ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成27年6月1日
評価年月日:平成27年4月10日
評価責任者:国別開発協力第1課長 宮下 匡之
1.案件名
1-1.供与国名
ソロモン
1-2.案件名
ククム幹線道路改善計画
1-3.目的・事業内容
本計画は,ソロモン国の首都ホニアラ中心市街地とホニアラ国際空港を結ぶククム幹線道路において,既存橋梁及び道路の整備・改善を行うことにより,渋滞の緩和及び交通の安全性強化並びに災害に強いインフラ整備を行い,持続的な経済成長の達成と国民の生活水準の向上に寄与することを目的とするもの。供与限度額は,31億8,800万円であり,新マタニコ橋改修・拡張(拡幅部2車線・66m),旧マタニコ橋架替(2車線,60m),ククム幹線道路改修(約3km),市役所前ラウンドアバウト改修及び中央市場前渋滞緩和対策(バス停改良,歩行者横断施設整備等)の整備を行う。また,中央市場前の交通管理体制構築及び交通安全啓発のソフトコンポーネントを行う。
1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がソロモン政府により実施される必要がある。
- (1)維持管理・運行のための予算及び人員の確保
- (2)諸事務手続,免税措置の実施及び各種手数料の負担
- (3)必要な用地取得及び建設範囲内の電柱,水道管等の移設
- (4)環境影響評価の実施
2.無償資金協力の必要性
2-1.必要性
- (1)ソロモンは,6つの大きな島及び900を超える小島から構成される島嶼国であり,首都ホニアラ市を擁するガダルカナル島及びマライタ島に,道路網の66%,車両の98%が集中している。ククム幹線道路は,ソロモンで最も交通量の多い幹線道路であり,4車線からなる同幹線道路は,舗装の老朽化と不十分な排水設備による路面の損傷によって交通事故発生の危険性が高く,2車線で幅員の狭い橋梁,小規模な交差点,中央市場前の非効率なバス駐車場など,複数要因による慢性的な渋滞が発生しており,円滑な物流の妨げとなっている。
- (2)また,2014年4月に,ホニアラ市で1995年の観測開始以降最大の雨量を記録した豪雨により大洪水が発生し,ククム幹線道路が冠水するとともに,本計画の対象となっている旧マタニコ橋が流失し(現在仮設橋を設置),また,新マタニコ橋台周辺の護岸工が流失したことによりホニアラ市の交通が麻痺したことから,災害に強いククム幹線道路の整備が緊急の課題となっている。
- (3)なお,債務持続性等の観点から,円借款での実施は難しい。
2-2.効率性
- (1)当初要請はククム幹線道路の改良(対象区間は市役所前ラウンドアバウトから空港間の約12km)であったが,市役所前ラウンドアバウトから3kmの排水施設及び舗装損傷の状況が他の区間と比べ格段に悪いことが確認されたため,道路改良の優先度が高いこの区間を協力対象とした。
- (2)また,当初要請にはなかったが,ホニアラ中心市街地の渋滞を効果的に緩和するためには,中央市場周辺の交通渋滞対策を含めて,市役所前ラウンドアバウトの改良,新マタニコ橋の4車線への拡幅,旧マタニコ橋の2車線橋梁への架け替えを一体として行うことが必要であることが確認されたため,これらを協力対象とした。
2-3.有効性
- (1)本件の実施により,以下のような成果が期待される。
- (ア)交通渋滞長(ピーク時)が1,500m(2014年実績値)から300m(2021年(事業完成3年後))に,平均走行速度(ピーク時)が20km/h(2014年実績値)から31km/h(2021年(事業完成3年後))に改善される。
- (イ)交通の安全性・利便性向上,河川増水等の防災対策及び道路施設運用管理能力が向上し,持続的な経済成長の達成と国民の生活水準の向上に寄与することが期待される。
- (2)ソロモンは,国際的な場において,我が国の立場や国際機関の選挙での我が国の立候補を一貫して支持するなど,重要なパートナーである。また,我が国は,2012年5月の第6回太平洋・島サミットにおいて,「自然災害への対応」,「環境・気候変動」,「持続可能な開発と人間の安全保障」,「人的交流」,「海洋問題」を中心に支援を実施していくことを表明するとともに,我が国の対ソロモン国別援助方針で「社会・経済基盤の強化を通じた持続的経済成長の達成と国民の生活水準の向上のため,生活基盤・経済活動に必須な運輸・交通・電力・エネルギー,水供給などの,基幹経済・社会インフラの整備・維持管理への支援」を重点分野の一つとしていることから,本件は,我が国の方針に合致した支援として,同国との二国間関係の維持・発展に寄与する。
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ソロモン政府からの要請書
- (2)JICAの事業化調査報告書(JICAを通じて入手可能)