ODA(政府開発援助)

平成30年1月25日

評価年月日:平成29年12月21日
評価責任者:国別開発協力第二課長 寺田 広紀

1 案件概要

(1)供与国名

インド

(2)案件名

ベンガルール上下水道整備計画(フェーズ3)(第一期)

(3)目的・事業内容

 インド南部カルナタカ州ベンガルール都市圏において,コーヴェリ川を水源とする上水道施設及び下水道施設を整備することにより,急増する水需要に対応する安定的な上下水道サービスの提供を図り,もって同地域の衛生的な居住環境の整備及び産業の活性化に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)上水道施設(浄水場及び送水ポンプ場の建設,送水管及び市内送水幹線の敷設,配水池の建設,SCADA(中央監視)システムの設置,導水管の敷設,新規送水施設からベンガルール市内配水池への連絡管の敷設,高架水槽及び送水ポンプの建設,送水管の敷設,110村配水網の敷設)
    • (イ)下水道施設(110村下水処理場の建設,110村幹線管渠の敷設,110村末端管渠の敷設)
    • (ウ)コンサルティング・サービス(詳細設計,設計レビュー,入札補助,施工管理等)
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    450.00億円 1.5%(うち下水道部分のみ1.3%) 30(10)年 一般アンタイド

    (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
本計画は「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断されるため,カテゴリBに該当する。本計画は,インド国内法上,環境影響評価(EIA)報告書の作成が義務付けられていない。本計画による入札開始前に,下水処理場に対する排水基準及び下水処理場の設計に関してカルナタカ州公害管理局(Karnataka State Pollution Control Board)からクリアランスを取得する見込み。
用地取得及び住民移転:特になし。
外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドでは,人口増加や経済発展に伴う水需要量の増加に対し,水源開発及び上下水道整備が追い付いていない。上下水道の運営・維持管理面については,高い無収水率,顧客管理及び広報活動等の能力不足による低い料金徴収率等財務的な課題を抱えている他,維持管理財源の不足による施設の劣化が進んでいる地域もある。
 インド政府は,インド水資源省が2012年に策定した国家水政策において,中央政府・州・自治体が全人口のために飲料水を確保すること及び各地において上下水道を整備することを目標として掲げている。また,2015年にモディ政権が設置した政策立案機関(NITI Aayog)も,2017年に発表した三ヶ年行動アジェンダ(Three Year Action Agenda 2017/18 to 2019/20)において,都市開発における課題として上下水道の不足を挙げている。
 本計画の対象地域であるベンガルール都市圏は,インド南部カルナタカ州の州都であるベンガルール市,その周辺自治体及び近年開発が進む110村と呼ばれる地域からなり,2011年の国勢調査によるとその人口は約850万人である。同都市圏はインドのソフトウェア産業の中心地として急速に発展しインドのシリコンバレーとも呼ばれ,本邦企業も多数進出している(2017年10月時点でベンガルール市に約190社,在インド日本国大使館より)。
 これまで,ベンガルール市及び周辺自治体においては,上下水道事業を担うカルナタカ州バンガロール上下水道局(Bangalore Water Supply and Sewerage Board: BWSSB)実施の給水システムであるコーヴェリ上水道整備スキーム(Cauvery Water Supply Scheme: CWSS)によって上水道施設の整備が行われてきたものの,110村地域については,未だ上水道施設が整備されていない。ベンガルール都市圏全体の2016年時点における地下水を除いた水需要が1,550百万リットル/日(MLD)に上るのに対し,BWSSBによる給水能力は1,310MLDに留まっており,今後も予想される人口増加及び経済発展に対応する上水道の整備が求められている。また,下水道についてもCWSSの進展とともに整備が進められており,ベンガルール市の下水道普及率は93.5%とされるが,110村地域においては下水道が存在しておらず,下水道の整備による衛生・水環境の問題解決が急務となっている。
我が国の基本政策との関係
 インドの人口の約3割が依然として貧困状態にあること,電力,運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえて2016年3月に策定された「国別援助方針」においては,今後の対インドODAの重点目標として,(ア)連結性の強化,(イ)産業競争力の強化及び(ウ)持続的で包摂的な成長への支援を掲げている。
 本計画は,インド南部カルナタカ州ベンガルール都市圏において,コーヴェリ川を水源とする上下水道施設を整備することにより,急増する水需要に対応する安定的な上下水道サービスの提供を図り,もって同地域の衛生的な居住環境の整備及び産業の活性化を通じて,持続的で包摂的な成長に寄与することから,上記(ウ)に合致する。また,インドの開発政策とも高い整合性を有している。
 また,2017年9月の安倍総理訪印時には「両国のパートナーシップを新たな次元に引き上げるべく協力することを決定」するなど両国の関係強化が着実に進んでいる中,円借款を始めとするODAを通じて,経済・社会開発を進めるインドの取組を支援することは,こうした日印二国間関係の更なる強化につながる。

(2)効率性

 BWSSBにより料金改定を含めた財務改善が計画されており,その改善状況は事業実施中も国際協力機構がモニタリングする予定。また,本計画の組織強化に係るコンサルティング・サービスにおいて,BWSSB職員への設計や監理における技術移転,無収水対策等に取り組むこととなっている。

(3)有効性

 運用・効果指標(いずれも事業完成2年後(2026年)見込み)として,2016年と比べてベンガルール都市圏の給水量が1,310,000立方メートル/日から1,710,000立方メートル/日へ増加,110村の給水量が0立方メートル/日から280,000立方メートル/日へ増加,110村の下水処理量が0立方メートル/日から160,000立方メートル/日へ増加等を設定している。
 また,本計画の実施により,急増する水需要に対応する安定的な上下水道サービスの提供を図り,もって同地域の衛生的な居住環境の整備及び産業の活性化に寄与することが期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,インド国別評価報告書(2009年度)国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構から提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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