ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成28年3月10日
評価年月日:平成28年3月7日
評価責任者:国別開発協力第三課長 今福 孝男
1 案件概要
(1)供与国名
ケニア共和国
(2)案件名
オルカリアV地熱開発計画
(3)目的・事業内容
本計画は,ケニア中部のオルカリア地熱地帯において,地熱発電所等の建設を行うことにより,同国における電力供給量の増加及び安定化を図り,もって投資環境の改善等を通じた同国の持続的な経済・社会の発展の促進に寄与するもの。
- ア 主要事業内容
- 土木工事(発電所建設(70MW×2基),気水輸送管設備建設,送電線建設等)
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 456.90億円 年0.20% 30(10)年 一般アンタイド
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア EIA(環境影響評価):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる地熱発電セクターに該当するため,カテゴリAに分類される。本計画に係る環境社会影響評価報告書(ESIA)は2014年9月にケニア国家環境管理局により承認済み。
- イ 用地取得及び住民移転:本計画では用地取得及び住民移転は発生しない。しかし,世界銀行等によるオルカリアIV地熱発電所の建設事業において,本計画対象地域における用地取得及び非自発的住民移転が2014年9月までに実施された。
- ウ 外部要因リスク:特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア 開発ニーズ
ケニア政府は国家開発計画「Vision 2030」において,2030年までに,高い生活水準,国際的な競争力及び経済的繁栄を達成することを上位目標としている。同計画は,「経済」,「社会」,「政治」を3本柱とし,「経済成長率10%の維持」,「衛生的かつ安全な環境で人々が住め,平等で,公正,結束力のある社会」,「法に従い,すべてのケニア国民の人権と自由を守る政治の上に成り立つ民主政治のシステムの実現」を目標としている。
電力セクターはその3つの柱を支える基盤の一つとして位置付けられており,成長を維持するために必要な電力確保,地方電化率の向上,都市部における電力サービスの改善等に取り組むこととしている。具体的な電力開発は,2016年までに5,000MWの増強を目的とする「5000+MW by 2016」や「電力セクター10年開発計画(2014-2024)」等に掲げられているが,これら政策においても,オルカリア地熱地帯の開発は各計画の達成のために不可欠な事業として位置付けられており,本計画のニーズは大きい。 - イ 我が国の基本政策との関係
ケニアは東アフリカ地域のゲートウェイとして地理的要衝を占め,地域経済を先導し,さらに地域の平和と安定にも貢献しており,我が国にとってサブサハラ・アフリカ最大の開発協力パートナー国として外交上重要な国である。
対ケニア共和国国別援助方針では,重点分野として「経済インフラ整備」を掲げ,「産業活動に欠かせない電力供給の不足を緩和すべく,環境との両立や住民との関係に配慮した上でのエネルギー資源の開発」の支援を行うこととしている。
これまでも電力セクター分野に対して技術協力プロジェクト等による支援を実施している。また,我が国は第5回アフリカ開発会議(TICAD V)の「横浜行動計画2013-2017」の,「IV.持続可能かつ強靱な成長の促進」の重点分野に地熱を含めた再生可能エネルギーへの投資促進を含めており,本計画はこれらの方針に合致する。
(2)効率性
国際協力機構による既往の地熱開発計画の事後評価等では,地熱貯水槽の事前の解析と発電所運転段階でのモニタリングが不十分であったため,十分な蒸気を得られず発電量の確保が困難となり,事業効果発現の上で課題となったとの指摘がなされている。
本計画においては,上記教訓を踏まえ,実施機関の既往の調査結果を確認した上で,蒸気量の観点から持続可能な実施計画をフォローアップすることで効率性を確保する。
(3)有効性
本計画の実施により,事業完成2年後の2021年には,運用効果指標として最大出力140(MW),設備利用率81.8%等が見込まれる。また,同国における電力供給量の増加及び安定化,投資環境の改善に寄与することが期待され,二国間関係の強化が図られる。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,ケニア国別評価報告書(PDF),これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン
,その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(国別約束情報(年度別交換公文(E/N)データ)),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。