており,鉄道と並ぶ国内の重要な輸送手段である。こうした中,同国では財政的かつ技術的な課題から山岳部の国道整備が遅れている。とりわけ北東州については,他地域と比較して山岳部が多く,道路の舗装率が低いことに加え,多雨による土砂災害の多発が物資の安定供給,医療・教育施設へのアクセスを阻害し,北東州の経済開発の制約となっている。そのため,対象地域では,一人当たりGDP(2010-2011年)は34,405インドルピーと,全国平均の59,606インドルピーと比較して低く,地域格差が大きな国内問題となっている。
インド政府は上述の課題に対応するため,第12次5か年計画(2012年4月~2017年3月)において,北東州における道路整備特別プログラム(Special Accelerated Road Development Programme for North-East)による,地域内主要都市間の国道整備を掲げている。また,モディ政権においても予算の重点配分による北東州の地域開発,特に道路網の整備は重点政策の一つとなっており,本事業もその中に位置づけられるものである。本件計画は,同地域内及び地域外とのアクセスを改善し,同地域の経済開発を後押しするとともに,地域住民のライフライン確保にも資するのみならず,近隣国との連結性向上の取組みにも寄与するものである。
このため,本計画を実施することは,インド北東州における国道51号線及び54号線の改良等を行うことにより,同地域内及び国内外他地域との連結性向上を図り,もって同地域内の経済成長の促進及び貧困・環境問題の改善に寄与するものであり,インドの開発政策とも高い整合性を有しており,本計画のニーズは大きい。 - イ 我が国の基本政策との関係
2006年5月に策定された「対インド国別援助計画」においては,対インドODAの重点目標として(a)経済成長の促進,(b)貧困・環境問題の改善及び(c)人材育成・交流拡大を掲げている。本計画は,都市交通システムの整備という観点から上記(a)に,地方開発(アクセス道路の改善)という観点から上記(b)に合致するものである。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
(2)効率性
今回の対象地域は,山崩れを始めとする土砂災害が発生しやすい自然条件であるため,斜面災害対策を取り入れ土砂災害が発生しないように努めるとともに,災害復旧を含む運営維持管理に関する予算,体制が確保されるように実施機関に申し入れを行う。
(3)有効性
インド北東州における国道51号線及び54号線の改良等を行うことにより,同地域内及び国内外他地域との連結性向上を図り,もって同地域内の経済成長の促進及び貧困・環境問題の改善に寄与することが期待される。運用・効果指標(いずれも事業完成1年後(2023年)見込み)として,対平均移動速度(40km/時:2015年実績値は国道54号線が12km/時,国道51号線が15km/時),対象区間の平均移動コスト(15ルピー/km/台:2015年実績値は国道54号線が24ルピー/km/台,国道51号線が30ルピー/km/時台),対象区間の年間通行止め日数(0)等を設定している。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,インド国別評価報告書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構から提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。(了)