ODA(政府開発援助)

平成29年6月30日

評価年月日:平成29年6月23日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治

1 案件概要

(1)供与国名

バングラデシュ人民共和国

(2)案件名

ダッカ地下変電所建設計画

(3)目的・事業内容

 首都ダッカにおいて地下変電所(2か所:グルシャン変電所及びカウランバザール変電所)等を建設することにより,電力供給の信頼度向上及び需給状況の改善を図り,もって中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • 冷却装置を含む地下変電所等の設計と建設
    • 地下変電所電気設備等の設計・調達・据付け
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    204.77億円 0.70% 30(10)年 一般アンタイド

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア EIA(環境影響評価):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断されるため,カテゴリBに該当する。
  • イ 用地取得及び住民移転:本計画の地下変電所設備は,既存変電所の敷地内に設置されるため用地取得及び住民移転は想定されない。一方で,カウランバザール変電所においては,地下変電所及び配電用洞道建設時における隣接道路の一時的使用により,当該道路上の露天商に対して,手続きに沿って補償が行われる予定。なお,本計画に係る住民協議の中では,本計画に対する特段の反対は確認されていない。
  • ウ 留意点:事業実施にあたっては,関係者間で緊密に情報共有を行い,必要な安全対策を講じる。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

ア 開発ニーズ
 バングラデシュでは,近年の安定した経済成長や工業化の進展に伴う電力需要の急増に電力供給が追いついておらず,2015年は潜在需要9,000メガワットに対し最大供給実績は8,177メガワットと,需要の約9割の供給能力に留まっており,とりわけ,同国全体の約45%の電力需要を占めるダッカ都市圏では,今後も年平均9%の電力需要の伸びが見込まれている。また,同国では恒常的に計画停電が実施されている状況にあり,2013年度においては934メガワット相当の送電が計画的に停止されている。同国政府は発電能力を2020年までに約21,000メガワットに増強することを目標として掲げ新規電源開発を進めているが,ダッカの変電所の多くは既に容量の80%以上の稼働を行っており,トラブル発生時の変電所間での負荷の切り替えが困難である等,電力供給の信頼度に懸念が生じている。さらに,今後6~7年のうちに最大需要が変電所容量を上回り,ピーク時に広範囲にわたる停電が常態化する恐れが出てきており変電所の増設等ダッカ全体の設備増強が喫緊の課題となっている。
 速やかにダッカ全体の設備増強を行っていく必要があるものの,世界最過密都市であるダッカでは,空地率は1%未満(Dhaka Structure Plan 2015)であり(先進国主要都市平均は20~30%),地価の高騰に加え,土地所有者が土地を手放さない等の問題もあり,変電所建設のための用地取得が困難な状況にある。そのため,迅速な設備増強を行う上で,既存の変電所を停止することなく,電力供給を維持した上で増容量することが求められる。
 バングラデシュ政府は,「第7次五か年計画(2016/17~2020/21年度)」において,急増する電力需要への対応を最重点課題の一つとして位置付け,発電及び送・配電の強化には重点的に予算配分等を行うことを明示するとともに,「土地資源のより有効な活用,急増する住居及び都市サービスへの需要緩和」を都市開発の目標として定めている。
 本計画は,首都ダッカにおいて地下変電所(2か所:グルシャン変電所及びカウランバザール変電所)等を建設することにより,電力供給の信頼度向上及び需給状況の改善を図り,もって中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化に寄与するものであり,バングラデシュの開発政策とも高い整合性を有している。
イ 我が国の基本政策との関係
 バングラデシュでは,人口の約3割が依然として貧困状態にあり,電力,運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足している。こうした開発ニーズを踏まえ2012年6月に策定された「国別援助方針」においては,今後の対バングラデシュODAの重点目標として,(ア)中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化(「経済成長を通じた貧困削減」を追及するためのインフラの整備等),(イ)社会脆弱性の克服(貧困削減,初等教育,母子保健,安全な飲料水の供給などのMDGsの達成への貢献)を掲げている。
 本計画は,首都ダッカにおいて地下変電所(2か所)等を建設することにより,電力供給の信頼度向上及び需給状況の改善を図り,もって中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化に寄与することから(ア)に合致する。2016年5月の日・バングラデシュ首脳会談において,安倍総理より『日本は,バングラデシュの「2021年までの中所得国化」実現に向けて支援を継続していく』旨表明しており,本計画実施は,両国関係の更なる強化及び日本の外交政策の推進の観点からも重要である。

(2)効率性

 過去の類似案件では,関係機関が多岐に渡ったため,その調整に予想以上の時間を要し事業遅延の一要因となったことから,複数の機関がステークホルダーとして包含される事業を実施する場合には,関係者間で構成される協議会等の設置を検討し,緊密な調整を図ることが必要との教訓が得られている。
 本事業では,複数の機関がステークホルダーとなる可能性があるため,計画・設計段階において電力エネルギー・鉱物資源省電力局,ダッカ電力供給会社(DESCO),ダッカ配電会社(DPDC),バングラデシュ電力送電会社(PGCB)等の関係者間の調整が円滑に進められるよう協議会等の設置を検討し,定期的な事業設計情報,各機関における問題点等の共有など,関係者間での緊密な調整を図ることにより,事業遅延を防ぐ予定。

(3)有効性

 本計画によって,2016年から事業完了2年後の2025年にかけて,グルシャン変電所の設備稼働率が86%から61%,カウランバザール変電所の設備稼働率が89%から32%に抑制される等,同変電所への過剰な負荷を軽減し,電力供給の信頼度の向上及び電力供給状況の改善を図ることで,同国の投資環境の改善と経済成長促進に寄与すること期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 バングラデシュ政府の要請書,バングラデシュ国別評価報告書(2009年度),国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構から提出された資料。

 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。

 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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