ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:平成27年9月1日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西永 知史
1 案件名
(1)供与国名
ナイジェリア連邦共和国
(2)案件名
アブジャ電力供給施設緊急改修計画
(3)目的・事業内容
本計画はアブジャ連邦首都区のアポ変電所及びケフィ変電所の設備改修を行うことにより,電力環境の改善を図り,もってナイジェリアの持続的な経済・社会発展の促進に寄与するもの。供与限度額は,13.17億円。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア 本計画は,既設の変電所の設備改修を主たる内容としており,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)上,環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
- イ ナイジェリア政府により,(ア)機材据付予定用地の整地作業を2016年10月末までに実施する,(イ)アポ変電所の落雷(2014年9月)により使用不能或いは損傷した変圧器,開閉設備等を2017年11月末までに更新する,(ウ)ケフィ変電所の既設制御棟内の132kV制御盤に組み込まれている電力計や無効電力計等の指示計器類の較正(基準値との誤差の調整)を2017年6月末までに行う,等の先方負担事項が確実に実施される必要がある。
- ウ プロジェクト全体計画達成のための外部条件
(ア)治安が急激に悪化しない,(イ)上位の発電設備及び下位の配電設備が十分に稼働する,(ウ)設備の運転維持管理計画が実施される,(エ)カタンぺ変電所に設置されている電力用コンデンサ及び変圧器が2015年12月末までに系統に接続される,(オ)グワグワラダ変電所に設置されている分路リアクトルが2016年6月末までに系統に接続される。なお(エ)及び(オ)の達成を前提とした潮流解析を準備調査において実施しており,今後の案件評価に影響を与えることから,これらを外部条件に加えることとする。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
ナイジェリアの電力需要は最大12,800MWとの推定に対し,発電設備容量は約半分の6,579MWに留まる(2013:出典Presidential Task Force on Power Fact Sheet)。加えて,無効電力(電源と負荷間の往復のみでエネルギー消費されない電力)の割合が高いことに伴う電圧降下が,安定した電力供給の妨げとなっている。無効電力は,長距離送電時に増加する傾向があり,発電施設から遠隔地にある首都アブジャやその周辺部は,一日平均8時間程度しか電力供給のない不安定な状況にある。本計画は,この状況を改善すべく,変電所の電力供給設備を改修し,無効電力を制御して系統電圧を一定に保つ制御を行う設備を導入するものであり,計画停電が日常化している首都アブジャとその周辺地域の電力供給の改善に資する。
(2)効率性
これまで日本政府は,電力セクター開発の基盤強化のため「電力開発計画アドバイザー」(2012-2013年度)を派遣し,開発計画への技術的助言を行ってきた。また2015年度からは「電力マスタープラン策定プロジェクト」(2015-2016年度)を開始し,今後電力セクターにおける包括的なマスタープランの策定を通じ先方政府の能力強化を支援していく予定。本計画は,これらの協力の成果を踏まえ,アブジャ連邦首都区の電力供給を補うために緊急性の高いものとして実施されるもの。
また,ナイジェリア政府は,日本政府以外からも,世界銀行,アフリカ開発銀行,フランス開発庁(AFD)等の主要ドナーからの資金支援を活用し,送配電部門における系統強化を支援している。これらの支援との相乗効果により,同国の安定した電力供給に資する。
(3)有効性
本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
- ア 2014年と比し,事業完成3年後の2020年に,
- (ア)受電端電圧改善率がアポ変電所(132kV受電側)で2.9%,(33kV送出し側)で3.01%,ケフィ変電所(132kV受電側)で6.19%,(33kV送出し側)で6.84%となる。
- (イ)シロロ地域(本事業の対象変電所該当地域)における132kV送電線における送電ロス(MW)が101.4MW(6.85%)となる。
- (ウ)温室効果ガス削減量(t/年)が6,404t/年となる。
- (エ)追加電力供給世帯数(世帯/日)がアポ変電所で5,400,ケフィ変電所で1,700となる。
- (オ)追加電力供給消費者数(人/日)がアポ変電所で24,300,ケフィ変電所で9,350となる。
- イ ナイジェリア送電公社の電力用コンデンサと特別高圧開閉設備を対象とする運転維持管理能力,及び日常点検能力が強化される。
- ウ アブジャ連邦首都区及び周辺地域の送電損失の削減及び電力供給信頼度が向上し,同地域における経済・社会開発の促進に寄与する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ナイジェリア連邦共和国からの要請書
- (2)アブジャ変電設備緊急改修計画準備調査報告書