ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成28年3月23日
評価年月日:平成28年2月10日
評価責任者:国別開発協力第三課長 今福 孝男
1 案件名
1-1 供与国名
セーシェル共和国
1-2 案件名
第二次マヘ島零細漁業施設整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,セーシェルの首都ビクトリアが位置するマヘ島のプロビデンス港において,漁港の拡張及び水産施設の整備を実施することにより,増加する漁船の係留場所の確保,効率的な漁港運営及び水産物の品質確保を図り,もって水産加工を含む同国水産業の発展に寄与するもの。供与限度額:14.60億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)セーシェル政府による環境影響評価の実施,環境許可の取得等の負担事項が適切に実施されること。
- (2)本計画で新たに整備される製氷施設の運用維持管理に必要な人員確保が適切に実施されること。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)セーシェルの主要産業は観光業と水産業(沿岸沖合漁業やまぐろ加工)であり,中でも,水産業は同国の輸出額の48%,国内正規雇用労働者数の10%を占め,同国の経済に大きく貢献している。
- (2)セーシェル政府は,国家開発計画「Seychelles Strategy 2017」(2007~2017年)において,GDPの倍増を掲げ,経済の二本柱である観光業と水産業を今後の重点分野と位置付け,同国がインド洋における主要な水産加工の拠点となる目標を掲げると共に水産分野の開発政策「The Fisheries Policy」(2005年)において,新規漁港の開発及び既存漁港のインフラ改善を通じた持続可能な漁業開発の促進を重点事項として掲げている。
- (3)現在,セーシェルにおける年間漁獲量は約27万トン/年に上り,そのうち零細漁業による漁獲高は4,135トン/年であり,零細漁業による水揚げは首都ビクトリアが位置するマヘ島のビクトリア港及び同港から約5km南に位置するプロビデンス港(注:2008年無償資金協力「マヘ島零細漁業施設整備計画」により整備)において行われ,その漁獲量は年々増加傾向にある。
- (4)しかし,漁獲量の増加にともないビクトリア港では混雑や係船漁船の安全性の低下,冷凍施設の収容能力不足などの問題が発生している上,同港は水産加工会社等に挟まれ,岸壁前面には島があるなど漁港を拡張する余地がない。また,プロビデンス港においても,同港を拠点とするナマコ漁船を中心とする零細漁船用の漁船数が年々増加(2011年から2014年にかけて24隻から49隻に急増。2018年には80隻に達することが予想)しており,加えて漁船の大型化により安全に係留できる岸壁,給水・給電施設,製氷施設等が不足するなど,零細漁業者の漁業活動に影響を与えている状況から,セーシェル政府は我が国に対して無償資金協力による支援を要請してきたものである。
- (5)以上の経緯・理由から,プロビデンス港において,漁港の拡張及び水産施設の整備を実施することにより,増加する漁船の係留場所の確保,効率的な漁港運営及び水産物の品質確保を図り,もって水産加工を含む同国水産業の発展に寄与するために本計画を実施するもの。
2-2 効率性
- (1)建設資材について,一般的な資材は現地調達とし,現地調達が困難な一部の資材は日本調達とした。機材については,原則日本調達とするが,日本またはセーシェル共和国で調達困難な機材については第三国調達とした。
- (2)製氷設備の運営・維持管理について,技術研修・指導を実施することにより本計画の効率性向上を図ることとした。
2-3 有効性
本件の実施により、以下のような成果が期待される。
- (1)岸壁混雑率が事業完成3年後の2021年には100%に抑えられる。
(191%(2015年)) - (2)水産物の陸揚量が事業完成3年後の2021年には292トン/年に増加する。
(150トン/年(2015年)) - (3)漁港での氷の販売量が事業完成3年後の2021年には375トン/月に増加する。
(125トン/月(2015年)) - (4)漁港施設利用の指導・管理が徹底されることで,漁港内の作業効率が向上する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)セーシェル共和国政府からの要請書
- (2)「水産無償資金協力に関する評価」報告書
- (3)JICA協力準備調査
- (4)平成26年度 第18回開発協力適正会議(PDF)
(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照)