ODA(政府開発援助)

平成29年6月30日

評価年月日:平成29年6月23日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治

1 案件概要

(1)供与国名

バングラデシュ人民共和国

(2)案件名

ハズラット・シャージャラール国際空港拡張計画(第一期)

(3)目的・事業内容

 首都空港であるハズラット・シャージャラール国際空港において,国際線旅客ターミナル3や貨物ターミナルの建設等を行うことにより,急増する航空需要に対応し,空港の容量拡大,利便性及び安全性の向上を図り,もって中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • 国際線旅客ターミナル3や貨物ターミナルの建設等
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    768.25億円 0.70% 30(10)年 一般アンタイド

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア EIA(環境影響評価):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる空港のうち大規模なものに該当せず,環境への望ましくない影響は重大ではないと判断され,かつ,同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため,カテゴリBに該当する。
  • イ 用地取得及び住民移転:本計画は,既存空港施設内の一般立入制限区域内で実施されるため,用地取得及び住民移転は発生しない。
  • ウ 留意点:事業実施にあたっては,関係者間で緊密に情報共有を行い,必要な安全対策を講じる。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

ア 開発ニーズ
 バングラデシュは過去10年以上に亘り,年平均6%以上の経済成長を遂げており,首都ダッカの国際空港航空旅客数は2006年から2015年で年平均約8%増加するなど,航空需要が急速に拡大している。ハズラット・シャージャラール国際空港は,同国内で離発着する国内・国際線の約75%が利用しており,急成長するバングラデシュの社会経済活動を支えるインフラとして重要な役割を担っている。
 バングラデシュ政府が作成したハズラット・シャージャラール国際空港拡張にかかるマスタープラン(2015年)によれば,2018年には,既存の空港施設(ターミナル1及び2)で想定される年間旅客者数処理能力の上限である800万人を超え,2035年頃には2,200万人に到達すると予測されている。この状況を踏まえ,上述のマスタープランでは,ハズラット・シャージャラール国際空港の国際線旅客ターミナル3の建設,貨物ターミナルの拡張,立体駐車場新設,国道へのアプローチ道路を含む周辺インフラ等の整備,並びに空港保安機材設備の拡充等が計画されている。
 また,航空貨物検査等の保安設備の不備により,2016年3月以降,イギリス及びドイツへの貨物便運航が停止され,貨物輸送に際し,第三国の経由が不可避となる等,バングラデシュ全体の経済活動に影響が及んでおり,ハズラット・シャージャラール国際空港の保安設備の早急な改善が求められている。さらに,2016年7月1日に発生したダッカ襲撃テロ事件を受けて,バングラデシュ政府は同空港を始めとした国全体での空港等のテロ対策を含むセキュリティを強化する方針である。
 本計画は,首都空港であるハズラット・シャージャラール国際空港において,国際線旅客ターミナル3や貨物ターミナルの建設等を行うことにより,急増する航空需要に対応し,空港の容量拡大,利便性及び安全性の向上を図り,もって中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化に寄与するものであり,バングラデシュの開発政策との高い整合性を有している。
イ 我が国の基本政策との関係
 バングラデシュでは,人口の約3割が依然として貧困状態にあり,電力,運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足している。こうした開発ニーズを踏まえ2012年6月に策定された「国別援助方針」においては,今後の対バングラデシュODAの重点目標として,(ア)中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化(「経済成長を通じた貧困削減」を追及するためのインフラの整備等),(イ)社会脆弱性の克服(貧困削減,初等教育,母子保健,安全な飲料水の供給などのMDGsの達成への貢献)を掲げている。
 本計画は,首都空港であるハズラット・シャージャラール国際空港において,国際線旅客ターミナル3や貨物ターミナルの整備等を行うことにより,急増する航空需要に対応し,空港の容量拡大,利便性及び安全性の向上を図り,もって中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化に寄与することから,(ア)に合致する。2016年5月の日・バングラデシュ首脳会談において,安倍総理より『日本は,バングラデシュの「2021年までの中所得国化」実現に向けて支援を継続していく』旨表明しており,本計画実施は,両国関係の更なる強化及び日本の外交政策の推進の観点からも重要である。

(2)効率性

 過去の類似案件から,既存空港を運用しながらの拡張事業では,複雑な工程計画・設計が要求されるため,詳細設計期間を慎重に検討することが必要であり,また,航空機の安全運航の確保や利用客の利便性の確保に特に留意する必要があるとの教訓が得られている。
 本事業では,既存の旅客ターミナルの運営を行いながら工事を行うこととなるため,詳細計画の初期段階から,詳細な建設工程の検討及び民間航空観光省(CAAB)内の空港運営部門との調整を進める。

(3)有効性

 本計画によって,2015年から事業完了2年後の2023年にかけて,同空港における国際線年間航空旅客数が,557万人から1059万人に増加する等,同国における航空需要の急増に対処するとともに,空港の容量拡大,利便性及び安全性の向上を図ることで,同国の経済成長促進に寄与することが期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 バングラデシュ政府の要請書,バングラデシュ国別評価報告書(2009年度),国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構から提出された資料。

 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。

 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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