ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成27年9月17日
評価年月日:平成27年9月2日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西永 知史
1 案件名
(1)供与国名
スーダン共和国
(2)案件名
ハルツーム州郊外保健サービス改善計画
(3)目的・事業内容
本計画は,人口拡大の進むハルツーム州の郊外地域において,特に不足している二次医療施設の改修・拡張を行うことにより,基礎保健医療サービス提供範囲の拡大と質の向上を図り,もって同国のMDGs達成に寄与する。供与限度額は,23.20億円である。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がスーダン共和国政府により実施される必要がある。
- ア 先方政府の負担事項(整地,インフラ引き込み等)の実施。
- イ 必要な人材配置がなされること。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア スーダン共和国では,長期の内戦により十分な保健医療サービスが提供されておらず,乳児死亡率は57(出生1,000対),5歳未満児死亡率は78(出生1,000対),妊産婦死亡率は216(出生10万対)である等,母子保健指標が特に低いため,UNDPが取りまとめているHealth Indexでも199の国・地域のうち,159位に留まっている(2012年)。この理由として医療施設・人材の不足が挙げられ,連邦保健省の基準を満たす医療施設は5.7%(2011年)に留まっている。また医療従事者は1.23(人口1,000対)(2011年)とWHO基準の2.28より低く,特に80%以上が自宅分娩を選択するスーダン共和国において,母子保健指標改善のために重要な助産師の数は著しく不足している。
- イ ハルツーム州は,ダルフール等の紛争被災地からの人口流入により2008年から2011年までの3年間で人口が100万人も増加し,州郊外を中心に保健サービスが不足している。特に二次医療施設の地域間格差が拡大しており,州7郡のうち,郊外3郡に人口の6割弱が集中している一方,同3郡の二次医療施設数は州全体の2割以下に留まる。また,同3郡の病床数は平均で3.41(人口10,000対)(2011年)と州が定める病院建設基準の12を大きく下回り,州郊外の保健サービスは不十分な状況にある。
(2)効率性
- ア 対スーダン共和国国別援助方針(2012年12月)の重点分野の一つとして「基礎生活分野支援」を置き,保健医療支援プログラムを実施している。これまでの保健セクターへの支援としては,セナール州において村落助産師の能力強化を目指した技術協力「フロントライン母子保健強化プロジェクト」(2008-2010),及び同プロジェクト成果の全国展開を目指したフェーズ2(2011-2014)が実施されており,本計画は,保健医療支援プログラムの中核案件として,これまでの実績を踏まえて実施する。
- イ 同国の保健セクターに対して,保健政策策定にWHOが協力し,ワクチンと予防接種のための世界同盟(Gavi)や世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)が資金を提供している。妊産婦・新生児分野はUNFPA,子供の保健はUNICEF,HIV/AIDSはUNAIDSや世界基金,予防接種はGavi,マラリア・結核等は世界基金が支援している。また,病院建設をトルコや中国が,殺虫剤処理済蚊帳製造機供与をエジプトが行っている。これらの支援との相乗効果により,医療サービス改善の効果を最大限高めることとする。
(3)有効性
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
- ア 本計画完成3年後(2020年)に対象病院において,分娩数が5,000件/年(2011年実績値:3,626件/年),産前・産後ケア受診者の延べ人数30,000名/年(2011年実績値:14,504名/年),帝王切開手術数1,000件/年(2011年実績値:703件/年)に増加することが期待できる。
- イ ヘルスセンターなどレファラル下位の保健医療施設から,下位施設では対応できない重症患者が搬送されるようになる。
- ウ 医学生,助産師学生の産科臨地実習施設として利用される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)スーダン共和国政府からの要請書
- (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)