ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年6月21日
評価年月日:平成29年4月14日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件名
(1)供与国名
ホンジュラス共和国(以下,「ホンジュラス」という。)
(2)案件名
コマヤグア市給水システム改善・拡張計画
(3)目的・事業内容
本計画は,ホンジュラスの物流の要所であるコマヤグア市において,浄水施設の建設を含む上水道施設の整備・拡張を通じ,水質や衛生環境の改善を図り,もって同地域の持続的な経済開発に寄与するもの。
供与限度額:17.28億円。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
本計画で新たに整備される施設・機材を効率的に運用するため,ホンジュラス政府が必要な予算措置を行い,適切な維持管理が実施されること。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア ホンジュラスにおける水道設備は,これまで主に大都市を中心に整備・改修が進められてきた。その結果,特に地方都市では,人口増加により水需要量が増える中,老朽化した水道施設の更新や拡張が追い付いておらず,一部の地域では水質基準を満たさない水供給や時間給水が常態化している。
- イ 本計画の対象都市であるコマヤグア市は,太平洋側とカリブ海側の都市を結ぶ幹線道路(カナル・セコ)沿いに位置するとともに,市郊外のパルメローラ国際空港が2018年に供用開始する予定であり,物流の要所となっている。人口増加が顕著で,2001年から2013年までの年間増加率は,ホンジュラス国全体が2.1%であるのに対してコマヤグア市は4.5%と著しく高く,人口増加に伴い給水需要量も増加している。
- ウ このような中,コマヤグア市の既存浄水場は,老朽化や設計不備等の原因により運転停止中で,湧水の利用者を除いた76%の市民が無処理の河川水を供給されており,特に河川水の濁度が上昇する雨季の水質について70%以上の市民が不満を持っている(2016年JICA協力準備調査)。水質基準を満たす水の供給には抜本的な施設整備が必要なため,新たな浄水場の建設が求められている。
- エ 対ホンジュラス国別援助方針(2012年4月)における重点分野として「地方開発」が定められ,対ホンジュラス共和国JICA国別分析ペーパーにおいても水道事業を含む「地方開発」が重点分野であると分析しており,本事業はこれら方針,分析に合致する。
(2)効率性
- ア セルビア共和国への無償資金協力案件「ベオグラード市上下水道施設整備計画」の事後評価等では,具体的な指標が設定されていなかったため,事業効果を正確に把握できる手段を持つことが重要とされた。これを踏まえ,本事業では,具体的かつ明確な指標を設定するとともに,測定機器(超音波式流量計,濁度計)を浄水場内に設置することとした。
- イ スリランカ民主社会主義共和国への無償資金協力案件「キリノッチ上水道復旧計画」では,用地整備等の先方負担事項の履行を事業実施の前提条件としたが,その履行が計画通り進まず事業実施に影響が出た。本計画では,実施を効率よく進めるため同様の事態を避けるべく先方負担事項の確実な実施につき働きかけながら調査を進めた。
- ウ 世界銀行は,55%(2014年)と高い無収水率の削減のため,PROMOSASの枠組みで,コマヤグア水道公社に対して無収水量管理の能力強化を支援中。同プロジェクトにおけるパイロット地域の活動では,水消費量が67%節減される等の効果が発現した。今後も同様の活動を他地域に展開予定で,同様の活動を他地域に展開予定で,本事業による浄水の有効活用に寄与することが期待される。
(3)有効性
本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
- ア 河川水を原水とする浄水量(立方メートル/日)が0(基準値(2015年実績値))から14,725(目標値(2023年:事業完成3年後))になる。
- イ 濁度(年間最高値(雨季))(NTU(濁度単位))300(基準値(2015年実績値))から5以下(目標値(2023年:事業完成3年後))になる。
- ウ 給水時間の延長により,18時間/日以上の給水を受けている人口が3%以下から97%以上になる(2016年JICA協力準備調査)。
- エ イ,ウ等の改善により,水因性疾患の発症患者数が減少する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ホンジュラス共和国政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)