ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:平成29年6月23日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件概要
(1)供与国名
バングラデシュ人民共和国
(2)案件名
カチプール・メグナ・グムティ第2橋建設及び既存橋改修計画(II)
(3)目的・事業内容
ダッカ・チッタゴン間国道1号線上に位置するカチプール橋,メグナ橋,グムティ橋の改修及び既存橋に並行する第2橋の建設等を行うことにより,洗掘対策や橋梁の耐震性向上を含む既存橋梁の安全性の向上及び急増する交通需要への対応を図り,もって中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化に寄与するもの。
- ア 主要事業内容
- カチプール橋,メグナ橋,グムティ橋の改修,第2カチプール橋,第2メグナ橋,第2グムティ橋及び各取り付け道路の建設等
- 過積載管理設備の設置
- コンサルティング・サービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 527.30億円 0.70% 30(10)年 一般アンタイド
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア EIA(環境影響評価):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げるカテゴリAに該当する。本計画に係るEIA報告書は,2012年10月にバングラデシュ環境森林省環境局(Department of Environment)により承認済み。
- イ 用地取得及び住民移転:本計画は,実施機関所有地内で行われるため用地取得は不要であるが,3橋合わせて294人の住民移転を伴う。移転に係る住民との協議全体を通し,事業に対する特段の反対意見は確認されていない。
- ウ 留意点:事業実施にあたっては,関係者間で緊密に情報共有を行い,必要な安全対策を講じる。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア 開発ニーズ
- バングラデシュでは近年の経済成長に伴い,2005年から2009年までの4年間で貨物取扱量及び旅客輸送量が約1.48倍に拡大し,今後2030年までは年率6~7%のペースで増加することが見込まれている。バングラデシュの主要運輸交通利用において,旅客・貨物双方ともに道路利用が約7割(2016年)を超えるシェアを占めているが,増加する交通量に対し,新規の道路整備が追いつかず,維持管理不足により既存道路や橋梁の劣化が進んでいるため,旅客・運輸輸送に支障が生じている。
とりわけ国道1号線が結ぶダッカ首都圏と第2の都市であるチッタゴン間の経済回廊は,人口の3割,GDPの5割を占め,当国の経済発展を牽引しているが,同国道上に架かるカチプール橋,メグナ橋,グムティ橋では想定交通容量を最大約6割上回っており(2012年),2025年には想定交通容量の3倍に増加することが予想されている。そのため,車線を増加し交通容量を拡大すること(第2橋の建設)が急務となっている。また,これら既存橋は路面の損傷が激しく,既存橋の完成後に引き上げられた国内耐震基準を満たしていないことや,洗掘の進行により安全性が懸念される状況となっていることから,既存橋の改修・補強についても喫緊の課題となっている。
本計画は,ダッカ・チッタゴン間国道1号線上に位置するカチプール橋,メグナ橋,グムティ橋の改修及び既存橋に並行する第2橋の建設等を行うことにより,洗掘対策や橋梁の耐震性向上を含む既存橋梁の安全性の向上及び急増する交通需要への対応を図り,もって中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化に寄与するものであり,バングラデシュの開発政策との高い整合性を有している。 - イ 我が国の基本政策との関係
- バングラデシュでは,人口の約3割が依然として貧困状態にあり,電力,運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足している。こうした開発ニーズを踏まえ2012年6月に策定された「国別援助方針」においては,今後の対バングラデシュODAの重点目標として,(ア)中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化(「経済成長を通じた貧困削減」を追及するためのインフラの整備等),(イ)社会脆弱性の克服(貧困削減,初等教育,母子保健,安全な飲料水の供給などのMDGsの達成への貢献)を掲げている。
本計画は,ダッカ・チッタゴン間国道1号線上に位置するカチプール橋,メグナ橋,グムティ橋の改修及び既存橋に並行する第2橋の建設等を行うことにより,洗掘対策や橋梁の耐震性向上を含む既存橋梁の安全性の向上及び急増する交通需要への対応を図り,もって中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化に寄与することから,(ア)に合致する。2016年5月の日・バングラデシュ首脳会談において,安倍総理より『日本は,バングラデシュの「2021年までの中所得国化」実現に向けて支援を継続していく』旨表明しており,本計画実施は,両国関係の更なる強化及び日本の外交政策の推進の観点からも重要である。
(2)効率性
過去の類似案件から,大規模橋梁の建設にあたっては実施機関の大規模橋梁に関する維持管理能力強化,通行料設定を含む中長期的な財務計画能力の強化,過積載取り締まりの強化が必要であるとの教訓が得られている。本事業では大規模橋梁の改修・新設を行うことから,上記教訓を踏まえ,コンサルティング・サービス等を通じて実施機関の橋梁維持管理能力の強化を図る。また,現在の料金水準で維持管理費が負担できることを確認済みである。過積載については,取り締まり強化のため,軸重計等を事業のコンポーネントに含めることを監督官庁である道路交通橋梁省と合意済みである。
(3)有効性
本計画によって,2012年から事業完了2年後の2022年にかけて,年平均日交通量が,カチプール橋で76,732台から155,100台,メグナ橋で65,008台から108,900台,グムティ橋で65,008台から101,000台に増加する等,同国における交通需要の急増に対処するとともに,洗掘対策や橋梁の耐震性向上を含む既存橋梁の安全性の向上を図ることで,同国経済全体の活性化に寄与することが期待される。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
バングラデシュ政府の要請書,バングラデシュ国別評価報告書(2009年度),国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構から提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。