ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日 平成27年9月14日
評価責任者 国別開発協力第一課長 原 圭一
1 案件概要
(1)供与国名
ベトナム社会主義共和国
(2)案件名
チョーライ日越友好病院整備計画
(3)目的・事業内容
ベトナム南部の中心都市であるホーチミン市において新たな総合病院を建設することにより,中央レベルの病院の過負荷軽減,高度医療・予防医療の推進及び病院の品質管理強化等を通じたベトナム国内の保健医療体制の整備を図り,もって脆弱性への対応に寄与する。
- ア 主要事業内容
- 土木工事(病院建設)
- 資機材調達
- コンサルティング・サービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件 286.12億円 年0.1% 40(10)年 日本タイド
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア 本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」上,環境への望ましくない影響は重大でないと判断され,かつ,同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため,カテゴリーBに該当する。本計画に係る環境影響評価(EIA)報告書は2014年9月にベトナム天然資源環境省により承認済み。
- イ 約10haの用地取得及び3軒の住宅の移転が必要であり,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布),及び同国国内手続にのっとり関連手続が進められる。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア 開発ニーズ
ベトナムの公的医療システムは,三層構造(中央レベル-地方省レベル-コミューン・郡レベル)から成り,疾患状態に応じて各レベルの医療機関で対応するシステムが存在するも,実際には,下位層の医療機関は信頼性が低く,中央レベルの病院への過剰な患者集中が課題となっている。更に,人口増加や高齢化により,今後も患者数の増加が見込まれており,また,経済成長に伴い生活習慣病が増加するなど,疾病構造は感染症から非感染症へと変化しており,医療の高度化が求められている。
我が国技術・医療サービスの導入に対する強い期待があり,特に,1960年代より日本が支援してきている同国の中核的な医療機関の1つであるチョーライ病院が狭隘化・老朽化してきていることから,同病院の分院を「日越友好病院」として日本の支援を得て整備したいとの要請があった。 - イ 我が国の基本政策との関係
2012年12月に策定された対ベトナム国別援助方針においては,「脆弱性への対応」を重点分野に掲げており,「保健医療,社会保障・社会的弱者支援などの分野における体制整備」に係る支援に重点的に取り組むとしている。ホーチミン市において新たな総合病院の建設を目的とする本計画は本方針に整合している。
(2)効率性
将来にわたって機材の維持管理が十分に行き渡るよう,機材の選定においては,実施機関による維持管理能力,維持管理予算の十分な配分を考慮するとともに,本病院の医療従事者を対象とする予防医療,病院運営にも併せて行うことで相乗効果が期待される。
(3)有効性
本計画の実施により,ベトナム中央レベルの病院の病床数の拡充と高度医療,予防医療の強化等を通じた医療サービスの向上が図られ,ベトナム南部の保健医療システムの強化に寄与することが期待される。具体的には,新病院の建設により病床数が1,000床拡充し,2013年時点で130%を超えているチョーライ病院の病床稼働率が,事業完成3年後の2023年に新病院と合わせて95%程度に抑えられる。また,年間の高難度手術実施患者数が,2012年時点でのチョーライ病院の約24,300人から,事業完成3年後の2023年に両病院合わせて約28,000人に増加することが見込まれる。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,ベトナム国別評価報告書,その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(国別約束情報(年度別交換公文(E/N)データ)),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。