ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成27年7月7日
評価年月日:平成27年3月9日
評価責任者:国別開発協力第1課長 宮下 匡之
1.案件名
1-1.供与国名
ベトナム社会主義共和国
1-2.案件名
ハイフォン市アンズオン浄水場改善計画
1-3.目的・事業内容
本計画は,ハイフォン市アンズオン浄水場において,上向流式生物接触ろ過(U-BCF: Upward Bio Contact Filtration)の技術を用いた浄水施設及び関連施設を建設することにより,原水中に含まれるアンモニア態窒素濃度を低減し,同浄水場の運転の安定化及び塩素注入量の低減を図り,もって安全な飲料水の配水に寄与するもの。供与限度額は,21億9,600万円であり,浄水処理施設(U-BCF装置,取水ポンプ,電気棟等)の整備を行う。
1-4.環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がベトナム政府により実施される必要がある。
- (1)ベトナム側負担事項に関する予算確保が行われ,円滑に実施されること。
- (2)アジア開発銀行(ADB)融資による施設拡張に合わせ,アンズオン浄水場内の各種配管工事が適切に実施されること。
2.無償資金協力の必要性
2-1.必要性
- (1)ベトナムでは1986年のドイモイ(刷新)政策導入以降,急速な経済成長を達成する一方で,都市化に伴う大気汚染,水質汚濁,廃棄物増加等の負の側面が顕在化しており,特に河川・運河・湖沼の水質汚濁が著しく,排水施設が整備されていないことも相まって,衛生問題も危惧されている。
- (2)我が国はベトナムにおける開発の現状と課題等を踏まえ,成長に伴う負の側面への対処を進めることとしており,対ベトナム援助方針における重点分野である「脆弱性への対応」では,上下水道不足による公衆衛生の悪化,水質汚濁等の都市環境問題に対し,日本の経験技術・ノウハウを活用した支援を実施することにしている。
- (3)ベトナム北部に位置する港町ハイフォン市は,首都ハノイ市の海の玄関口として近年急速な都市化・工業化が進んだ都市であるが,旺盛な水需要に対しインフラ整備が追いつかず,水道水質の悪化が進んでいる。特に市内最大のアンズオン浄水場では,水源であるレ川への生活雑排水の流入に伴い水質悪化が進んでおり,浄水処理に大量の凝集剤や塩素が必要となるなど,安全安心な給水事業に課題を抱えている。
- (4)本事業は,ベトナム・ハイフォン市において北九州市水道局が特許を持つ上向流式生物接触ろ過(U-BCF)の技術を用いた浄水施設を整備することにより,我が国の知見を活かした給水の水質改善を図り,もって同市の公衆衛生の改善,持続可能な発展及び脆弱性への対応に寄与するもの。
2-2.効率性
- (1)調達・施工方法
サブコントラクターとして現地建設業者を活用する。また,建設資機材は修理・保守サービスの容易さを考慮し,可能な限り現地調達を行う。 - (2)他ドナー事業との整合性ある実施による効率性の向上
現在のアンズオン浄水場の処理能力は10万m3/日であるが,ADBが「浄水セクター投資プログラム」のサブプロジェクトとして20万m3/日までの拡張及び管網整備を実施中。同事業と整合性ある計画の実施により,人口増に伴う需要増加に対応しながら衛生的な給水事業が可能となり,本計画の目標をより効率的に達成する。
2-3.有効性
- (1)水質汚染の指標であるアンモニア態窒素は,2013~14年実績値が0.2~1.1mg/リットルであるところ,施設完成1年後の2018年には,0.2mg/リットル以下に改善される。
- (2)本計画により,同市の給水の水質改善を図り,公衆衛生の改善及び持続可能な発展を促し,また,これらを通じて環境問題等の脅威への対応を支援することで,対ベトナム援助方針の重点分野である「脆弱性への対応」に寄与することが期待される。
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ベトナム政府からの要請書
- (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)