ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成29年5月23日
評価年月日:平成29年2月13日
評価責任者:国別開発協力第一課長 原 圭一
1 案件名
(1)供与国名
サモア独立国
(2)案件名
ヴァイシガノ橋架け替え計画
(3)目的・事業内容
本計画は,首都アピア市内の幹線道路上に位置し,サイクロン被害により危険な状態にあるヴァイシガノ橋を,地球温暖化による海水面上昇及びヴァイシガノ川の治水計画に配慮して架け替えることにより,安全で災害に強い幹線道路を確保し安定した交通を実現することで環境に配慮した持続的経済成長に寄与するもの。供与限度額18.06億円。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
機材・施設の運用・維持管理に係る予算配分がサモア側によりなされる必要がある。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア サモア政府は,「サモア開発戦略2012-2016」の中で,インフラ整備を優先分野とし,気候変動に対応できる強靭な道路建設の拡充を目標に掲げている。2011年策定の「サモアインフラ戦略計画」においても,サモア経済回廊として港湾,空港等重要拠点を結ぶ道路を整備すること,また,道路をサイクロン等の災害に強いものとすることが目標として掲げられている。
- イ ヴァイシガノ橋は,首都アピア市とサモア唯一の商港であるアピア港や,ファガリ空港をつなぐ主要幹線道路上に位置しており,同国の道路ネットワークにおいて重要な橋梁として位置付けられる。20世紀初頭に建設された同橋は,1953年に既存下部工を補強した上でコンクリート橋として再建され,1994年には鉄筋腐食やコンクリート剥離といった塩害による損傷の補修工事が実施されたものの,再度同様の損傷が発生し,2002年には,大型車の通行が禁止された。以降,アピア港からウポル島西部のバイテレ工業団地に物資を運搬する大型車は,迂回することを余儀なくされている。
- ウ 更に2012年の大型サイクロン「エヴァン」により,ヴァイシガノ橋は下部工基礎保護工が損壊し,塩害劣化が進み,このままの状態では落橋の可能性があることが確認され,その架け替えが喫緊の課題となっている。
- エ 2015年5月開催の第7回太平洋・島サミットで採択された「福島・いわき宣言」の中で,強靭なインフラ整備による防災分野での強靭性の構築が挙げられている。また,対サモア独立国国別開発協力方針(2012年4月)では,インフラ整備を含む持続的な経済成長基盤強化支援を掲げており,本事業は我が国の方針に合致する。
(2)効率性
- ア これまでODA事業で実施された道路舗装についてのプロジェクト研究でとりまとめられた「開発途上国における舗装設計基準適用のあり方に関する調査」の結果を受けて,橋梁前後の取付け道路の縦断勾配を緩和し,道路舗装耐久性を確保する設計とした。
- イ これまでの類似案件で採用されてきた橋桁であるT桁形式は,塩分が付着しやすく,かつ付着面積も大きいため,塩分が付着しにくく,かつ付着面積の少ない中空床版形式を採用する。
(3)有効性
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
- ア 年平均日交通量の増加
全車両:15,490台/日(2016年実績値)→17,300台/日(2023年,事業完成3年後) - イ アピア港からバイテレ工業地帯までの貨物車の移動時間の短縮(16.2分→13分)
- ウ 輸送・旅客数の増加
15,630,000人/年(2016年実績値)→16,330,000人/年(2023年,事業完成3年後) - エ 輸送・貨物量の増加
300,000トン/年(2016年実績値)→320,000トン/年(2023年,事業完成3年後) - オ 安全で災害に強い幹線道路の確保。
- カ 所用時間の短縮及び耐荷力が増すことによる,交通利便性の向上。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)サモア政府からの要請書
- (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)太平洋島嶼国のODA案件に関わる日本の取組の評価(2015年度)